ホオポノポノ―「人と人との関係性」から人事労務を考える⑳
こんにちは。大野事務所の今泉です。このコラムも20回を迎えました。
前回は、コンフリクトの解決モードと題して①強制、②服従、③回避、④妥協、⑤協調の5つについて「二重関心モデル」にそって説明しました。中でも⑤協調のモードが「双方の立場を尊重し、協力しながら事態解決」する点で目指すべき在り方ということにはなるのですが、それぞれの態度(モード)にはそれぞれの特徴があり、関係性に応じて優先させるべきものがある、という内容でした。
そこで、栄えある第20回目のコラムでは、この協調モードについての詳細を説明・・・と思ったのですが、閑話休題。
タイトルの内容について触れようと思います。
この言葉、なんのこっちゃ?と思う方もいればご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、ご存知の方の多くは、心のセルフクリーニングに関するものとして理解されているかもしれません。
ですが、ここではその源流(諸説あるのかもしれませんが)となる「ハワイ諸島などポリネシア地域で行われていた伝統的な平和的問題解決方法」という意味における「ホオポノポノ」について書いていきたいと思います。
「ホオ」というのは「~させる」、「ポノ」というのは「良い、とか元の状態」という意味なのだそうです。ですので、「元の良い状態に戻させる」というのがこの言葉のそもそもの意味合いということになるでしょう。
平たくいえば、人々の間で何かもめごとが起きたときに、仲直りをするための話し合いのやり方、ということになります。
例えば、、、
あるコミュニティでAさんとBさんとの間で畑の境界に関する問題が発生しました。
ほっとくと大ゲンカになる、ということで、コミュニティ員たちはホオポノポノの集会を開くことにしました。
すると、Aさんは「BさんがAさんの畑を勝手に耕した」と言い出します。 一方、Bさんは「Aさんの土地の土砂が先の大雨でBさんの畑に大量に流れこんできたので作物が台無しになった、どけるようにAさんに言っても、無視された。」と言いました。 |
こういったケースに対して、子どもから老人まで集まったすべての人が、自分はどう思うか、どんな結果を望んでいるかを正直に率直な意見を述べます。
全員がそれを述べたあと、仲裁者である長老は皆の意見をまとめて結論を出します。
ひとりでも反対すれば、最初からやり直し・・・。
ときには長い時間をかけて、じっくりとみんなで問題解決に至るまで突き詰めるわけです。
結局、「今回のケースではAさんの土砂の放置、Bさんの勝手な耕作、双方に落ち度がある。」ということで全員が賛成したとすれば、AさんBさん双方が謝ります。水に流す、ということですね。
そして、このようなことが次も発生しないようにするにはどうすればよいか、これまた皆で話し合います。再発防止策ですね。
その結果、長老から「先の大雨の被害はコミュニティの問題と捉え、大きな土砂崩れが起きた場合にはコミュニティ全員で協力して修理する」との結論が出され、皆がそれに合意したとすれば、これにてホオポノポノは終了。
その後、みんなでご馳走を食べて解散、とのことだそうです。
少しこのコラムのテーマに寄せてみます。
権威のある長老が仲裁者ということで「調停」的な解決方法といえますが、その調停案自体、参加者の全員ブレーン・ストーミングしながら調停案を考える、というところが特徴的であり、最終的には皆が納得できる結論を導き出す、というwin-winな解決がもたらされます。
日本でもかつての寄合や町内会などこれに近いものはありそうです。
確かに、時間に追われる現代から見れば牧歌的に映るかもしれませんし、少々面倒にも思えるのですが、現代の我々にとっても示唆に富んだ大事な要素を含むものではないかな、とも思えます。
ちなみに、ハワイに行きたいなぁ、と夢想しながら在宅勤務をしつつ、今回のテーマを思いついた訳ではありませんので、悪しからず。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
今泉 叔徳 特定社会保険労務士
渋谷第1事業部 事業部長/ パートナー社員
群馬県桐生市出身。東京都立大学法学部法律学科卒業。
人事労務関係の課題解決の糸口としてコミュニケーションや対話の充実があるのではないかと考え、これにまつわるテーマでコラムを書いてみようと思い立ちました。日頃の業務とはちょっと異なる分野の内容ですので、ぎこちない表現となってしまっていたりすることはご了承ください。
休日には地元の少年サッカーチームでコーチ(ボランティア)をやっていて、こども達との「コミュニケーション」を通じて、リフレッシュを図っています。
過去のニュース
ニュースリリース
- 2024.04.24 大野事務所コラム
- 懲戒処分における社内リニエンシー制度を考える
- 2024.04.17 大野事務所コラム
- 「場」がもたらすもの
- 2024.04.10 大野事務所コラム
- 取締役の労働者性
- 2024.04.08 ニュース
- 『workforce Biz』に寄稿しました【算定基礎届(定時決定)とその留意点(前編)】
- 2024.04.03 大野事務所コラム
- 兼務出向時の労働時間の集計、36協定の適用と特別条項の発動はどう考える?
