TOP大野事務所コラム第1回から第5回までのまとめ ― 「人と人との関係性」から人事労務を考える⑥

第1回から第5回までのまとめ ― 「人と人との関係性」から人事労務を考える⑥

 

これまで『人と人との関係性』に着目し、とりわけ人事労務管理に必要なコミュニケーションについて思いつくままにお伝えしてまいりました。これまでの内容を読み返してみたのですが、「思いつくまま」というにも程があるだろう、というくらい雑多な印象でしたので、この辺で一度まとめておきたいと思います。

 

1.人事労務管理に必要となるコミュニケーション(1

 

 人事労務管理は人と向き合うことが要求されますが、相手が人であるだけに単なる一方的な通知、連絡のみでは円滑な活動に支障をきたします。人事労務管理で必要なのは双方向のコミュニケーションであり、『情報、伝達、共有』というコミュニケーションの構成要素において、それぞれが健全なつながりを持つことが重要となります。

一方で、これに不全をきたすと、人事労務トラブルにもつながっていくのではないか、と問題提起させていただきました。

 

2.人事労務トラブルにつながるコミュニケーション不全(25

 

コミュニケーション不全に至る原因として、これまで「思い込み」、「不意打ち」を取り上げました。

 

まず「思い込み」ですが、自分の考えに固執してしまうため矯正のしようがないことから、トラブルに発展しかねないものとなります。なぜ思い込んだ考えを正しいと信じ切ってしまうのかというと、自ら検証する際に都合の良い事実だけで判断してしまうため、つまり先入観からでした。

 

また「思い込み」は「行き違い」を引き起こします。伝える側の情報が不足している、あるいは明確でないために受け手側が自分の解釈で情報を補う必要があり、その「受け手の解釈の部分」と「伝える側が本来伝えたかった部分」とが異なってしまうことが「行き違い」であるとしました。「行き違い」による伝える側、受け手側双方の認識のギャップがトラブルを招くことも大いにあるでしょう。

「行き違い」については、「物事のとらえ方は人によって違うのが当然だ」、「ギャップはあるものだ」という前提に立ち、その上で、誤解を与えないようにするため具体的に情報を伝える。さらにいえば、相手が理解しているか確認する作業ができると良いと考えます。

 

 

 

一方、「不意打ち」はタイミングの問題です。

ここでは、いきなり想定していないような(あまり良い意味ではない)変化を受け入れなければならない事態を、一方向の連絡・通達により告げられた場合を指すこととしました。これにより不快感が生じたり、ストレスとなり得る結果、「不意打ち」を受けた当人には不満が残り、人事労務トラブルの大きな温床・下地となると考えられるわけです。

 

これが起こる原因として、

① 決定自体が急であり、事前準備なく伝えなければならなかった場合

② 決定自体はだいぶ前に行われていたが、何らかの事情により伝えることが遅れていた場合

③ いきなり伝えたとしても特に問題となると思っていなかった場合

というようなものがあり、人事労務トラブルに絡む「不意打ち」は③が多いのではないか、という印象ですが、これも一種の「思い込み」ですね。

 

3.より良い関係性を築くには(34

 

まず聞くこと。

それも「積極的に聞く」「能動的に聞く」ということが重要で、そういう意味において、聞いたものを「言い換える」ことで確認するという「パラフレーズ」の手法を紹介しました。

 

言い換える、ということは聞いた内容をきちんと理解していないとできないことです。そして、言い換えて確認することにより、情報発信者の方も伝えたい内容を再確認することができます。その結果として、情報内容の行き違いをなくすこともできるでしょう。

また、「言い換え」は聴き手が自分を理解してくれている、共感してくれていると認識できる、という効果をもたらすといわれており、組織における人と人との関係性を円滑にでき、働きやすい職場環境づくりに役立つかもしれません。

 

そして、対話すること。

「対話」とは、人によって異なる意味付けを共有することを目的とするものでした。この意味付けが共有される、という点が重要であり、そのことによって人と人との良質な関係性が築かれるのではないか、と思います。前述の「思い込み」、「行き違い」というズレをあえて明確にし、修正する営みの一つが「対話」ということもいえるでしょう。

 

組織が望ましい状態になるにはどのような取り組みを行うべきなのか、どのような心掛けが必要なのか、そして、どのような未来を創り出せるのか、これらを(他人事ではなく)自分事として捉え、協働できることを目指すためには、対話というプロセスが非常に重要となるといえるでしょう。

 

以上がこれまでのまとめでした。今回も最後までお読みいただきありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。

 

