TOP大野事務所コラムコンフリクトの解決モード―「人と人との関係性」から人事労務を考える⑲

コンフリクトの解決モード―「人と人との関係性」から人事労務を考える⑲

こんにちは。大野事務所の今泉です。梅雨入りですね。

 

これまで「対立」もしくは「衝突」が起こる原因を分類し、前回ではコンフリクトに対処する方法の具体例を考えましたが、解決案の結果をより一般的・抽象的にカテゴライズすると、以下のようなモードがあるといわれています。

 

  •  ①強制
  •  ②服従
  •  ③回避
  •  ➃妥協
  •  ⑤協調

 

以下、それぞれを説明したいと思いますが、ところで、これらの位置づけをモデル化したものに以下のようなものがあります。

 

これは「二重関心モデル」と呼ばれるものですが、コンフリクトが起きたときに「他人の意見・利害への配慮」を重視するか「自分の意見・利害への配慮」を重視するかでX軸とY軸を構成し、分類したものです。

これを踏まえて、それぞれの特徴を簡単に見ていきます。

 

  • ①強制

自分の意見・利害への配慮のみを重視するパターンです。この態度の特徴としては、勝者と敗者をつくり出すこと、そして敗者に否定的感情が生まれることです。相手への配慮が欠けているわけですので、ときには相手を犠牲にしても自分の利益を中心に解決するモードといえます。有効な方法とはいえなさそうですが、緊急事態に対して即断する必要がある場合などは効果的ともいえます。

 

  • ②服従

他人の意見・利害への配慮のみを重視するパターンです。つまり、自分自身は不本意でいる、ということであり、決して望ましい状態とはいえないでしょう。しかしながら、自分が間違っていると感じたときは服従するという選択肢もあるでしょうし、「今回は諦める方が得策」と感じたときも同様でしょう。捲土重来を期す、ですね。

 

  • ③回避

自分の意見・利害への配慮も他人の意見・利害への配慮も重視しない、コンフリクトそのものを避けるパターンです。前回、「先送り」という方法をお伝えしましたが、まさにこれに該当するでしょう。放っておけば大問題になるようなケースでは回避は最もそぐわない態度といえるでしょう。逆に一定の冷却期間を置いた方がよいと想定されるケースもあるでしょう。こういった場合には取り得る対応といえます。

 

  • ➃妥協

上表の「二重関心モデル」でいうところの中心に位置します。前回のオレンジ・ゲームにおける姉妹でオレンジを半分半分に与える、という方法がこれに該当します。実際には多くの場面で「妥協」が行われているように思えますが、特にコンセンサスが得られないようなケースなどに互いの要求水準を下げて部分的な実現を図るものです。「歩み寄る」といえば聞こえはいいけれども、実際は「痛み分け」のことも多いようです。

 

  • ⑤協調

自分の意見・利害への配慮、他人の意見・利害への配慮ともに重視する、というパターンであり、協調モードで解決を目指すべき、というのは「二重関心モデル」を見ても一目瞭然かと思われます。この内容についてはまた回を改めて説明したいと思います。

 

各モードについては以上となりますが、ここでお伝えしたいのは、「協調」が全ての場面で取り得るオールマイティーな対応というわけではないということです。上述したようにそれぞれの態度にはそれぞれの特徴があり、関係性に応じて優先させるべきものがあるといえます。状況に応じてモードを使い分けることが大切、ということですね。

 

例えば、個別労働紛争においては、「金銭解決」という方法がとられたりします。あっせんや労働審判のようなADRではもちろんのこと、裁判上でも行われますが、そういった公権力等の第三者が介入する場合だけでなく、会社と社員間のトラブル全般にも用いられるものかと思われます。

 

これは法的には「和解」と呼ばれるものです。

和解は裁判上の和解と私法上の和解(裁判外の和解)とに分けられますが、私法上の和解は民法上定められる契約の一種となります(典型契約)。

 

(和解)

695 和解は、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約することによって、その効力を生ずる。

(和解の効力)

696条 当事者の一方が和解によって争いの目的である権利を有するものと認められ、又は相手方がこれを有しないものと認められた場合において、 

 その当事者の一方が従来その権利を有していなかった旨の確証又は相手方がこれを有していた旨の確証が得られたときは、その権利は、和解によって

 その当事者の一方に移転し、又は消滅したものとする。

 

実は民法上この2か条しか和解に関する条文はないのですが、第695条に「互いに譲歩する」という文言があるように、これは上記でいう「妥協」というモードに該当します。問題がこじれて紛争となった、あるいは紛争になりそうな場合のように、もはや「手遅れ」というタイミングでは、このような妥協モードが奏功したりするわけです。

 

 

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

 

今泉 叔徳

今泉 叔徳 特定社会保険労務士

渋谷第1事業部 事業部長/ 執行役員

群馬県桐生市出身。東京都立大学法学部法律学科卒業。
人事労務関係の課題解決の糸口としてコミュニケーションや対話の充実があるのではないかと考え、これにまつわるテーマでコラムを書いてみようと思い立ちました。日頃の業務とはちょっと異なる分野の内容ですので、ぎこちない表現となってしまっていたりすることはご了承ください。
休日には地元の少年サッカーチームでコーチ(ボランティア)をやっていて、こども達との「コミュニケーション」を通じて、リフレッシュを図っています。

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