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「今後の人材開発政策の在り方に関する研究会報告書」が公表されました

こんにちは、大野事務所の土岐です。

 

今回は、先日(202577日)に公表されました「今後の人材開発政策の在り方に関する研究会報告書」について採り上げます。

 

「今後の人材開発政策の在り方に関する研究会報告書」について

 

「今後の人材開発政策の在り方に関する研究会報告書(以下、報告書)」は、有識者で構成される「今後の人材開発政策の在り方に関する研究会(2025127日~620日の計6回開催)」での議論をまとめ、厚生労働省が公表したものです。

 

さて、報告書では、次の3つの視点が重要であるとしつつ、この視点から4つの基本的方向を議論の柱として検討・考察しています。また、「多様な労働者の人材開発策」として、スキル向上の機会が少ない非正規雇用労働者や中高年労働者、キャリア形成の初期段階にある若者への支援策や、現場人材育成の支援策についてまとめた内容となっています(報告書の概要はこちらをご参照ください。)。

 

3つの視点>

 

個別化

個々の労働者・企業の事情に合わせた人材開発を行うこと

共同・共有化

産業・地域等の単位で複数の企業が連携して人材開発を行うこと

見える化

労働市場及び企業における職務・スキル・処遇・人材開発の見える化を進めることにより、企業や個人の人材開発を促進していくこと

 

4つの基本的方向>

 

(1)労働市場でのスキル等の見える化の促進

① 労働市場におけるスキルの標準化と見える化

② 企業の人材開発に関する情報の発信等

(2)個人のキャリア形成と能力開発支援の充実

① キャリア意識の醸成とキャリア形成支援

② 個人の能力開発支援

(3)企業の人材開発への支援の充実

① 人材開発の質を高める環境整備

② デジタル技術の活用による労働生産性の向上と個人の能力の最大化

③ 中小企業に対する人材育成の支援

(4)人材開発機会の拡大、技能の振興

① 人材開発機会の充実

② 民間教育訓練機関が提供する訓練機会の充実と質の確保

③ 技能五輪国際大会を契機とした技能の振興

 

以下では特に筆者が気になった点について、いくつかご紹介します。

 

(1)労働市場でのスキル等の見える化の促進  ①労働市場におけるスキルの標準化と見える化

 

<概要>

●企業が効果的に人材を確保し育成し戦力化するには、労働者の有するスキルと企業が求めるスキルの「見える化」を促進する必要がある。そのための重要な仕組みの一つが職業能力評価制度であり、これまで企業横断的なスキルを評価する「技能検定」、個別企業におけるスキルを評価する「認定社内検定」を運用し、さらに令和6 3 月より、特定の業界におけるスキルを評価する「団体等検定」を創設した。今後は企業、労働市場におけるスキルの「見える化」を図るために職業能力評価制度の整備、活用をこれまで以上に進める必要があるが、特に、「認定社内検定」と「団体等検定」に取組む企業、団体に対する支援を拡充することが重要である。

●建設業界では、労働者の経験や技能を評価し、それに応じた適正な賃金の実現を目指す「建設キャリアアップシステム」を構築している。このような職業能力評価の業界単位の取組を支援していくことも重要である。

 

労働者の有するスキルと企業の求めるスキルの見える化については、個人としては共通のスキルチェックができること、企業としては採用に際して自社の求めるスキルを有しているかを見極めやすいなど、双方にとってメリットがあると思います。この点、建設業では、技能者の資格、社会保険の加入状況、現場の就業履歴等を業界内で横断的に登録・蓄積する「建設キャリアアップシステム(CCUS)」を構築し、その利用を促しているとのことです。

 

【資料出所:厚生労働省

 

CCUSの20256月末時点の利用状況は国土交通省によれば以下の通り登録数は伸びているようですので、これを利用することに一定の効果があるのかもしれません。

 

【資料出所:国土交通省

 

(2)個人のキャリア形成と能力開発支援の充実  ②個人の能力開発支援

 

<概要>

●労働者が自発的に教育訓練に専念するために仕事から離れる場合には、訓練期間中の生活費を支援する仕組みがないことが問題になる。この点については、労働者の主体的な能力開発を支援する観点から、労働者が離職せずに生活費等への不安なく教育訓練に専念できるように、雇用保険被保険者が教育訓練を受けるための休暇を取得した場合に、賃金の一定割合を支給する教育訓練休暇給付金が創設されたところである(令和7年10月施行)。このような労働者が自ら学びキャリアを形成していく基盤を整えるには、企業を後押しする取組を促進することも重要である。

 

本年101日より創設される教育訓練休暇給付金は、以下の①・②の要件を満たす雇用保険の一般被保険者が、就業規則等に基づき連続した30日以上の無給の教育訓練休暇を取得する場合に受けられる給付です。

(なお、当該給付金を受けた場合、休暇開始日より前の被保険者期間や雇用保険に加入していた期間はリセットされますので、一定期間は失業給付などの雇用保険制度に基づく給付金は原則受給できなくなる点は注意を要します。)

 

【資料出所:厚生労働省 教育訓練休暇給付金のご案内

 

ただ、「就業規則等に基づき連続した30日以上の無給の教育訓練休暇」の制度は一部の企業では導入している例をお見受けするものの、多くの企業ではこうした制度の導入自体が難しいことが多いのが実情だと思います。

教育訓練を受けたい社員の方々の休暇取得を認め、その間の代替要員の確保といった実際の業務を進めるための調整を図り、その社員の方々の得た知識を還元してもらうといった一つのサイクルを回すことは容易なものではないと思いますが、こうした制度を導入し、外部で得た知識等を社内に還元してもらうことで組織の活性化や社業の発展の期待が見込めること、社員の定着や採用にあたって有効な策となるのかもしれません。

 

多様な労働者の人材開発策  ③若者への支援

 

<概要>

●若者の職業意識については、一つの企業に長く勤める方がよいとする意識が低下し、自分の時間を持ち生活と両立できることや、休みを取りやすい、在宅勤務が可能など柔軟な働き方ができることを重視する志向が確認できる。

 

こちらの点に関しては、以下の資料から確認できます。

 

【資料出所:厚生労働省

 

ただ、筆者の感覚的なものではありますが、在宅勤務やリモートワークが可能で休暇を取りやすく、働く時間帯を自分で調整できる環境に加え、福利厚生の充実を企業側が意識的に推進しようとする動きもあり、こうした働き方を望む傾向は、どの世代においても以前より一層強まっているように思われます。

 

おわりに

 

筆者が気になった点は以上です。

報告書は30ページほどの内容になりますので、ご興味のある方は以下URLより全文をご確認いただけたらと思います。

この報告書を踏まえて厚生労働省の労働政策審議会の人材開発分科会では、次期職業能力開発基本計画等の策定に向けた議論が行われる予定とのことです。

 

<参考URL

■厚生労働省 「今後の人材開発政策の在り方に関する研究会報告書」を公表します

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59371.html

■厚生労働省 今後の人材開発政策の在り方に関する研究会

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_48242.html

 

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

 

執筆者:土岐

 

 

 

 

土岐 紀文

土岐 紀文 特定社会保険労務士

第3事業部 部長

23歳のときに地元千葉の社労士事務所にて社労士業務の基礎を学び、その後大野事務所に入所しまして10数年になります。

現在はアドバイザリー業務を軸に、手続きおよび給与計算業務にも従事しています。お客様のご相談には法令等の解釈を踏まえたうえで、お客様それぞれに合った適切な運用ができるようなアドバイスを常に心がけております。

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