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退職給付金って何?

こんにちは。大野事務所幕張オフィスの高田です。

 

最近、退職給付金なるものの申請をサポートするといった内容の広告を見かける機会が増えています。筆者の場合は、YouTube動画の合間に流れる広告で初めて目にした気がしますが、そもそもこの退職給付金とは一体何なのでしょうか?

 

1.退職給付金とは?

 

筆者が目にした広告では、「最大400万円もらえる」「殆どの人が知らずに損している」「国から出る給付金なので安心」といった何とも衝撃的なフレーズが使われていました。企業を退職する際に支給されるこのような国の給付金が本当にあるとすれば、社労士である筆者が知らないわけにはいきません。

 

ということで、この退職給付金なるものをサポートしていると思わしき幾つかの業者のサイトを調べたところ、退職給付金というのは、その名称通りの給付金が実在するわけではなく(どうりで筆者も知らなかったわけです)、主に「健康保険の傷病手当金の資格喪失後の給付」と「雇用保険の基本手当(いわゆる失業給付)」の2つを指して、便宜上そのような呼称を用いているらしいということが分かりました。

 

退職給付金というと、それなりの額の給付金があたかも一括で支給されるかのように聞こえますが、皆様もご存知のとおり、傷病手当金や基本手当は一括で何百万円も支給される給付ではありませんので、「最大400万円」などといったキャッチフレーズは、あくまでも両方の給付を最長期間分受給する想定(※)での総額の一例を謳っているようです。この退職給付金を受給するための要件として、「社会保険や雇用保険に1年以上加入していること」が掲げられているのは、まさにこれが傷病手当金の資格喪失後の給付や雇用保険の基本手当を受給するための要件であるからです。

 

(※)基本手当は傷病のための療養期間中には支給されませんので、まずは傷病手当金を、その後に基本手当を受給する想定だと思われます。

 

2.新たな疑問点

 

退職給付金なるものが傷病手当金や基本手当を指していることは分かりましたが、ここで新たな疑問が生じます。

 

傷病手当金は傷病のために労務不能である場合に支給される給付であって、企業を退職することで支給されるものではありません。したがって、傷病のために退職した方が退職後も療養するのであれば受給は可能ですが、そのような状況にない方が希望したところで支給されるはずがありません。それにもかかわらず、これらの業者のサポートによって、あたかも傷病手当金の受給が可能であるかのような説明になっているのは、一体どういうことなのでしょうか?

 

もう1つの雇用保険の基本手当は、確かに、企業を退職することを事由として支給されます。ですが、普通に基本手当を受給するためだけであれば離職票の交付を受けるだけのことですので、何もこのような業者のサポートをわざわざお金を払ってまで利用する意味がありません。これらの業者のサイトには、サポートによって基本手当の支給期間(所定給付日数)が通常の3ヶ月(90日)から10ヶ月(300日)に増えるといった説明があり、どうやらこれは、就職困難者としての認定を受けることを想定しているようです。就職困難者とは身体障害等の障害をお持ちの方などのことであり、一般的な(健常な)離職者が希望したからといって認定を受けられるものではありません。それにもかかわらず、これらの業者のサポートによって、就職困難者としての受給が可能であるかのような説明になっているのは、一体どういうことなのでしょうか?

 

3.謎は深まるばかり

 

以上のように、退職給付金なるものの正体が、資格喪失後の傷病手当金と就職困難者としての基本手当であるとすれば、このサポートが受けられるのは、そのような傷病や障害を抱えた方のみに限定されるはずです。ところが、これらの業者のサイトの説明を筆者が見た限りでは、そのような事情にある方のみをサポート対象としているわけではなく、そのような事情にない一般的な退職者でもこれらの給付が受けられるかのような説明に見受けられます。

 

この疑問への直接的な答えかどうかは分かりませんが、業者のサイトの中には、傷病手当金の医師の証明のもらい方や就職困難者の認定申請について指南している記事がありました。これらから推測すると、どうやら、うつ病等の精神疾患の診断を受けることによって、両方の給付を受けることを想定しているようです。本当にそのような疾患や障害の状態にある方であれば、これらの給付を受けることは生活保障としての正当な権利ですので何ら問題はありません。ですが、もし万が一、実際にはそのような疾患や障害の状態にはないにもかかわらず、そのような状態であるかの如く装って不正に受給しているケースがあるとすれば、これは国や社会保障制度に対する大変な冒涜であり、決して許されるものではありません。

 

この手の業者のサイトでは、有名タレントをイメージキャラクターとして起用していたり、「弁護士、社労士、税理士による監修済」と謳っていたりなど、サイト上でも合法かつクリーンなイメージを一生懸命植え付けようとしているかのように筆者には感じられます。これらの業者のすべてが不正受給に加担していると決め付けるつもりはありませんし、実際、正当な給付の申請を合法的にサポートしているだけだと信じたいですが、それにしても、退職給付金といった実在しない給付の名称を持ち出して、あたかも高額な給付金が一括で支給されるかのような誇張表現を用いるなど、あくまでも筆者個人の感想ですが、どうにもうさん臭さを感じずにはいられないという話でした。

執筆者:高田

高田 弘人

高田 弘人 特定社会保険労務士

パートナー社員

岐阜県出身。一橋大学経済学部卒業。
大野事務所に入所するまでの約10年間、民間企業の人事労務部門に勤務していました。そのときの経験を基に、企業の人事労務担当者の目線で物事を考えることを大切にしています。クライアントが何を望み、何をお求めになっているのかを常に考え、ご満足いただけるサービスをご提供できる社労士でありたいと思っています。

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