TOP大野事務所コラム無期転換ルールの特例(第二種)は当初から有期雇用契約の労働者にも適用される?

無期転換ルールの特例(第二種)は当初から有期雇用契約の労働者にも適用される?

こんにちは、大野事務所の土岐です。

 

高齢者雇用安定法の改正施行に伴い、202141日より70歳までの就業機会の確保措置が努力義務とされています(改正法の概要はこちらをご参照ください)。各企業の皆様におかれましては既に対応済み、あるいは対応に向けた検討を進めていることと思われます。

(ちなみに、人事労務専門情報誌「労政時報」(4012号)に掲載されている「改正法への対応webアンケート(集計対象344社)」によれば、“就業確保措置・再就職援助措置は義務化のタイミングでどの措置を講じるか決定する予定の企業が34割で最多とのことです。)

 

この改正に関連してなのか、最近、定年後に有期雇用契約で再雇用となった場合の無期転換ルールの特例の適用可否についてのご質問をいくつかいただきましたので、本日はこちらを取り上げます。ご質問の例は次のとおりです。

 

「当社の就業規則では、正社員および契約社員等(無期・有期のいずれも含む)に関して60歳定年の定めがあり、定年後は原則として65歳まで1年毎の有期雇用契約により再雇用となる。現在、定年後の再雇用の上限年齢について70歳までの引き上げを検討しているところ、契約社員等の無期転換ルールの特例の適用はどうなるのかを確認したい(正社員は当該再雇用期間については無期転換申込権が発生しないことは理解している)。なお、当社は既に無期転換ルールの特例認定を受けている。」というものです。

 

さて、「無期転換ルールの特例」について確認しますと、「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法(以下、特措法)」に基づき、都道府県労働局長の認定を受けた場合、①一定範囲の高度専門職および②定年後に引き続き再雇用される場合の有期雇用契約の期間に関しては、無期転換権申込権が発生しない、というものです(※特例①について無期転換権が発生しない期間の上限は10年)。

 

ただ、この無期転換ルールの特例②は、「無期雇用契約(有期雇用契約であった者が無期転換申込権を行使したことにより無期雇用契約となった場合も含む)であった者が、定年の定めによって退職し、有期雇用契約として再雇用された場合」にのみ適用される点に注意が必要です。これは、改正前の高齢者雇用安定法により65歳までの雇用確保措置が義務付けられた一方で、定年後の有期雇用契約としての再雇用に伴って無期転換申込権が発生するのは無期転換ルールの趣旨になじまないとしたことから、特例が定められた経緯があります。

 

以上を踏まえて、定年後の再雇用(1年毎の有期雇用契約)の上限年齢を70歳までとした場合の具体例でみてみましょう。

 

153歳で有期雇用契約社員として入社した例

 

この場合には58歳の時点で無期転換申込権が発生し、すぐに権利行使すれば59歳から無期雇用契約に転換します。ただし、1年後には60歳の定年に達し、無期雇用契約が終了することになります。その後の70歳までの有期雇用契約社員としての継続雇用については、無期転換ルールの特例②が適用され、無期転換申込権は発生しないことになります(図1参照)。

 

 

なお、58歳の時点で発生する無期転換申込権をすぐに行使せず、60歳以降に行使する可能性も考えられます。この場合に備えて、雇用終了のゴールをはっきりと設定しておく必要があるといえるでしょう。例えば「65歳未満で無期転換した者は65歳を定年とし、その後一定の基準を満たす者は70歳まで有期雇用契約社員として再雇用する。65歳以上70歳未満で無期転換した者は70歳を定年とする。」といった規定が考えられます。

 

258歳で有期雇用契約社員として入社した例

 

この場合には有期雇用契約社員として60歳の定年に達しており、無期雇用契約の状態で定年に達していませんので、無期転換ルールの特例②の適用はない、ということになります。こちらに関しては「当然そうなるであろう」と考える方も多くいらっしゃると思いますが、私自身は顧問先様からご質問をいただいた際にふと疑問に感じ、調べを進めたうえで話の整理ができた次第ですので、ここでは確認の意味を込めて例示しました。

 

さて、そうなりますと継続雇用期間が5年を超える場合には無期転換申込権が発生することになりますので、「(1)のなお書きの例」と同様に無期転換申込権を行使された場合に備えて、有期雇用契約の方とは別の定年の定め(例えば65歳等)により、雇用終了のゴールをはっきりと設定しておく必要があるといえるでしょう。

 

なお、例外的な運用を推奨する趣旨ではありませんが、仮に65歳未満で無期転換申込権を行使し、この場合の定年が65歳、さらにその後の有期雇用契約による再雇用の上限年齢が70歳と定められている場合で70歳を超えて雇用を継続したケースでは、一度は無期転換申込権の行使により無期雇用契約となり定年に達していますので、無期転換ルールの特例②が適用されることになります(図2参照)。

 

 

いかがでしたでしょうか。

無期転換ルールは有期雇用契約の方々の雇用の安定を図るためのルールとして導入された制度なのですが、会社が無期転換ルールの特例②の認定を受けることにより、定年直前に無期転換申込権を行使した場合には、無期雇用契約期間が僅かしかなく、実際には有期雇用契約が反復継続することと変わらない結論になってしまいます(すぐに定年を迎えてしまうことで無期雇用契約期間が僅かであるという点は59歳で入社した正社員の場合も同様といえますので、制度の仕組み上、仕方がないとも考えられます)。労働者の視点からは無期転換申込権行使のタイミングは重要なポイントといえそうですね。

 

なお、「そもそも有期雇用契約社員に対する60歳定年の定め自体がいかがなものか」という議論があるかと思いますが、その議論は非常に奥深い内容となりますのでここでは割愛しまして、本コラム執筆時点において私が特措法の条文・通達・指針および行政等へ確認した限りの現行制度上の整理に焦点を絞った内容とさせていただきました。

 

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

 

執筆者:土岐

土岐 紀文

土岐 紀文 特定社会保険労務士

幕張第2事業部 グループリーダー

明治学院大学経済学部卒業。
一般企業勤務を経て、千葉県内の社会保険労務士事務所で労働社会保険手続、給与計算、労働保険事務組合業務に従事。
約2年間の勤務の後、2009年大野事務所へ入所。
正確、迅速な対応を心掛け、日々業務に取り組む。

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