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食事手当は割増賃金の計算基礎に含める

こんにちは。大野事務所の高田です。

 

今回は、食事手当は割増賃金の計算基礎に含めなければならないという話です。
一口に食事手当といっても、手当の定義が法律等で定められているわけではありませんので、支給基準や支給方法は企業によって様々に異なります。筆者が今回想定している食事手当というのは、勤務した日の昼食代補助を目的として支給するもののことです。先般、筆者の顧問先様においていささか悩ましい事例がありましたので、支給基準や金額などの詳細を少しアレンジしたうえでご紹介したいと思います。

 

1.食事手当の概要

 

当該企業様における食事手当の概要は次のとおりです。

 

  1. ① 所定労働時間(8時間)を実際に勤務した日に、1日当たり200円を支給する。
    ② 当該企業様には食堂のある事業所と食堂のない事業所とがあり、それぞれの昼食代負担の均衡を図ることが目的であるため、「食堂のない事業所に勤務した日」を支給対象とする。
  2. ③ したがって、休暇を取得した日は支給しない。同様に、在宅勤務の日も支給しない。

 

2.割増賃金の計算基礎に含めなければならない

 

そもそも何故食事手当を割増賃金の計算基礎に含めなければならないのかというと、割増賃金の計算基礎から除外される賃金は以下の7つ(①家族手当、②通勤手当、③別居手当、④子女教育手当、⑤住宅手当、⑥臨時に支払われた賃金、⑦1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金)に限定されており、食事手当はこれらのいずれにも該当しないから、というのがその理由です。

 

なお、本例のように1日単位で支給する場合は、支給した日において割増賃金が発生した場合に、手当の日額を計算基礎に含める必要があります。具体的には、8時間の勤務に対して200円を支給していますので、1時間当たり25円(200円÷8時間)を算入するということです。手当を支給する日と支給しない日とで割増賃金の基礎給が異なることになりますので、割増賃金計算が煩雑になります。

 

3.月額の定額手当に変えられないのか

 

1日単位で支給することで割増賃金計算が煩雑になってしまうわけですので、月額の定額手当に変えられないのかどうかを当該企業様に打診してみました。月額の手当に変更してしまえば、基本給や役職手当などと同様に取り扱えばよいだけですので、計算が煩雑になるという問題から解放されます。ところが、次のようなポイントにこだわりがあるため、やはり今の支給基準は変えたくないとのことでした。

 

● 食堂のない事業所に実際に勤務した日数に応じて、その日数分を支給したい。
● したがって、休暇の日や在宅勤務の日は支給対象としない。
● 社員によっては食堂のある事業所と食堂のない事業所とを行き来しているが、食堂のない事業所に勤務した日のみ支給したい。

 

如何でしょうか。このようなこだわりをお持ちである限り、確かに月額の定額手当へと変更することは諦めざるを得ませんでした。

それでは、どのように割増賃金を計算すればよいのでしょうか。

 

4.割増賃金の計算方法(本来の形)

 

ポイントは、食事手当(200円)を支給する日には、割増賃金の基礎給に25円(200円÷8時間)を加算し、支給しない日には基礎給に加算しないという処理を行うことにあります。そうすると、いつが支給する日で、いつが支給しない日なのかを日ごとに判別できるようにしなければなりませんので、出勤簿上において、支給する日には印を付けるなどの記録が必要になります。そのうえで、支給する日の残業時間と支給しない日の残業時間とを別々に集計し、残業手当を別々に計算するといった手順が考えられます。

 

以上のような処理は理論上は可能であるものの、実際問題としては、割増賃金は残業手当だけではありませんので、休日、深夜なども含めた割増賃金に関係する時間と手当の項目をすべて2通り用意しなければなりませんし、何よりもシステム対応には費用がかかるということで、とうてい実現は困難だろうとの結論に至ってしまいました。

 

5.現実的な対応策

 

どうしても支給基準は変えられないとのことですので、この支給基準を維持したまま割増賃金の計算を簡便にし、かつ不足を生じさせない方法は1つしか思い付きません。それは、すべての日の割増賃金の基礎給に25円(200円÷8時間)を加算することです。これにより、食事手当を支給しない日の割増賃金にも食事手当が含まれることとなり、企業様としてはいささか余計な持ち出しが増えてしまいますが、1時間当たり25円ならば許容範囲とのことで、結局この形に落ち着きました。なお、食事手当が支給される可能性のある社員のみ加算するのは不公平であることから、社員全員の割増賃金の基礎給を25円加算するとのことでした。

 

6.アルバイトにも支給

 

実はこの話はここで終わりではなく、時給のアルバイトはどうしたらよいのか?という問題が次に控えていました。

アルバイトの場合は1日の所定労働時間が人によって異なりますので、「食堂のない事業所において1日8時間以上を勤務した日」が支給対象となっています。たとえば、6時間契約のアルバイトは、2時間以上延長して8時間に達した日のみ支給対象となり、8時間契約のアルバイトは、契約通り勤務すれば支給対象となるということです。

 

アルバイトへの対応については、結論だけを簡潔に記したいと思います。
6時間契約のアルバイトの場合は、契約上の所定労働時間を超過して8時間以上になった日にのみ200円が支給されますので、当該200円を割増賃金そのもの(通常の割増賃金への特別加算)として位置付けることとしました。

一方、8時間契約のアルバイトの場合は、契約通りの所定労働時間を勤務すれば200円が支給されますので、割増賃金の計算基礎への算入を免れないことから、割増賃金を計算する際の時給に25円(200円÷8時間)を加算することとしました。

 

以上、食事手当1つで、これほど悩ましい問題に発展するとは思いもよらなかったというお話でした。

 

 

執筆者:高田

高田 弘人

高田 弘人 特定社会保険労務士

パートナー社員

岐阜県出身。一橋大学経済学部卒業。
大野事務所に入所するまでの約10年間、民間企業の人事労務部門に勤務していました。そのときの経験を基に、企業の人事労務担当者の目線で物事を考えることを大切にしています。クライアントが何を望み、何をお求めになっているのかを常に考え、ご満足いただけるサービスをご提供できる社労士でありたいと思っています。

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