そもそも行動とは??―「人と人との関係性」から人事労務を考える㉚
こんにちは。大野事務所の今泉です。師走ですね。
さて、これまで望ましい行動を増やし望ましくない行動を減らす方法として、強化、弱化、消去というものを説明してきましたが、そもそも行動とはどういったものを指すのでしょうか。行動の定義ですね。
言葉の意味としては、振る舞い、活動といったものになるでしょう。しかしながら、強化されたり弱化されたり、はたまた消去される対象としての行動、といったときには、まず次のような2つのテストをクリアしなければならない、とされます。
最初が「死人テスト」といわれるものです。
ちょっと物騒な言葉ですが、人や動物の行動について、何が行動で何が行動ではないかの見極めるに際して、「死人にできることは行動ではない」と定義します。
より具体的には、次のようなものとなります。
死人にできること |
例 (動きのないもの) |
|
受け身 |
~される |
褒められる、怒られる、話しかけられる、触られる、、、 |
状態 |
~している |
座っている、寝ている、手に持っている、じっとしている、、、 |
否定形 |
~しない |
歩かない、しゃべらない、食べない、書かない、、、 |
これらは行動ではない、ということになりますね。一方で、行動に該当するもの例えば、、、
歩く、話す、書く、立ち上がる、といったものです。もちろん、死人にはできないことになります。
つまり、「行動はなんでしょう?」と問われたときに死人テストをしてみて、「〜しない」とか「〜される」とか「〜している」という表現になっているなら、それは行動でないということになります。言い換えれば、死人テストをしたときに「死人にはできない」となるものはすべて行動であると考えられるわけです。
次に、「具体性テスト」です。「ビデオクリップ法」などとも呼ばれます。
問題の解決のためには行動をできるだけ具体的に定義する必要がありますが、対象となる行動が決まらなければ効果的な行動改善ができません。よくいわれる例では「試験勉強をする」というのは、具体的ではないとされます。何をどの程度勉強したのか分からないからです。教科書を読んだのか、計算問題を解いたのか、漢字を練習するのかという具体性に欠けるというわけです。
また、「清潔にする」「ダイエットする」というのも具体的ではないとされます。具体的なのは、例えば「トイレの後で、手を洗う」「半年後に5㎏、体重を落とす」といったものになるでしょう。「試験勉強をする」ではなくて、「漢字練習を50題解く」となります
つまり、ビデオでその場を撮影して誰でもそれと分かるかどうかで判断するというものです。
このように、「死人テスト」と「具体性テスト」の両方をクリアしたものを、ここでは行動と呼ぶことになります。
そして、ここでいう行動は大きく二つに分かれるとされています。
① オペラント行動
② レスポンデント行動 |
まず、オペラント行動とは、自発的に行う行為のことをいいます。行動という言葉のイメージどおりかと思います。
もう1つのレスポンデント行動とは、特定の刺激に誘発される自動的な反応、反射等が該当します。パブロフの犬が有名でしょうか。
今までお話ししてきた、強化、弱化、消去の対象となる行動は「オペラント行動」ということになります。そして、当たり前のことですが、行動の原因は行動の後にあることになります。例えば、自動販売機で缶コーヒーを買う、という行動は缶コーヒーが飲みたいという原因があるので、自動販売機にICカードをかざすという行動になる、ということです。
来年からは、これらの概念の実践的な使途についてお話していきたいな、と思っています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
今泉 叔徳 特定社会保険労務士
渋谷第1事業部 事業部長/ パートナー社員
群馬県桐生市出身。東京都立大学法学部法律学科卒業。
人事労務関係の課題解決の糸口としてコミュニケーションや対話の充実があるのではないかと考え、これにまつわるテーマでコラムを書いてみようと思い立ちました。日頃の業務とはちょっと異なる分野の内容ですので、ぎこちない表現となってしまっていたりすることはご了承ください。
休日には地元の少年サッカーチームでコーチ(ボランティア)をやっていて、こども達との「コミュニケーション」を通じて、リフレッシュを図っています。
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