フリーランス等へのハラスメント対策を考える
代表社員の野田です。今回は、早いもので施行(2024年11月1日)から1年が経過したフリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)について取り上げます。
●監督行政
ご存じの方も多いと思いますが、フリーランス法に関する監督行政は、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省となっています。
まず、フリーランス(個人事業主)との取引の適正化における中核的実施機関としての役割を担うのが公正取引委員会です。公正取引委員会では、発注事業者に対し、報酬の支払期日や取引条件の明示、禁止行為(報酬減額・返品など)の遵守を義務付け、違反があれば報告徴収、立入検査、指導、勧告、命令、公表などの措置を実施します。次に中小企業庁では、取引適正化に関するフリーランスからの申出を受け付け、必要な調査・措置(指導など)を行います。最後に厚生労働省ですが、こちらではフリーランスの就業環境の整備に関する内容を取り扱っています。
- ●行政による調査・指導
各監督行政では、法違反がないか企業・業界への実態調査を行っていますが、この1年間で弊所顧問先企業様でも、厚生労働省(労働局雇用環境・均等部)による就業環境に関する調査を受けています。
東京労働局(増田局長)によれば、就業環境整備に関する①募集情報の的確表示義務(法第12条)、②育児介護等と業務の両立に対する配慮義務、③ハラスメント対策に係る体制整備義務(法第14条)、④中途解除等の事前予告・理由開示義務のうち、ハラスメント対策に関する指導が圧倒的に多いとのことです。指導内容としては、「フリーランス向けの相談窓口を作ったが、フリーランスに周知していなかった」、「労働者向けの相談窓口の対象者にフリーランスを含めたつもりが、できていなかった」などであり、同労働局は、「対応したつもりでいても、つい抜け落ちてしまっているといった違反が多い」とコメントしています。
一方、公正取引委員会では、違反に関する情報収集を積極的に行っており、その一環として、令和6年度において問題事例の多い業種に係る発注事業者3万人を対象に「フリーランスとの取引に関する調査」を実施、フリーランスとの取引が多い放送業及び広告業の事業者について集中的に調査を行い、令和7年10月までに128社の事業者に対し是正指導を行っています。
- ●企業における各種ハラスメント対策
事業主は、フリーランス(個人事業主)に対する相談窓口を設置するなどハラスメント対策を講じる必要・義務がありますが、2026年(令和8年)10月1日に労働施策総合推進法の改正施行が予定されているカスタマーハラスメント(以下、カスハラ)対策も忘れてはなりません。
顧客、取引先等からの著しい迷惑行為等を指すカスハラに関しては、労働者の就業環境を悪化させる行為として以前から問題となっていたところ、対策強化の必要性の高まりを受け、職場におけるカスハラを防止するための雇用管理上必要な措置が事業主に義務づけられます。
更に、雇用機会均等法が改正され、就職活動中の学生をはじめとする求職者等の求職活動等におけるセクハラ(就活等セクハラ)について、防止するための雇用管理上必要な措置が事業主に義務づけられ、こちらも同じく2026年(令和8年)10月1日施行予定となっています。
企業としてのハラスメント対策の対象は、社内労働者や退職者に限らず、フリーランス、関係業者・取引先、求職者など様々となっており、法令との関係は以下のように整理できます。
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労働者 |
フリーランス |
関係業者等 |
求職者等 |
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労働施策総合推進法 |
○ |
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○ |
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男女雇用機会均等法 |
○ |
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○ |
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育児介護休業法 |
○ |
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フリーランス法 |
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○ |
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- ●おわりに
フリーランスの就業環境整備として、「募集情報の的確表示、育児介護等と業務の両立に対する配慮、ハラスメント対策に係る体制整備、中途解除等の事前予告・理由開示」が課せられますが、その中身は募集時の条件、育児介護、ハラスメント、中途解除など、労働者への対応と似ていることが見て取れます。法で義務付けられているので対応するしかありませんが、これらの対応を行っていることでフリーランスの労働者性が強まるのではないかと個人的には心配するところです。
今年からカスハラ、就活セクハラへの対策も始まります(2026年10月1日予定)ので、「窓口担当者が退職した後の後任を選出しているか」、「非正規やフリーランスにも周知しているか」など、ハラスメント対策について再確認する良い機会となります。
野田 好伸 特定社会保険労務士
代表社員
コンサルタントになりたいという漠然とした想いがありましたが、大学で法律を専攻していたこともあり、士業に興味を持ち始めました。学生時代のバイト先からご紹介頂いた縁で社労士事務所に就職し、今に至っています。
現在はアドバイザーとして活動しておりますが、法律や制度解説に留まるのではなく、自身の見解をしっかりと伝えられる相談役であることを心掛け、日々の業務に励んでおります。
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