TOP大野事務所コラムフレックスタイム制適用時における年次有給休暇の時間単位取得と子の看護休暇・介護休暇の時間単位取得

フレックスタイム制適用時における年次有給休暇の時間単位取得と子の看護休暇・介護休暇の時間単位取得

こんにちは、大野事務所の土岐です。

 

今回は、フレックスタイム制適用時の年次有給休暇の時間単位取得(以下、時間単位年休)と、子の看護休暇(※1)・介護休暇の時間単位取得について採り上げます。

(※1202541日以降は法改正により、「子の看護『等』休暇」になります。

 

時間単位年休(労基法)と子の看護休暇・介護休暇(育児・介護休業法)

 

2010年の労基法の改正により、時間単位による年休の取得が可能となっています。一方、2021年の育児・介護休業法の改正により、子の看護休暇・介護休暇も時間単位で取得できるようになりました。それぞれの主なポイントは以下の通りです。

 

①休暇の別 時間単位年休 子の看護休暇・介護休暇
②根拠法 労働基準法 育児・介護休業法

 

 

③導入要件

就業規則(※2)への時間単位年休の付与に関する定めおよび労使協定の締結。(以下④~⑦について労使協定において定める。なお、労使協定は届け出不要)

(※2)就業規則の規定例はこちらの厚生労働省のリーフレットに掲載されていますのでご参考にしてください。

 

なし

ただし、就業規則に休暇に関する事項として定める必要がある。

 

 

 

 

 

④対象者の範囲

 

 

 

 

労使協定に定める。

ただし、「育児を行う労働者」など、取得目的などによって対象範囲を定めることは不可。

子の看護休暇:小学校就学の始期に達するまでの子供を養育する労働者(※3

(※3)法改正により、202541日以降は小学校3年生修了時までに延長。

介護休暇:要介護状態にある家族を介護する労働者

労使協定の締結により、以下については対象外とすることが可能。

・勤続6か月未満の労働者(※4

・週の所定労働時間が2日以下の労働者

・時間単位で取得することが困難と認められる業務に従事する労働者(1日単位での申し出は拒めない)

(※4)法改正により、202541日以降は撤廃。

⑤日数 1年に5日以内の範囲で労使協定に定めた日数について取得可能。 1年に5日(子または対象家族が2人以上の場合は10日)まで取得可能。

 

 

 

1日分の時間数

1日分の年次有給休暇が何時間分の時間単位年休に相当するかを定める。

1時間に満たない端数がある場合は時間単位に切り上げる必要がある。

例えば、1日の所定労働時間が7.5時間の場合は8時間となる。

7.5×537.5時間ではなく、8×540時間。)

休暇を日単位で取得するか時間単位で取得するかは、労働者の選択に委ねられる。

1日の所定労働時間数に1時間に満たない端数がある場合には、端数を時間単位に切り上げる必要がある。

例えば、1日の所定労働時間数が7.5時間で、年5日分の介護休暇が取得可能な場合、時間単位で介護休暇を取得する場合は、「30分」という端数を切り上げて8時間分の休暇で「1日分」となる。

1時間以外の時間を単位として与える場合の時間数 2時間単位など、1日の所定労働時間を上回らない整数の時間を単位として定める必要がある。 1時間の整数倍の時間単位のみ。

 

 

⑧その他留意点等

取得する時間帯によって、中抜けが可能。

分単位での取得は不可。

労使協定の届け出は不要。

年休が10日以上付与される労働者に対する年5日の確実な取得について、時間単位年休の取得分については、年5日から差し引くことはできない。

始業時刻から連続し、または終業時刻まで連続する時間単位を指す(中抜けなし)。

育児・介護休業法では中抜けなしを想定しているが、法を上回る制度として中抜けありとすることも可能。

法を上回る制度として、分単位での取得も可能。

労使協定の届け出は不要。

 

フレックスタイム制が適用される場合は

 

さて、本題のフレックスタイム制が適用される場合の各休暇の取得について考えてみます。

時間単位・日単位にかかわらず、本来は所定労働時間に対し休暇を取得できるものといえますが、フレックスにおいては始業・終業の時刻は労働者に委ねられるため、1日の所定労働時間という概念がありません。