執筆者:今泉

今泉 叔徳

今泉 叔徳 特定社会保険労務士

パートナー社員

群馬県桐生市出身。東京都立大学法学部法律学科卒業。
人事労務関係の課題解決の糸口としてコミュニケーションや対話の充実があるのではないかと考え、これにまつわるテーマでコラムを書いてみようと思い立ちました。日頃の業務とはちょっと異なる分野の内容ですので、ぎこちない表現となってしまっていたりすることはご了承ください。
休日には地元の少年サッカーチームでコーチ(ボランティア)をやっていて、こども達との「コミュニケーション」を通じて、リフレッシュを図っています。

その他のコラム

過去のニュース

ニュースリリース

2026.02.01 大野事務所コラム
フリーランス等へのハラスメント対策を考える
2026.01.21 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【定年後再雇用者の賃金】
2026.01.21 大野事務所コラム
新年のご挨拶とともに、精神障害と業務上疾病をめぐる裁決
2026.01.20 これまでの情報配信メール
令和7年賃金引上げ等の実態に関する調査について
2026.01.11 大野事務所コラム
転勤時に36協定の特別条項の発動回数は通算かリセットか?
2026.01.01 大野事務所コラム
負の影響の防止・軽減から情報開示まで―「人と人との関係性」から人事労務を考える㊹
2025.12.23 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【割増賃金の計算方法】
2025.12.21 大野事務所コラム
介護休業給付金を93日分受給したい
2025.12.11 大野事務所コラム
マイナ保険証について
2025.12.08 これまでの情報配信メール
令和7年の年末調整について /育児休業等給付専用のコールセンターの開設について
2025.12.01 大野事務所コラム
社会保険「賞与に係る報酬」を考える
2025.12.11 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【育児短時間勤務制度について】
2025.11.28 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【副業・兼業に関する留意点(後編:健康管理の実施、副業・兼業に関わるその他の制度について)】
2025.11.25 これまでの情報配信メール
協会けんぽ 電子申請サービスについて / 来年度からの被扶養者認定について
2025.11.11 ニュース
2025秋季大野事務所定例セミナーを開催いたしました。
2025.11.21 大野事務所コラム
業務上の疾病
2025.11.11 大野事務所コラム
年度の途中で所定労働時間が変更された場合の時間単位年休の取扱いは?
2025.11.12 これまでの情報配信メール
「過労死等防止対策白書」について / マイナンバーカードの健康保険証利用について
2025.11.01 大野事務所コラム
人権リスクの類型とグリーバンスメカニズム―「人と人との関係性」から人事労務を考える㊸
2025.10.30 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【副業・兼業に関する留意点(中編:労働時間の通算)】
2025.11.21 これまでの情報配信メール
 教育訓練休暇給付金のご案内 、 日・オーストリア社会保障協定が本年12月1日に発効します
2025.10.21 大野事務所コラム
所定6時間以下の労働者を適用除外できない?
2025.10.08 ニュース
協賛イベントのご案内 【11/8開催】JSHRMカンファレンス2025「未来をつくる採用の課題と戦略」
2025.10.11 大野事務所コラム
労働基準法改正の行方
2025.11.21 これまでの情報配信メール
令和7年 年末調整のしかたについて
2025.10.01 大野事務所コラム
年収の壁を考える②
2025.10.01 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【副業・兼業に関する留意点(前編:副業・兼業の基本的な考え方)】
2025.11.21 これまでの情報配信メール
令和6年度の監督指導結果について
2025.09.21 大野事務所コラム
通勤災害から業務災害へ
2025.09.22 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【外国人技能実習生を受け入れる際の社会保険加入について】
2025.09.11 大野事務所コラム
「今後の人材開発政策の在り方に関する研究会報告書」が公表されました
2025.09.22 これまでの情報配信メール
令和7年度地域別最低賃金額の改定状況について
2025.08.30 これまでの情報配信メール
「スポットワーク」の労務管理 /令和8年度より「子ども・子育て支援金」が始まります
2025.09.01 大野事務所コラム
負の影響を特定する―「人と人との関係性」から人事労務を考える㊷
2025.08.21 大野事務所コラム
育児時短就業をしても手取りが殆ど減らない!?
2025.08.20 これまでの情報配信メール
改正育児・介護休業法 柔軟な働き方を実現するための措置への対応について
2025.08.13 これまでの情報配信メール
雇用保険基本手当日額および高年齢雇用継続給付等の支給限度額変更について
2025.08.11 大野事務所コラム
無期転換ルールのおさらい
2025.08.04 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【有期労働者の雇止めと無期転換権】
2025.08.01 大野事務所コラム
学卒者初任給の現状を見る
HOME
事務所の特徴ABOUT US
業務内容BUSINESS
事務所紹介OFFICE
報酬基準PLAN
DOWNLOAD
CONTACT
pagetop