TOP大野事務所コラム精神障害の労災補償状況

精神障害の労災補償状況

新年 明けましておめでとうございます。令和5年第1回目を担当しますパートナー社員の野田です。本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

 

未然予防を目的としたストレスチェック制度が導入されてから早いもので7年が経過しますが、メンタル不調者は減少するどころか年々増加している状況です。昨今は職場でメンタル不調者が発生すると業務関連性が気になりますので、今回は精神障害における労災申請状況について取り上げます。

 

毎年6月頃に「過労死等の労災補償状況」や「脳・心臓疾患の労災補償状況」と合わせて「精神障害の労災補償状況」について、厚生労働省より公表されており以下のような状況です。

 

令和3年の精神障害における労災請求件数は2,346件となっており、前年度比で295件の増加、そのうち支給決定された件数は629件で、前年度比21件の増加となっています。労災認定率は32.2%となりますが、過去(平成29年度32.8%、平成30年度31.8%、令和元年32.1%、令和231.9%)と比較しても大差ない状況です。

 

※( )内は女性の件数で、内数となります。

 

また、年齢別請求件数は、40代で597件、30代で490件、20代で448件、支給決定件数は40代で174件、30代で169件、20代で132件となっており、40代の請求・支給決定件数が最多となります。

 

出来事別の支給決定件数では、「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」125件で最多となっており、続いて「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」71件「悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」66件「同僚等から、暴行又は(ひどい)いじめ・嫌がらせを受けた」61件「セクシュアルハラスメントを受けた」60件となっています。

 

 

行政リーフレット「精神障害の労災認定」でも紹介されているように、職場でのハラスメントやいじめ・嫌がらせについては、原則として「心理的負荷の強度」が3段階評価の一番上である「強」と判断され労災認定の方向に進みますので、ハラスメント等の訴えが起こった場合には業務との関連について慎重に確認します。

 

「心理的負荷の強度」が「中」や「弱」と評価される出来事(上司・同僚・部下とのトラブル等)であっても、同時期に長時間労働等が発生しており複数の出来事が関連して生じた場合には、その全体を一つの出来事と評価します。また、関連しない出来事が複数生じた場合でも、出来事の数、それぞれの内容、時間的な近接程度などを総合考慮のうえ全体評価をします。つまり、複数事案を合わせて「中」+「中」または「弱」⇒「強」と判断される場合がありますので、原因・事案を確認する際にはご留意ください。

 

前述のとおり、精神障害の労災認定率が直近5年間では30%強で推移しています。この数字は高いとも低いとも言えませんが、申請件数が増加していることから、必然的に支給決定件数も増加しています。依然として、長時間労働や過重労働(仕事の量・質)を原因とした申請件数も高い状況にありますが、近年はハラスメントや対人関係を原因とした申請件数が増えていますので、企業としての継続的なハラスメント教育・対策が必要不可欠といえます。

 

000955417.pdf (mhlw.go.jp)

 

以上となります。

 

執筆者:野田

野田 好伸

野田 好伸 特定社会保険労務士

代表社員

コンサルタントになりたいという漠然とした想いがありましたが、大学で法律を専攻していたこともあり、士業に興味を持ち始めました。学生時代のバイト先からご紹介頂いた縁で社労士事務所に就職し、今に至っています。
現在はアドバイザーとして活動しておりますが、法律や制度解説に留まるのではなく、自身の見解をしっかりと伝えられる相談役であることを心掛け、日々の業務に励んでおります。