- 2024.03.27 大野事務所コラム
- 小さなことからコツコツと―「人と人との関係性」から人事労務を考える㉜
- 2024.03.21 ニュース
- 春季大野事務所定例セミナーを開催しました
- 2024.03.20 大野事務所コラム
- 退職者にも年休を5日取得させる義務があるのか?
- 2024.03.15 ニュース
- 『月刊不動産』に寄稿しました【2024年4月以降、採用募集時や労働契約締結・更新時に明示すべき労働条件が追加されます!】
- 2024.03.21 これまでの情報配信メール
- 協会けんぽの健康保険料率および介護保険料率、雇用保険料率、労災保険率、マイナンバーカードと保険証の一体化について
- 2024.03.26 これまでの情報配信メール
- 「ビジネスと人権」早わかりガイド、カスタマーハラスメント防止対策企業事例について
- 2024.03.13 大野事務所コラム
- 雇用保険法の改正動向
- 2024.03.07 ニュース
- 『workforce Biz』に寄稿しました【専門業務型裁量労働制導入の留意点(2024年4月法改正)】
- 2024.03.06 大野事務所コラム
- 有期雇用者に対する更新上限の設定と60歳定年を考える
- 2024.02.28 これまでの情報配信メール
- 建設業、トラック等運転者、医師の時間外労働の上限規制適用・令和6年度の年金額改定について
- 2024.02.28 大野事務所コラム
- バトンタッチ
- 2024.02.21 大野事務所コラム
- 被扶養者の認定は審査請求の対象!?
- 2024.02.16 ニュース
- 『月刊不動産』に寄稿しました【派遣労働者の受入れ期間の制限〈後編〉】
- 2024.02.14 大野事務所コラム
- フレックスタイム制の適用時に一部休業が生じた場合の休業手当の考え方は?
- 2024.02.16 これまでの情報配信メール
- 令和6年能登半島地震に伴う労働基準法や労働契約法等に関するQ&A 等
- 2024.02.09 ニュース
- 『workforce Biz』に寄稿しました【固定残業代の計算方法と運用上の留意点】
- 2024.02.07 大野事務所コラム
- ラーメンを食べるには注文しなければならない―「人と人との関係性」から人事労務を考える㉛
- 2024.01.31 大野事務所コラム
- 歩合給の割増賃金を固定残業代方式にすることは可能か?
- 2024.01.24 大野事務所コラム
- 育児・介護休業法の改正動向
- 2024.01.19 ニュース
- 『月刊不動産』に寄稿しました【派遣労働者の受入れ期間の制限〈前編〉】
- 2024.01.17 大野事務所コラム
- 労働保険の対象となる賃金を考える
- 2024.01.10 大野事務所コラム
- なぜ学ぶのか?
- 2023.12.21 ニュース
- 年末年始休業のお知らせ
- 2023.12.20 大野事務所コラム
- 審査請求制度の概説③
- 2023.12.15 ニュース
- 『月刊不動産』に寄稿しました【テレワークと事業場外みなし労働時間制】
- 2024.01.17 これまでの情報配信メール
- 令和6年4月からの労働条件明示事項の改正 改正に応じた募集時等に明示すべき事項の追加について
- 2023.12.13 これまでの情報配信メール
- 裁量労働制の省令・告示の改正、人手不足に対する企業の動向調査について
- 2023.12.13 大野事務所コラム
- 在宅勤務中にPCが故障した場合等の勤怠をどう考える?在宅勤務ならば復職可とする診断書が提出された場合の対応は?
- 2023.12.12 ニュース
- 『workforce Biz』に寄稿しました【研修、自己学習の時間、接待の飲食、ゴルフ、忘年会や歓送迎会は労働時間となるのか?】
- 2023.12.06 大野事務所コラム
- そもそも行動とは??―「人と人との関係性」から人事労務を考える㉚
- 2023.11.29 大野事務所コラム
- 事業場外労働の協定は締結しない方がよい?
- 2023.11.28 これまでの情報配信メール
- 多様な人材が活躍できる職場環境づくりに向けて、副業者の就業実態に関する調査について
- 2023.11.22 大野事務所コラム
- 公的年金制度の改正と確定拠出年金
- 2023.11.17 ニュース
- 『月刊不動産』に寄稿しました【試用期間中の解雇・本採用拒否は容易にできるのか】