 

時間単位年休の取得に関する制限等について法令および通達等を確認しましたが、これについて述べられている部分は特段見当たりませんでした。フレックスタイム制を適用しているからといって時間単位年休の取得ができないものではないということになりそうですが、そうなりますと、年5日以内で労使協定に定めた範囲内において、時間単位年休を申請した時間分だけ、自由に取得できてしまうことになってしまいます。

 

この点、疑問が生じる場面として、例えば清算期間に働くべき所定労働時間数を超えていたとしても、時間単位年休を取得できるのかということが挙げられます。なお、時間単位年休に限らず、1日・半日単位の取得についても同様の疑問が生じるところです。その他にも、清算期間に働くべき所定労働時間に満たない場合に時間単位年休等を充てることによって、欠務控除が発生しないようにすることも考えられます(これらの点に関しては弊所の過去のコラム(フレックスタイム制と半休)で触れておりますので、詳細はこちらをご参照ください)。

 

この場合の時間単位年休の取得に関していくつかの労基署に筆者が確認した限りでは、結論として「年5日以内で労使協定に定めた範囲内において、時間単位年休を申請した時間分だけ取得できる」との見解でした。ただ、当該月に働くべき所定労働時間数を超えている場合に関し、本来は所定労働時間に対し休暇を取得できるものなのでは?との問いに対しては、筆者の質問のしかたの問題なのか、明確な見解がいただけなかった点は今も釈然としません。

 

なお、結論に対する対応として、例えば1日の実働が7時間を超える場合には、時間単位年休の取得は認めない旨を時間単位年休に関する労使協定の中で定めておく方法が考えられます。

 

一方、子の看護休暇・介護休暇については、厚生労働省の「子の看護休暇・介護休暇の時間単位での取得に関するQ&A」の問2-4において次の記載があり、やはりフレックスタイム制において休暇の取得に制限はありません。

 


「たとえフレックスタイム制度のような柔軟な労働時間制度が適用される労働者であっても、申出があった場合には、時間単位で看護・介護休暇を取得できるようにしなければならない。」


 

従いまして、いかようにでも取得できてしまうことになります。子の看護休暇・介護休暇が無給であれば結果として特に問題は生じませんが、有給の休暇としている場合には、このような事象が生じてしまうことを想定しておく必要がありそうです。

 

まとめ

 

いかがでしたでしょうか。

時間単位年休と子の看護休暇・介護休暇の時間単位取得は、社員の多様なニーズに応えるための制度といえますが、フレックスタイム制を適用している場合には、上記のような休暇の取得がなされる可能性があります。時間単位年休に関しては上記の通り労使協定の定め方を工夫することで一定の制限が可能ではありますが、社員のみなさんにはそれぞれの休暇の趣旨を周知しつつ、休暇本来の趣旨に沿って取得頂けるように促すことがポイントになるのではないでしょうかと筆者は考えました次第です。

 

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

 

<参考URL

■厚生労働省リーフレット 時間単位の年次有給休暇制度を導入しましょう!

https://www.mhlw.go.jp/content/000560872.pdf

■秋田労働局 子の看護休暇・介護休暇の時間単位取得について

https://jsite.mhlw.go.jp/akita-roudoukyoku/content/contents/000743178.pdf

■厚生労働省 子の看護休暇・介護休暇の時間単位での取得に関するQ&A

https://jsite.mhlw.go.jp/ehime-roudoukyoku/content/contents/000653124.pdf

 

執筆者:土岐

 

土岐 紀文

土岐 紀文 特定社会保険労務士

第3事業部 部長

23歳のときに地元千葉の社労士事務所にて社労士業務の基礎を学び、その後大野事務所に入所しまして10数年になります。

現在はアドバイザリー業務を軸に、手続きおよび給与計算業務にも従事しています。お客様のご相談には法令等の解釈を踏まえたうえで、お客様それぞれに合った適切な運用ができるようなアドバイスを常に心がけております。

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