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月給制における賃金支払基礎日数

こんにちは。大野事務所の高田です。

 

今回は、雇用保険の離職証明書や賃金月額証明書に記載する賃金支払基礎日数についての話です。
筆者などは、長年にわたって離職証明書や賃金月額証明書の作成に携わってきましたが、この基礎日数について実は意外とよく理解しないままに、感覚を頼りに取り扱ってきたような気がします。今回は、月給者における賃金支払基礎日数についてあらためて整理する機会がありましたので、お伝えしようと思います。

 

1.賃金支払基礎日数とは

 

そもそも賃金支払基礎日数とは何でしょうか。
行政から出ている離職証明書や賃金月額証明書の記載方法に関するガイドなどには、「賃金の支払の基礎となった日数を記載してください」といった簡単な説明しか載っていないことが多く、具体的にどのようにカウントするのかといった詳細にまで触れているものは意外と少ないようです。
そこで、まずは「雇用保険業務取扱要領」(令和8年4月1日版)を確認してみます。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/koyouhoken/data/toriatsukai_youryou.html

◆「21454(4) 離職証明書記載要領及びその指導」より抜粋

 

c ⑨欄(⑧の期間における賃金支払基礎日数)の記載に当たっては、「離職証明書についての注意」の2の(3)のほか、次の点に留意する。
(a)「賃金支払基礎日数」とは、賃金の支払の基礎となった日数であるが、この場合、「賃金支払の基礎となった日」とは、現実に労働した日であることを要しない。例えば、労働基準法第26条の規定による休業手当が支給された場合にはその休業手当の支給の対象となった日数、有給休暇がある場合にはその有給休暇の日数等は、賃金支払の基礎となった日数に算入される。
(b)月給者についての「賃金支払の基礎となった日数」とは、月間全部を拘束する意味の月給制であれば30日(28日、29日、31日)であり、1月中、日曜、休日を除いた期間に対する給与であればその期間の日数となる。月給者が欠勤して給与を差し引かれた場合は、その控除後の賃金に対応する日数が、「賃金支払の基礎となった日数」である。

 

上記の後に(c)(d)と続きますが、今回筆者が採り上げたいテーマからは逸れますので、(c)以降は割愛します。また、「離職証明書についての注意」の2の(3)には何か別のことが書かれているかのような説明になっていますが、上記の(a)(b)と重複する内容しか書かれていませんので、こちらの掲載も割愛します。

 

さて、月給制の場合の賃金支払基礎日数について、上記(b)の前半部分からは、一見30日(28日、29日、31日)といった暦日数を指すと説明しているように思えるのですが、それに続く「日曜、休日を除いた期間に対する給与であればその期間の日数となる」の部分からは、所定労働日数を指すと説明しているようにも思えます。

 

2.基礎日数は賃金控除算出方法のパターンによって異なる

 

これ以上の詳細については業務取扱要領を見ても分からないのですが、各都道府県の労働局が公表しているパンフレット等には、具体的なカウント方法について触れられているものがあります。
たとえば、愛知ハローワークのWEBサイトに掲載されている「離職証明書の書き方~初めての方向け~」というパンフレットでは、次のように説明されています。

https://jsite.mhlw.go.jp/aichi-hellowork/content/contents/001901755.pdf

(一)賃金を月単位で定め、欠勤しても減額しない方(完全月給制・年俸制)
   →その期間中の暦日数を記載してください。(例 4月:30日、5月:31日)

 

上記のとおり、完全月給制の如く、欠勤しても賃金を減額する仕組みのない月給制の場合は、暦日数を記載するとのことです。裏を返せば、欠勤した場合には賃金を減額する仕組みの月給制の場合は、この次の取扱いになります。

(二)賃金を月単位で定め、欠勤すると減額される方(日給月給制)
   →1日あたりの賃金額の算出方法から一ケ月で何日分になるか確認し、そこから欠勤控除日数を引きます。
◆1日あたりの賃金額の算出方法
【ケース1】 「年間の給与÷年間の出勤日数」で算出 ⇒ 年間の出勤日数÷12
【ケース2】 「月の給与÷該当月の暦日数」で算出 ⇒ 該当月の暦日数
【ケース3】 「月の給与÷該当月の所定の出勤日数で算出 ⇒ 所定の出勤日数

 

【ケース1】
欠勤控除単価を「月間給与を月平均所定労働日数(固定)で割って算出する」パターンも同様であると思われますので、欠勤控除単価を、その月の所定労働日数にかかわらず、たとえば20日(固定)で割って算出するパターンがこれに当たります。つまり、20日で固定している場合は、毎月の賃金支払基礎日数は「20日」と記載することになります。
したがって、この場合で1日の欠勤があった月は、「19日」と記載します。

 

【ケース2】
欠勤控除単価を「月間給与をその月の暦日数(31日、30日など)で割って算出する」パターンがこれに当たります。この場合は、毎月の賃金支払基礎日数には暦日数(ただし30日で固定している場合は「30日」)を記載することになります。
したがって、31日の月に1日の欠勤があった場合は「30日」、30日の月に1日の欠勤があった場合は「29日」と記載します。

 

【ケース3】
欠勤控除単価を、「月間給与をその月の所定労働日数で割って算出する」パターンがこれに当たります。この場合は、毎月の賃金支払基礎日数にはその月の所定労働日数(21日、20日など)を記載することになります(休日勤務により休日勤務手当が支払われる場合は、その日数を加えます)。
したがって、所定労働日数が21日の月に1日の欠勤があった場合は「20日」、20日の月に1日の欠勤があった場合は「19日」と記載します。

 

3.実務的には・・・

 

これはあくまでも筆者の個人的な印象ですが、我々の実務の世界では、必ずしも2.で説明したとおりに取り扱われていないのではないかという気がします。というのは、月給制の場合は、完全月給制の場合に限らず、また賃金控除算出方法にかかわらず、基本的に暦日数を記載していることが多いのではないかと筆者は認識しています。
極論すれば、賃金支払基礎日数が11日以上である場合には、日数が何日であろうと賃金日額(給付の基礎になる額)の算定には影響がありませんので、「31日」と記載しようが「20日」と記載しようが結果は同じともいえます。とはいえ、本来はどのように記載するのが正しいのかを理解しておくことは大切ですので、今更ながらではありましたが、今回は雇用保険の賃金支払基礎日数を採り上げてみました。

 

執筆者:高田

高田 弘人

高田 弘人 特定社会保険労務士

パートナー社員

岐阜県出身。一橋大学経済学部卒業。
大野事務所に入所するまでの約10年間、民間企業の人事労務部門に勤務していました。そのときの経験を基に、企業の人事労務担当者の目線で物事を考えることを大切にしています。クライアントが何を望み、何をお求めになっているのかを常に考え、ご満足いただけるサービスをご提供できる社労士でありたいと思っています。

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