無期転換ルールの特例(第二種)の認定申請について
こんにちは、大野事務所の土岐です。
前回は無期転換ルールの特例(第二種)について、「当初から有期雇用契約の労働者にも適用されるのか?」について述べました。今回は、「無期転換ルールの特例(第二種)の認定申請(以下、認定申請)」について採り上げます(無期転換ルールの特例の詳細についてはこちらをご参照ください)。この認定申請自体はそれほど難しいものではなく、また、既に認定を受けているケースも多いのではと思われますが、最近、何度かお問い合わせをいただきましたので、紹介したいと思います。
さて、認定申請にあたって一般的に必要となる書類は次のとおりです。
(1)第二種計画認定・変更申請書
(2)高年齢者雇用状況報告書の写し
(1)の記載内容はシンプルで、以下の3点です。
・1.申請事業主
・2.第二種特定有期雇用労働者の特例に応じた雇用管理に関する措置の内容
・3その他(高齢者雇用安定法に基づく雇用確保措置の状況)
「2.」に関してはいくつかの選択肢から1つ以上を選択する必要があるのですが、これまでに私が認定申請に関わった中では全ての会社様が「高齢者雇用推進者の選任」を選択しています。なお、高齢者雇用推進者とは、高齢者雇用安定法の定めにより、作業施設の改善その他の諸条件の整備を図るための業務を担当する者として、知識および経験を有している者の中から選任するように努めなければならない、とされているものです。
そして、「3.」の高齢者雇用安定法に基づく雇用確保措置の状況に関しては、毎年7/15までにハローワークへ提出が必要となる(2)に記載の「定年制の状況」および「継続雇用制度の状況」と(ほぼ)同様の記載内容となっていますので、(2)と同じように記載します。
ところで、(1)の申請書に添付書類として就業規則等といった記載があるのですが、厚労省の「有期契約労働者の無期転換ポータルサイト」に掲載の資料(認定の流れ・記載例(「高年齢者雇用推進者の選任」))では、(1)–「2.」で「高年齢者雇用推進者の選任」を選択した場合には、(2)のみで足りる旨の記載があります。特措法施行直後に私が認定申請の対応をした際は、いずれの選択であっても就業規則等を求められたように認識していましたので、後になって提出を求められることはないのか念のため労働局へ電話確認しましたところ、「高年齢者雇用推進者の選任」のみの場合には(1)および(2)の記載内容に不整合がない限り、やはり添付不要とのことでした(ただ、労働局によって異なる場合もあるとのことでしたが)。
また、この認定申請は一事業主につき一つの認定となります。申請先は、本社(実質的に本社機能を有する事業所所在地をいいます)管轄の都道府県労働局のみとなりますので、事業場ごとの複数の申請は不要です。
ちなみに、「一事業主につき一つの認定」となる点に関連して、当該認定に関しては一定の場合に「変更申請」を行うこととされているのですが、「3.」に関して労働局へ確認したところ、変更申請が必要となるケースは次の2つのみとのことでした。
・既に正社員に関して第二種特例認定を受けている場合で、正社員の定年年齢を、例えば60歳⇒65歳以上に引き上げるケース
⇒(1)–「3.」に関し、「65歳以上への定年の引き上げ」にチェックを追加し、変更申請する
・経過措置に基づく労使協定により継続雇用の対象者を限定する基準を利用していたが、これを廃止し、希望者全員を対象とするケース
⇒(1)–「3.」に関し、「希望者全員を対象」にチェックを追加し、変更申請する
従いまして、例えば、正社員の定年年齢は60歳、継続雇用の上限年齢は65歳までとして既に第二種特例認定を受けている場合で、有期雇用契約から無期雇用契約に転換した労働者に対して、この労働者が適用される正社員とは別の就業規則に新たに60歳定年とし、65歳まで継続雇用するというルールを定めた場合には、変更申請は特段不要ということになります。
最後に、第二種認定を受けた後の対応として、「定年後引き続いて雇用されている期間は無期転換申込権が発生しない期間であること」を労働条件通知書等に明記する必要がある点にご注意ください(労基法第15条、特定有期雇用労働者に係る労働基準法施行規則第五条の特例を定める省令)。
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<労働条件通知書等の記載例>
契約期間 : 期間の定め 有 ( 20XX年4月1日~ 20XX年3月31日 )
なお、甲(会社)は有期特別措置法に基づく特例適用の認定を受けているため、当該期間において乙(労働者)の無期転換申込権は発生しない。
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今回は実務的な内容となりましたが、2021年4月1日施行の改正高齢者雇用安定法への対応に関連して、今後無期転換ルール(第二種)の特例の適用等についてあらためて疑問に思われることがあるかもしれません。私自身の備忘録のような内容ではありますが、ご参考になりましたら幸いです。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
執筆者:土岐
土岐 紀文 特定社会保険労務士
第3事業部 部長
23歳のときに地元千葉の社労士事務所にて社労士業務の基礎を学び、その後大野事務所に入所しまして10数年になります。
現在はアドバイザリー業務を軸に、手続きおよび給与計算業務にも従事しています。お客様のご相談には法令等の解釈を踏まえたうえで、お客様それぞれに合った適切な運用ができるようなアドバイスを常に心がけております。
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