ニュース&コラムニュース&コラム

TOP大野事務所コラム月60時間の時間外労働のカウントと割増率の考え方

月60時間の時間外労働のカウントと割増率の考え方

【2026年9月2日更新】

 

こんにちは、大野事務所の土岐です。

 

月60時間を超える時間外労働の割増率の50%への引き上げは2010年4月の法改正によるものとなりますが、以下の中業企業の要件に該当する場合には、その適用が猶予されていました。2023年4月1日からは、これまで適用が猶予されていた中小企業においても、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が50%に引き上げられることはご存じの通りかと思います。

 

 

改正の対応として、労働条件通知書や賃金規程等に割増賃金率の記載を追加する他、運用面においても勤怠集計方法および給与計算システムの設定変更などの注意すべき点があります。

 

例えば、月60時間の時間外労働のカウントに際し、法定休日以外の休日労働を時間外労働としてカウントすることや、法定外休日労働の割増率が法定休日と同様に設定されている場合に、月60時間を超える法定外休日労働となった場合の割増率の取り扱いといった点が挙げられます。

 

今回は、①月60時間の時間外労働のカウントと②割増率の考え方について、原則の労働時間制の場合と、フレックスタイム制を適用している場合の具体的な考え方について、厚生労働省の「改正労働基準法のあらまし(以下、「あらまし」)」を用いて確認してみたいと思います。

 

1.原則の労働時間制(変形労働時間制、フレックスタイム制などを適用していない場合)

 

まず、原則の労働時間制の場合については、あらましの8ページに紹介されています。こちらでは、「法定休日は日曜日、法定休日以外の休日(以下、法定外休日)の割増率:35%」の前提にて、日曜時は休日を取得し、平日は毎日2時間の時間外労働、土曜日は毎回6時間の労働をした場合の例が挙げられています(【図1】)。

 

【厚生労働省「改正労働基準法のあらまし」】   

 

①月60時間の時間外労働のカウント

 

解説の詳細は【図1】の四角枠内をご覧いただきたいと思います。

この例では法定休日、法定外休日のいずれも割増率は35%とされているので、これまで勤怠集計および給与計算の際に、法定休日労働と法定外休日労働を分けずに集計し、手当も単に「休日労働手当」などとしている場合には、特に注意が必要といえるでしょう(ただ、本来、法定外休日労働は時間外労働となりますので、法定休日労働とは分けて時間数を集計し、手当項目も分けて支給する方が筆者は望ましいと考えます)。つまり、2023年4月以降は時間外労働60時間のカウントをする際に、法定外休日労働を除いてしまわないように気を付けましょう、ということです。

 

②割増率の考え方

 

また、29日~31日の時間外労働については60時間超となりますので、割増率50%とする必要があることはすんなりと考えられると思いますが、「27日の土曜日の労働のうち、終わりの4時間」については、35%ではなく50%の割増率となる点は要注意です(ただ、実務的には、法定外休日労働の途中で35%割増、50%割増の切り分けをするのはなかなか難しいのではないかと筆者は思っています)。

 

 

2.フレックスタイム制(清算期間は1ヶ月とします)の場合

 

次に、フレックスタイム制の場合については、あらましの10ページに紹介されています。こちらでは、「法定休日は日曜日、法定外休日の割増率:35%、法定労働時間の総枠は171時間」の前提とした場合の例が挙げられています(【図2】)。

 

【厚生労働省「改正労働基準法のあらまし」に一部加筆】  

 

①月60時間の時間外労働のカウント

 

フレックスタイム制における時間外労働時間数のカウント方法については、あらましのQ&Aに次の通り掲載されています。


Q2.フレックスタイム制の場合、時間外労働時間数はどのように計算するのですか。

A2.フレックスタイム制の場合、清算期間における法定労働時間の総枠を超えて労働した時間が時間外労働となります。したがって、1か月の起算日から、法定労働時間の総枠を超えて労働した時間を累積して計算をします。


 

【図2】の例で考えてみますと、1か月の起算日を起点として、法定労働時間の総枠を超えた部分の労働時間数を時間外労働時間とみていくことになります(ただし、フレックスタイム制に関する協定等により、「標準労働時間×所定労働日数」を超える部分を時間外労働とするなど、労使協定の内容によって、どこから時間外労働として取り扱うのかについては各社の定めによりますので、この点はご注意ください)。

 

②割増率の考え方

 

①の通り、1か月の起算日を起点として、法定労働時間の総枠を超えた部分以降を時間外労働としてカウントし、60時間を超えた部分から50%の割増が必要となります。【図2】の例では、30日の労働が60時間超となりますので、9時間全てが50%の割増になります。

なお、青枠の(筆者注)の通り、28日土曜日の労働時間が12時間だった場合、2時間分は月60時間を超えることになりますので、この部分については土曜日の割増率に対する35%ではなく、50%の割増が必要となる点は要注意です。

 

ちなみに、あらましの10ページでは、①月60時間の時間外労働のカウントについて、原則の考え方の他に、1日の労働時間に着目し各日の標準労働時間を超えた時間数を時間外労働時間数としてカウントする便宜上の考え方が示されています(【図3】)。

 

【厚生労働省「改正労働基準法のあらまし」に一部加筆】

 

ポイントは、原則の考え方と便宜上の考え方のそれぞれにより算出される時間外(法定外休日)労働手当の額が異なるという点です。時間外労働の集計手順が異なること、法定外休日労働に対する割増率が異なることが原因といえますが、これを解消するためには、「平日の引き上げ分と、土曜日の引き上げ分が同様となるようにする(例の場合、60時間超については、平日50%、土曜日60%とする)等の方法が考えられる」と解説資料では述べられています(字数の都合上、こちらの詳細については【図3】の解説をご参照ください)。

