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サテライトオフィス・在宅勤務における最低賃金の考え方

毎年10月は、多くの都道府県で地域別最低賃金が改定される時期です。人事担当の皆様は賃金改定への対応に追われますが、近年は働く場所の多様化により、「どの都道府県の最低賃金を適用すべきか」という論点が以前にも増して重要になっています。

特に、障害者雇用のための地方農園・農場、小規模サテライトオフィス、在宅勤務など、本社とは異なる場所で働く社員が増加していることから、最低賃金の適用誤りが発生しやすい状況となっていますので、今回は、最低賃金法における「事業場」の考え方を踏まえ、実務上の留意点を整理します。

 

●最低賃金は所属する事業場の所在地で決まる

地域別最低賃金は、原則として、労働者が所属する事業場が所在する都道府県の最低賃金が適用されます。「雇用契約を締結した本社の所在地」や「その日に実際に作業した場所」だけで一律に決めるものではありません。

たとえば、地方の農場や都市部のサテライトオフィスが、本社とは独立した事業場として運営されている場合には、その農場やサテライトオフィスの所在地の最低賃金が適用されます。

 

●判断のポイントは独立した事業場かどうか

事業場は、原則として場所ごとに判断します。ただし、本社から離れた場所にあっても、規模が著しく小さく、組織や事務処理の面で独立性がない出張所などは、直近上位の事業場と一体のものとして取り扱われることがあります。

判断に当たっては、現地責任者の権限、業務指示の系統、勤怠・休暇・時間外労働の管理、採用・評価・懲戒などの人事権限、給与計算・経理・予算・契約などの事務処理能力、本社との組織上の関係を総合的に確認します。よって、現地に責任者がいることや、日々の作業を取りまとめていることだけで、直ちに独立した事業場になるわけではありません。

独立した事業場と判断されやすい事情 独立した事業場と判断されやすい事情

・現地責任者に一定の権限がある

・現地で勤怠・休暇等を管理している

・その場所で業務運営が完結している

・独自の事務処理機能がある

・少人数で、上司は本社等に勤務している

・勤怠・休暇等を本社等が管理している

・業務指示や人事評価を本社等が行う

・事務処理を本社等に依存している

 

●農園型障害者雇用で確認したいこと

  • 農園型障害者雇用では、労働者が終日農園で勤務していても、その農園が当然に独立した事業場になるとは限りません。たとえば、本社が東京都、農園が千葉県にあり、農園運営会社の支援員が現地に配置されているケースでは、次の点を確認する必要があります。
  •  ・日常の業務指示を誰が行っているか
  •  ・勤怠・休暇・時間外労働を誰が承認・管理しているか
  •  ・採用、人事評価、懲戒などの権限がどこにあるか
  •  ・給与計算や経理などの事務をどこで行っているか

特に、最低賃金額が本社所在地より低い地域に就業場所を設けている場合には、農園を独立した事業場と判断した根拠を説明できるよう、実際の管理体制と社内資料を整えておくことが重要です。また、最低賃金の問題に限らず、雇用主として必要な業務指示、労務管理、健康管理などを外部の支援事業者に任せきりにしないことも求められます。

 

●在宅勤務では自宅の所在地ではなく所属事業場を確認する

在宅勤務の場合も、労働者が自宅で働いているという理由だけで、その自宅の所在地の最低賃金が適用されるわけではありません。厚生労働省は、テレワークを行う場所にかかわらず、労働者が所属する事業場の所在都道府県の最低賃金が適用されるとの考え方を示しています。

たとえば、東京都の本社に所属する労働者が埼玉県の自宅で完全在宅勤務をしていても、業務指示、勤怠・休暇の管理、人事評価、給与計算などを東京本社が行っているのであれば、原則として東京都最低賃金が適用されます。埼玉県の自宅で勤務していることだけをもって、埼玉県最低賃金に切り替わるものではありません。

もっとも、会社が在宅勤務者をどの事業場に所属させているかが不明確であったり、遠隔地の拠点を独立した事業場として運営していたりする場合には、実態に即した個別判断が必要です。雇用契約書、辞令、組織図、指揮命令系統、勤怠承認の流れなどを確認し、所属事業場を明確にしておくことが大切です。

 

●まとめ

最低賃金を確認する際は、単に「どこで働いているか」を見るのではなく、「どの事業場に所属しているか」「その拠点に組織上・事務上の独立性があるか」を確認する必要があります。

毎年の最低賃金改定は、賃金額だけでなく、サテライトオフィス、地方農園・農場、在宅勤務者の所属関係や雇用管理体制を見直す機会でもあります。判断が難しい場合には、実際の指揮命令・労務管理の状況を整理したうえで、所轄の労働基準監督署や都道府県労働局に確認することが望まれます。

 

執筆者:野田

野田 好伸

野田 好伸 特定社会保険労務士

代表社員

コンサルタントになりたいという漠然とした想いがありましたが、大学で法律を専攻していたこともあり、士業に興味を持ち始めました。学生時代のバイト先からご紹介頂いた縁で社労士事務所に就職し、今に至っています。
現在はアドバイザーとして活動しておりますが、法律や制度解説に留まるのではなく、自身の見解をしっかりと伝えられる相談役であることを心掛け、日々の業務に励んでおります。

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