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マイナ保険証について

こんにちは。大野事務所の深田です。

 

マイナンバーカードの健康保険証利用について登録が始まったのが2020年度のこと、「マイナ保険証」という言葉は今や一般化してきたように思いますが、これまで段階的に進められてきたマイナ保険証への移行も、今月2日以降は従来の保険証が使えなくなるという最終段階に至りました。そこで、今回のコラムでは、マイナ保険証の趣旨や使い方などについて改めて確認しておきたいと思います。

 

1)従来の保険証の廃止

「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律」(202362日成立、同月9日公布)によって、マイナンバーカード(正式には「個人番号カード」)と健康保険被保険者証(以下、保険証(従来の保険証の意))の一体化、いわゆるマイナ保険証の本格運用開始が決定しました。これにより、2024122日をもって保険証の発行が終了し、マイナ保険証を基本とする仕組みへ移行しましたが、経過措置として本年121日までは保険証が使用できることとされていました。

「本格運用開始」と言っていますのは、マイナンバーカードでのいわゆるオンライン資格確認(正式には「電子資格確認」))によって保険診療を受ける仕組み自体は、2021年から既に稼働していたことによります。ここでいう「資格」とは、医療保険の被保険者資格のことであり、医療機関・薬局(以下、医療機関等)を受診する場面でオンライン資格確認が活用されることとなります。保険証の場合、被保険者(患者)が医療機関等の窓口で保険証を提示することにより、当該保険証の内容に基づく資格があるという前提で医療機関等を受診できていたわけですが、受診時点で既に資格を喪失していたとしても保険証のみをもってそれを判断することはできないという問題があり、場合によっては保険証の正しい所有者でなかったとしても分からないということすら起こり得ました。そこで、医療機関等の窓口に顔認証付きカードリーダーを設置し、それにマイナンバーカードを読み込むことで、マイナンバーカードに記録されている利用者証明用電子証明書に基づいて本人確認(顔認証または4桁の暗証番号入力)と資格確認を即時に行う仕組みが導入されることとなりました。

オンライン資格確認の場合、医療に関する情報について、マイナンバーカードを通じて受診する医療機関等へ提供することが可能となります(本人の同意が前提)。これにより、過去に処方された薬の情報を当該医療機関等が閲覧できたり、保険者(健康保険組合)へ事前申請することなく医療機関等窓口での限度額を超える医療費の一時支払いが不要となったりするメリットがあります。

 

2)マイナ保険証による医療機関等の受診

マイナ保険証によって医療機関等で保険診療を受けるためには、マイナンバーカードの取得に加えて、マイナポータルなどを通じたマイナ保険証としての利用登録が必要となります。マイナンバーカードに連携された記号や番号など医療保険の資格情報は、マイナポータルから確認することができます。マイナ保険証の利用登録が完了している被保険者には、各保険者から紙ベースの「資格情報のお知らせ」が交付されますが、これはカードリーダーがない医療機関等や故障中などカードリーダーが使えない場合でも、マイナ保険証と「資格情報のお知らせ」を一緒に提示することで保険診療を受けられるようにするためのものです。したがいまして、「資格情報のお知らせ」は保険証に相当するものではなく、あくまで上述のような事情がある場合に、マイナ保険証とセットで提示して使用するものということになります。

 

3)資格確認書による医療機関等の受診

マイナンバーカードを取得していない、またはマイナンバーカードは保有しているもののマイナ保険証としての利用登録をしていない場合など、被保険者または被扶養者がオンライン資格確認を受けることができない状況にあるときには、事業主を経由して申請することで保険者から交付または提供された「資格確認書」(所定の事項を記載した書面の交付または当該事項の電磁的方法による提供)により保険診療を受けることができます(健康保険法51条の31項、同法施行規則47条)。この関係で、資格取得届および被扶養者(異動)届には、「資格確認書発行要否」欄が新たに追加されています。

資格確認書は、マイナ保険証を保有していない場合等の代わりとしての位置づけであり、医療機関を受診する上での基本はあくまでマイナ保険証です。資格確認書には有効期限があり、交付または提供の日から起算して5年を超えない範囲内において保険者が定めるものとされています。なお、資格確認書の交付を受けた被保険者や被扶養者に係る資格喪失や被扶養者削除の手続き時には、資格確認書を回収して保険者へ返納する必要があります(有効期限が切れた資格確認書の返納は不要)。

 

 

                                                   「マイナ保険証クイックガイド」(厚生労働省)より

 

執筆者:深田

深田 俊彦

深田 俊彦 特定社会保険労務士

労務相談室長 管理事業部長/パートナー社員

社会人1年目のときの上司が元労働基準監督官だったことが、労働分野へ関心を寄せるきっかけとなりました。
日頃からスピード感を持って分かりやすくまとめ、分かりやすく伝えることを心掛けています。また、母の「人間は物事が調子良く進んでいるときに感謝の気持ちを忘れがちである」という言葉を、日常生活でも仕事の上でも大切にしています。

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