 

今回は以上となります。2023年4月1日より新たに時間外労働60時間超の割増率50%が適用となる会社様の他、既に適用対象となっている会社様におかれましても、一度自社の運用方法を確認されてみてはいかがでしょうか。

 

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

 

<参考URL>

■厚生労働省 リーフレット

https://www.mhlw.go.jp/content/000930914.pdf

■厚生労働省 改正労働基準法のあらまし

https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001465069.pdf

 

執筆者:土岐

 

土岐 紀文

土岐 紀文 特定社会保険労務士

第3事業部 部長

23歳のときに地元千葉の社労士事務所にて社労士業務の基礎を学び、その後大野事務所に入所しまして10数年になります。

現在は主にアドバイザリー業務に従事しています。お客様のご相談には法令等の解釈を踏まえたうえで、お客様それぞれに合った適切な運用ができるようなアドバイスを常に心がけております。

その他のコラム

過去のニュース

ニュースリリース

2026.10.11 大野事務所コラム
過半数代表者の選出
2026.10.01 大野事務所コラム
サテライトオフィス・在宅勤務における最低賃金の考え方
2026.09.30 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【労災保険の基礎知識―業務災害と通勤災害について(後編:通勤災害と主な保険給付の種類と概要)】
2026.09.21 大野事務所コラム
熱中症はどこから労災になる?
2026.09.16 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【カスタマーハラスメントを原因とする労災】
2026.09.12 ニュース
働き方・休み方改革取組事例について、定期健康診断等の診断項目の一部変更について
2026.09.11 大野事務所コラム
定年後の65歳までの継続雇用と雇止め
2026.09.01 大野事務所コラム
「大丈夫です。」は本当に大丈夫か?―「人と人との関係性」から人事労務を考える㊽
2026.08.26 これまでの情報配信メール
令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について・熱中症対策事例について
2026.08.21 大野事務所コラム
年末年始手当は賞与?
2026.08.12 これまでの情報配信メール
基本手当日額および高年齢雇用継続給付金等の支給限度額変更、育児休業給付の申請手続きの見直し、産業医の辞任等に関する報告の義務化について
2026.08.11 大野事務所コラム
熱中症対策を改めて確認しましょう
2026.08.01 大野事務所コラム
賃金未払いに伴う遅延利息(遅延損害金)を考える
2026.07.28 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【労災保険の基礎知識―業務災害と通勤災害について(前編:業務災害)】
2026.07.28 これまでの情報配信メール
カスハラ対策および求職者等セクハラ対策の義務化について
2026.07.21 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【採用面接時に応募者の健康状態を確認しても問題はないか】
2026.07.21 大野事務所コラム
飲み会での事故は労災になるのか ~裁決例から見る「業務性」の判断~
2026.07.11 大野事務所コラム
業務災害による休業の最初の3日間に所定休日が含まれる場合の労基法上の休業補償の考え方は?
2026.07.10 これまでの情報配信メール
労働者数50人未満の事業場にもストレスチェックが義務化されます
2026.07.01 ニュース
「ビジネスと人権」セミナー開催のご案内【2026年7月29日(水)】
2026.07.01 ニュース
当事務所スタッフが労務行政主催セミナーに登壇いたします【2026年7月29日(水)】
2026.07.01 大野事務所コラム
学ぶことを棄てる⁉ ―「人と人との関係性」から人事労務を考える㊼
2026.06.30 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【健康診断について】
2026.06.26 これまでの情報配信メール
令和8年度の算定基礎届の提出について、熱中症の予防対策について
2026.06.21 大野事務所コラム
退職給付金って何?
2026.06.12 これまでの情報配信メール
同一労働同一賃金に関する施行規則と告示の改正、 特定在留カード等交付申請について
2026.06.11 大野事務所コラム
同一労働同一賃金関連の法改正動向
2026.06.01 大野事務所コラム
懲戒処分における併科と二重処罰を考える
2026.05.29 これまでの情報配信メール
社会保険適用拡大特設サイトリニューアル・保険料調整制度のご案内(令和8年10月施行)
2026.05.28 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【1か月単位の変形労働時間制の基本と運用上の留意点(後編:運用上の留意点)】
2026.05.21 大野事務所コラム
労災裁決例から読む~出来事は単体で評価されていない~
2026.05.15 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【私傷病休職の発令】
2026.05.14 これまでの情報配信メール
労働保険年度更新に係るお知らせ・通勤手当等の非課税限度額の改正について
2026.05.11 大野事務所コラム
【令和8年度地方労働行政運営方針】
2026.05.01 大野事務所コラム
対話と議論の違い―「人と人との関係性」から人事労務を考える㊻
2026.04.27 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【1か月単位の変形労働時間制の基本と運用上の留意点(前編:制度の概要と導入のポイント)】
2026.04.25 これまでの情報配信メール
治療と就業の両立支援指針について
2026.04.21 大野事務所コラム
月給制における賃金支払基礎日数
2026.04.15 これまでの情報配信メール
障害者の法定雇用率引上げ・国民年金第1号被保険者の育児期間に係る国民年金保険料免除制度・法人の役員の被保険者資格の取扱いについて
2026.04.11 大野事務所コラム
2026年度法改正の動向(その2)
HOME
事務所の特徴ABOUT US
業務内容BUSINESS
事務所紹介OFFICE
報酬基準PLAN
DOWNLOAD
CONTACT
pagetop