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過半数代表者の選出

こんにちは。大野事務所の深田です。

 

今回のコラムが掲載される10月11日(日)の翌日10月12日(月)は、「スポーツの日」です。元々は、東京オリンピック(1964年(昭和39年))の開会式が行われた10月10日を「体育の日」としていたものが、いわゆるハッピーマンデー制度の施行によって第2月曜日へ移動され、名称も改められました。亡くなった私の母が「10月10日に意味があるのに」としきりに言っていたのを今でも思い出しますが、これがスタートしたのは2000年ということで、かれこれ26年も経ったことになります。

 

さて、今回のコラムでは、労働基準法等に基づいて労使協定を締結する際などに選任を要する「過半数代表者」について取り上げます。

労基法等に基づく労使協定を締結する際、事業場の過半数で組織する労働組合がない場合には、当該事業場に所属する労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)が労働者側の締結当事者となります。

 

労使協定を締結した場合には(労使協定によっては労働基準監督署への届け出も必要)、労使合意を尊重することで法律上の原則に対する例外扱いを認めるという重大な効果をもたらしますので、労使協定そのものが効力を有するためには、労働者側の締結当事者が事業場に所属する労働者の過半数の信任を得て適切に選出されていることが大前提となるのは言うまでもありません。

 

適切な選出ということでは、過半数代表者の要件として、労働基準法施行規則第6条の2第1項において以下のとおり示されていますが、同規定は法律における明確な委任がない中で(法律に根拠を持たずに)、法律の施行・実施のために必要な細則として規定された実施命令という性質のものです。

(1)法第41条第2号に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと。

(2)法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等(*)の方法による手続により選出された者であって、使用者の意向に基づき選出されたものでないこと。

(*)「投票、挙手等」の「等」には、労働者の話し合い、持ち回り決議等労働者の過半数が当該者の選任を支持していることが明確になる民主的な手続が該当する。(平成11年3月31日 基発169号)

 

選挙を行うなど民主的な選出手続きがなされていれば適正性を担保しやすくなりますが、一昔前は不適切な選出事例が今以上に散見されたところでありまして、弊所が2013年に刊行した『適正 労働時間管理』(労務行政)では、「過半数代表者選出の不適切な事例」として、以下のような図表を掲載しました。

・36協定の締結や就業規則の意見聴取など、過半数代表者の選出が必要となる都度選出が行われておらず、同一の従業員がなんとなく過半数代表者になり続けている。

・事業場の過半数の信任を得るプロセスにおいて、「意見のある人はメールでご連絡ください」「特に意思表示がなければ信任したものとみなします」などとして、信任するのか不信任なのかの明確な確認を行っていない。

・過半数代表者を会社側が指名している。

・誰が過半数代表者なのかを知らない従業員が多く存在する。

 

このあたりの考え方の根本は今も昔も変わるものではありませんが、運用の適正性に対する行政側の視線は、近年一段と厳しくなってきたといえます。そうした問題意識を背景として、「労働基準関係法制研究会報告書」(2025年1月8日公表)でも、「「過半数代表者」の適正選出と基盤強化について」という項目を設け、以下のように述べた上で検討課題が細かく論じられ、「本研究会としては、過半数代表者の適正選出を確保し、基盤の強化を行うに当たり、まずは労働基準法において、「過半数代表」、「過半数労働組合」、「過半数代表者」の法律上の位置付け、役割、過半数代表者に対する使用者からの関与や支援等を明確に定める規定を設ける法改正を行うことが必要と考える。」と結論づけています。

過半数代表者については様々な課題が指摘されている。これらの課題を大別すると、

① 過半数代表者の選出が、事業場において適正に行われていない場合がある

② 過半数代表者の役割を果たすことは労働者にとって負担であり、また、全ての労働者が労使コミュニケーションについての知識・経験を持つわけではないことから、積極的な立候補が得られないことや、立候補者がいて選出されたとしても過半数代表の役割を適切に果たすことが難しい場合が多いというものである。

 

直近でも、専門業務型裁量労働制の労使協定を締結するための過半数代表者の選挙において、不投票を有効投票の結果に委ねたものとみなすとする過半数代表者選出規程に基づく取り扱いを無効(その結果として労使協定も無効)とした裁判例(学校法人松山大学事件 高松高裁令和8年7月7日判決 ※被告側が上告しています)があるなど、過半数代表者の選出はますます目の離せない重要なテーマになってくるといえます。

 

なお、行方が気になる労働基準法の改正に向けた動きですが、昨年末でストップしていた労働政策審議会労働条件分科会での議論が先月16日に再開されました。同日の審議会における資料では、「労働条件分科会における今後の議論の進め方(案)」として以下のとおり示されています。改正法案が来年の通常国会へ提出となる流れが予想されますので、今後の動向を注視してまいりましょう。

○ 今後の本分科会での議論に当たっては、本年7月21日に閣議決定された日本成長戦略や骨太の方針2026や、昨年1月からの本分科会での議論を踏まえ、以下の論点を中心に議論を行うこととしてはどうか。

・勤務間インターバル制度

・連続勤務規制

・「つながらない権利」

・裁量労働制

・変形労働時間制

・副業・兼業

・テレワーク・フレックスタイム制

・その他、昨年1月から本分科会で議論してきた論点

・過半数代表者等

・法定休日

・年次有給休暇 等

○ 今後、月2~3回程度の頻度で議論を行うこととしてはどうか。

 

執筆者:深田

深田 俊彦

深田 俊彦 特定社会保険労務士

労務相談室長 管理事業部長/パートナー社員

社会人1年目のときの上司が元労働基準監督官だったことが、労働分野へ関心を寄せるきっかけとなりました。
日頃からスピード感を持って分かりやすくまとめ、分かりやすく伝えることを心掛けています。また、母の「人間は物事が調子良く進んでいるときに感謝の気持ちを忘れがちである」という言葉を、日常生活でも仕事の上でも大切にしています。

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