シリーズ 経営労務とコンプライアンス(最終回)
本コラムは、当事務所の代表社員である大野が、2012年に労働新聞に連載寄稿した記事をベースに同社の了解を得て転載するものです。なお、今回の転載にあたり、必要に応じ適宜原文の加筆・修正を行っております。
●まとめ
「経営労務とコンプライアンス」と題して、会社の持続的成長に関する表題を掲げて寸評を述べてきた。
「組織的経営、経営と人材マネジメント、競争力と人材、労働法制での企業と管理職、会社の成長ステージと人材マネジメント、社会的責任経営、企業不祥事、ガバナンス・リスク管理・内部統制、労務コンプライアンスと経営労務監査の仕組み」などである。どの項目もとても寸評では語れない広くて深い課題である。それを承知で勝手な思いを限られた字数にぶつけてみたが、やはり問題の重さと同時に、自らの知識、洞察の浅薄なることを再認識するばかりで、読者諸氏には申し訳ない思いばかりが残る。
だが、課題の大きさ・困難さにひるむことで何かの解決がもたらされるだろうか。自然はもとより時間は止まることなく、経済社会の変化もとどまることはない。我々は絶えず変転する課題に直面しているのが真実であり、どんなに未熟でも先へ進むしかない。会社も、必ずしも大きくなる必要はないが、成熟しより良いものへ成長して次世代へと引き継いでいかなければならない。
そうでなければ、社会的な存在として法人格を付与されて、権利義務の主体と認められる必要性はない。その会社を支えるのが資本と労働であり、知識社会と言われる今後の社会では、労働がより本質的な競争力の源泉になるといわれる。その通りだと思う。
工業社会的な仕事の仕組みの下では、労働はシステムに仕えたが、知識労働の世界ではITを含むシステムが、働く人々に仕えなければ独創性や競争力は確保できないにちがいない。もちろん現実の世界は多様で混在したシステムだが、この将来への方向性は間違いないだろう。このために何をするか、どんな人材マネジメントがあるか、今後も無い知恵をしぼって頑張っていきたい。
「人は管理(マネジメント)されることなど」望んではいない。マネジメントするのは職場環境であり、人はリードされることは受け入れる。
「管理」と訳されてきた「マネジメント」を再考すると、それはまさに働く人の労働環境を整備(マネジメント)するサービス職務である。適切にマネジメントした職場で、リーダーとして率先してリードすることが経営者、管理職、つまりはマネジャーの仕事である。
人材マネジメントとして語るべき原則は、日本語の適訳が見つからないのが残念だが、「マネジメントとリーダー」の2語に集約されているとの確信と読者への感謝で、この連載を締めくくりたい。
以上
※本シリーズは今年1月より掲載してきましたが、本回で終了となります。
シリーズ
本コラムは、当事務所の代表社員である大野が、2012年に労働新聞に連載寄稿した記事をベースに、同社の了解を得て転載したものです。
ガバナンスと内部統制およびコンプライアンスの意味と位置づけを確認し、会社の成長、価値の向上に貢献する「経営労務」について、15回にわたり本コラムにて連載させていただきました。
なお、今回の転載にあたり、必要に応じ適宜原文の加筆・修正を行っております。
過去のニュース
ニュースリリース
- 2024.04.24 大野事務所コラム
- 懲戒処分における社内リニエンシー制度を考える
- 2024.04.17 大野事務所コラム
- 「場」がもたらすもの
- 2024.04.10 大野事務所コラム
- 取締役の労働者性
- 2024.04.08 ニュース
- 『workforce Biz』に寄稿しました【算定基礎届(定時決定)とその留意点(前編)】
- 2024.04.03 大野事務所コラム
- 兼務出向時の労働時間の集計、36協定の適用と特別条項の発動はどう考える?
- 2024.03.27 大野事務所コラム
- 小さなことからコツコツと―「人と人との関係性」から人事労務を考える㉜
- 2024.03.21 ニュース
- 春季大野事務所定例セミナーを開催しました
- 2024.03.20 大野事務所コラム
- 退職者にも年休を5日取得させる義務があるのか?