その他のコラム

過去のニュース

ニュースリリース

2024.05.01 大野事務所コラム
改正育児・介護休業法への対応
2024.04.30 これまでの情報配信メール
令和4年労働基準監督年報等、特別休暇制度導入事例集について
2024.04.30 これまでの情報配信メール
所得税、個人住民税の定額減税について
2024.04.30 これまでの情報配信メール
現物給与価額(食事)の改正、障害者の法定雇用率引上等について
2024.04.24 大野事務所コラム
懲戒処分における社内リニエンシー制度を考える
2024.04.17 大野事務所コラム
「場」がもたらすもの
2024.04.16 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【年5日の年次有給休暇の取得が義務付けられています】【2024年4月から建設業に適用される「時間外労働の上限規制」とは】
2024.04.10 大野事務所コラム
取締役の労働者性
2024.04.08 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【算定基礎届(定時決定)とその留意点(前編)】
2024.04.03 大野事務所コラム
兼務出向時の労働時間の集計、36協定の適用と特別条項の発動はどう考える?
2024.03.27 大野事務所コラム
小さなことからコツコツと―「人と人との関係性」から人事労務を考える㉜
2024.03.21 ニュース
春季大野事務所定例セミナーを開催しました
2024.03.20 大野事務所コラム
退職者にも年休を5日取得させる義務があるのか?
2024.03.15 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【2024年4月以降、採用募集時や労働契約締結・更新時に明示すべき労働条件が追加されます!】
2024.03.21 これまでの情報配信メール
協会けんぽの健康保険料率および介護保険料率、雇用保険料率、労災保険率、マイナンバーカードと保険証の一体化について
2024.03.26 これまでの情報配信メール
「ビジネスと人権」早わかりガイド、カスタマーハラスメント防止対策企業事例について
2024.03.13 大野事務所コラム
雇用保険法の改正動向
2024.03.07 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【専門業務型裁量労働制導入の留意点(2024年4月法改正)】
2024.03.06 大野事務所コラム
有期雇用者に対する更新上限の設定と60歳定年を考える
2024.02.28 これまでの情報配信メール
建設業、トラック等運転者、医師の時間外労働の上限規制適用・令和6年度の年金額改定について
2024.02.28 大野事務所コラム
バトンタッチ
2024.02.21 大野事務所コラム
被扶養者の認定は審査請求の対象!?
2024.02.16 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【派遣労働者の受入れ期間の制限〈後編〉】
2024.02.14 大野事務所コラム
フレックスタイム制の適用時に一部休業が生じた場合の休業手当の考え方は?
2024.02.16 これまでの情報配信メール
令和6年能登半島地震に伴う労働基準法や労働契約法等に関するQ&A 等
2024.02.09 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【固定残業代の計算方法と運用上の留意点】
2024.02.07 大野事務所コラム
ラーメンを食べるには注文しなければならない―「人と人との関係性」から人事労務を考える㉛
2024.01.31 大野事務所コラム
歩合給の割増賃金を固定残業代方式にすることは可能か?
2024.01.24 大野事務所コラム
育児・介護休業法の改正動向
2024.01.19 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【派遣労働者の受入れ期間の制限〈前編〉】
2024.01.17 大野事務所コラム
労働保険の対象となる賃金を考える
2024.01.10 大野事務所コラム
なぜ学ぶのか?
2023.12.21 ニュース
年末年始休業のお知らせ
2023.12.20 大野事務所コラム
審査請求制度の概説③
2023.12.15 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【テレワークと事業場外みなし労働時間制】
2024.01.17 これまでの情報配信メール
令和6年4月からの労働条件明示事項の改正  改正に応じた募集時等に明示すべき事項の追加について
2023.12.13 これまでの情報配信メール
裁量労働制の省令・告示の改正、人手不足に対する企業の動向調査について
2023.12.13 大野事務所コラム
在宅勤務中にPCが故障した場合等の勤怠をどう考える?在宅勤務ならば復職可とする診断書が提出された場合の対応は?
2023.12.12 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【研修、自己学習の時間、接待の飲食、ゴルフ、忘年会や歓送迎会は労働時間となるのか?】
2023.12.06 大野事務所コラム
そもそも行動とは??―「人と人との関係性」から人事労務を考える㉚
HOME
事務所の特徴ABOUT US
業務内容BUSINESS
事務所紹介OFFICE
報酬基準PLAN
DOWNLOAD
CONTACT
pagetop