男性の育児への関わり
【2026年3月27日更新】
こんにちは。大野事務所の深田です。
「かたや10%、かたや59.2%」これは、ある調査資料における数値の対比です。大きな差がありますが、「子どもがいる夫婦の夫の休日の家事・育児時間別にみたこの13年間の第2子以降の出生の状況」における数値です(以下図表。資料出所:「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)レポート2019」[内閣府])。夫の休日の家事・育児時間が「なし」の場合には第2子以降の出生が「10%」、「2時間以上4時間未満」の場合には第2子以降の出生が「59.2%」、4時間以上ともなると70%以上となっています。

この調査からは、第1子の育児における夫の家事・育児への関わり度合いと第2子以降の出生有無に一定の相関関係を読み取ることができます。
また、内閣府経済社会総合研究所の研究試論「男性の育児休業取得が働き方、家事・育児参画、夫婦関係等に与える影響」(2017年3月)では、「家事・育児参画では、育休取得者の方が第1子出生前後で、平日の家事・育児参画の増加幅が大きい傾向がみられた。きっかけとしては、「自分で希望すること」や「配偶者が希望すること」、タイミングとしては、「出産直後」や「妻の体調に合わせて」取得をすること、そして、「休業中に長い時間家事・育児を行うこと」、「多くの種類の家事・育児を行うこと」の重要性も示された。」とされています。また、「男性の平日の家事・育児参画の増加と働き方の見直しは相互に影響していること、平日の家事・育児時間の増加が夫婦関係満足度、第2子以降の追加出生意欲に影響していることもわかった。育休を取得するかどうかはあくまでも個人の判断ではあるが、今後、男性の育休取得の促進について、育休取得後の家事・育児参画の増加を見越して男性のモチベーションの向上を図りつつ、その効果や企業への影響も含めて広く啓発活動や企業への働きかけを行うとともに、効果的な取得の仕方、休業中の家事・育児への関わり方についてもハンドブックを作成するなど、よりわかりすく周知を行うことが重要である。」といった指摘もされています。
少子高齢化が急速に進む中、男性の育休取得率向上はかねてからの課題であり、政府が昨年5月に閣議決定した少子化社会対策大綱では「2025年に30%」との数値目標を掲げていました。振り返ってみれば、「イクメン」という言葉が新語・流行語大賞にトップテン入りしたのが2010年のこと。しかし、「令和元年度 雇用均等基本調査」(厚生労働省)によれば、男性の育休取得率は7.48%(前年度は6.16%)であり、現状のペースでは目標達成には程遠いといえます。
2021年6月3日に国会で成立した育児・介護休業法の改正法案では、男性の育休取得を促進していくべく新しい休業の仕組み(出生時育児休業)や、子どもが生まれる社員(男女問わず)に育休等の制度を個別に説明し、取得意向の確認を義務付ける措置の創設(いわばプッシュ型のアプローチ)などが盛り込まれています。
現在の育児・介護休業法の前身となる育児休業法が施行されたのが1992年、約30年前のことであり、その1992年度の国民生活白書(内閣府)において「少子化」という言葉が使われ始めたようです。その後、育児・介護休業法は改正を繰り返してきたわけですが、今回の改正内容は遅々として進まなかった男性の育休取得が大きく前進する転換点ともなり得るものといえるでしょう。とはいえ、こうした法改正などを契機として個々人の意識自体が変わっていかなければ、形ばかりの育休だけが増えるということにもなりかねません(2023年4月1日からは常用雇用労働者数1,001人以上の事業主に育休取得率の公表が義務付けられます)。6月7日付の日本経済新聞朝刊では、「日本経済新聞社が男女千人に行った調査では、法改正で男性が育休を取得しやすくなると思うか、という問いに半数超が「思わない」と回答。「育休の取得に否定的な上司・同僚の意識改革」や「取得がキャリアに不利にならないという安心感」を求める声があがった。」と報じています。ハラスメント対策などではトップのメッセージが重要であるということがよく言われますが、育児に関してもより踏み込んだ対応が必要となってくるのではないでしょうか。
執筆者:深田
深田 俊彦 特定社会保険労務士
労務相談室長 管理事業部長/パートナー社員
社会人1年目のときの上司が元労働基準監督官だったことが、労働分野へ関心を寄せるきっかけとなりました。
日頃からスピード感を持って分かりやすくまとめ、分かりやすく伝えることを心掛けています。また、母の「人間は物事が調子良く進んでいるときに感謝の気持ちを忘れがちである」という言葉を、日常生活でも仕事の上でも大切にしています。
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