- 2024.03.15 ニュース
- 『月刊不動産』に寄稿しました【2024年4月以降、採用募集時や労働契約締結・更新時に明示すべき労働条件が追加されます!】
- 2024.03.21 これまでの情報配信メール
- 協会けんぽの健康保険料率および介護保険料率、雇用保険料率、労災保険率、マイナンバーカードと保険証の一体化について
- 2024.03.26 これまでの情報配信メール
- 「ビジネスと人権」早わかりガイド、カスタマーハラスメント防止対策企業事例について
- 2024.03.13 大野事務所コラム
- 雇用保険法の改正動向
- 2024.03.07 ニュース
- 『workforce Biz』に寄稿しました【専門業務型裁量労働制導入の留意点(2024年4月法改正)】
- 2024.03.06 大野事務所コラム
- 有期雇用者に対する更新上限の設定と60歳定年を考える
- 2024.02.28 これまでの情報配信メール
- 建設業、トラック等運転者、医師の時間外労働の上限規制適用・令和6年度の年金額改定について
- 2024.02.28 大野事務所コラム
- バトンタッチ
- 2024.02.21 大野事務所コラム
- 被扶養者の認定は審査請求の対象!?
- 2024.02.16 ニュース
- 『月刊不動産』に寄稿しました【派遣労働者の受入れ期間の制限〈後編〉】
- 2024.02.14 大野事務所コラム
- フレックスタイム制の適用時に一部休業が生じた場合の休業手当の考え方は?
- 2024.02.16 これまでの情報配信メール
- 令和6年能登半島地震に伴う労働基準法や労働契約法等に関するQ&A 等
- 2024.02.09 ニュース
- 『workforce Biz』に寄稿しました【固定残業代の計算方法と運用上の留意点】
- 2024.02.07 大野事務所コラム
- ラーメンを食べるには注文しなければならない―「人と人との関係性」から人事労務を考える㉛
- 2024.01.31 大野事務所コラム
- 歩合給の割増賃金を固定残業代方式にすることは可能か?
- 2024.01.24 大野事務所コラム
- 育児・介護休業法の改正動向
- 2024.01.19 ニュース
- 『月刊不動産』に寄稿しました【派遣労働者の受入れ期間の制限〈前編〉】
- 2024.01.17 大野事務所コラム
- 労働保険の対象となる賃金を考える
- 2024.01.10 大野事務所コラム
- なぜ学ぶのか?
- 2023.12.21 ニュース
- 年末年始休業のお知らせ
- 2023.12.20 大野事務所コラム
- 審査請求制度の概説③
- 2023.12.15 ニュース
- 『月刊不動産』に寄稿しました【テレワークと事業場外みなし労働時間制】
- 2024.01.17 これまでの情報配信メール
- 令和6年4月からの労働条件明示事項の改正 改正に応じた募集時等に明示すべき事項の追加について
- 2023.12.13 これまでの情報配信メール
- 裁量労働制の省令・告示の改正、人手不足に対する企業の動向調査について
- 2023.12.13 大野事務所コラム
- 在宅勤務中にPCが故障した場合等の勤怠をどう考える?在宅勤務ならば復職可とする診断書が提出された場合の対応は?
- 2023.12.12 ニュース
- 『workforce Biz』に寄稿しました【研修、自己学習の時間、接待の飲食、ゴルフ、忘年会や歓送迎会は労働時間となるのか?】
- 2023.12.06 大野事務所コラム
- そもそも行動とは??―「人と人との関係性」から人事労務を考える㉚
- 2023.11.29 大野事務所コラム
- 事業場外労働の協定は締結しない方がよい?
- 2023.11.28 これまでの情報配信メール
- 多様な人材が活躍できる職場環境づくりに向けて、副業者の就業実態に関する調査について
- 2023.11.22 大野事務所コラム
- 公的年金制度の改正と確定拠出年金
- 2023.11.17 ニュース
- 『月刊不動産』に寄稿しました【試用期間中の解雇・本採用拒否は容易にできるのか】