ニュース&コラムニュース&コラム

TOP大野事務所コラム有期雇用契約の運用について

有期雇用契約の運用について

【2026年3月27日更新】

 

こんにちは。大野事務所の深田です。

 

期間の定めのある雇用契約(有期雇用契約)を更新しないこと(いわゆる雇止め)が問題ないかどうかというご相談は少なからずお受けしますが、「一方的な雇止めは難しい」と判断せざるを得ない事案が相当数あるというのが実感です。

 

有期雇用契約というのは、契約期間の終期が到来すれば契約解消となる(事情によっては更新する場合がある)というのが本来の形であるわけですが、契約更新が繰り返された結果として実質的に無期雇用契約と同視し得る、あるいは、契約更新に対する労働者の合理的な期待が生じていると判断され得る状況の結果、一方的な雇止めはトラブルに繋がりかねないという次第です(関連する法令は労働契約法第19条です)。

 

さて、有期雇用契約に関連する事項としては、いわゆる無期転換ルールが労働契約法に基づき20134月から施行されていますが、同ルールが始まる前から通算契約期間の上限を設定している例は少なからず見受けられました。

無期転換ルールがスタートした当時は、この上限設定の有効性に何らか影響を及ぼすのか気になったところではありましたが、労使合意の上での契約であって社内ルールに則って厳格に運用している限りにおいては、さほど問題とはなりにくい状況にあるようには感じております。

 

この点、5年を超えて更新しない条件で労働契約を締結してその後雇止めされた労働者が、無期転換権の回避が目的で雇止めは無効と訴えた事案があります(横浜地裁川崎支判令3.3.30)。判決では、更新上限は直ちに違法にならないとしたうえで、労使協議で社内ルールを定めて契約期間は5年を上限としており、法の潜脱には当たらず、運用の実態も踏まえて契約更新の期待は合理的といえず、雇止めは有効とされました。

 

ただ、これはあくまで一つの事案です。通算契約期間に上限を設ける場合には、そもそもそのようなルールとしている趣旨・目的が明確となっている必要があると考えられます。また、雇入れ時の十分な説明、例外のない厳格なルール運用、また契約更新は更新の判断基準に則して適切に手続きを行うなどの基本的な対応が重要だといえるでしょう。

 

2022年1227日には、労働政策審議会労働条件分科会による「今後の労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(報告)」が公表されました。同報告では、無期転換ルールに関連して以下のような言及がされていますので、今後の動向を注視してまいりましょう。

・無期転換申込権が発生する契約更新時に、無期転換申込機会と無期転換後の労働条件について、労働基準法の労働条件明示の明示事項に追加することが適当である。

・紛争の未然防止や解決促進のため、更新上限の有無及びその内容について、労働基準法の労働条件明示事項に追加するとともに、労働基準法第14条に基づく告示において、最初の契約締結より後に、更新上限を新たに設ける場合又は更新上限を短縮する場合には、その理由を労働者に事前説明するものとすることが適当である。

 

執筆者:深田

深田 俊彦

深田 俊彦 特定社会保険労務士

労務相談室長 管理事業部長/パートナー社員

社会人1年目のときの上司が元労働基準監督官だったことが、労働分野へ関心を寄せるきっかけとなりました。
日頃からスピード感を持って分かりやすくまとめ、分かりやすく伝えることを心掛けています。また、母の「人間は物事が調子良く進んでいるときに感謝の気持ちを忘れがちである」という言葉を、日常生活でも仕事の上でも大切にしています。

その他のコラム

過去のニュース

ニュースリリース

2026.06.09 ニュース
当事務所スタッフが労務行政主催セミナーに登壇いたします
2026.06.01 大野事務所コラム
懲戒処分における併科と二重処罰を考える
2026.05.29 これまでの情報配信メール
社会保険適用拡大特設サイトリニューアル・保険料調整制度のご案内(令和8年10月施行)
2026.05.28 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【1か月単位の変形労働時間制の基本と運用上の留意点(後編:運用上の留意点)】
2026.05.21 大野事務所コラム
労災裁決例から読む~出来事は単体で評価されていない~
2026.05.15 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【私傷病休職の発令】
2026.05.14 これまでの情報配信メール
労働保険年度更新に係るお知らせ・通勤手当等の非課税限度額の改正について
2026.05.11 大野事務所コラム
【令和8年度地方労働行政運営方針】
2026.05.01 大野事務所コラム
対話と議論の違い―「人と人との関係性」から人事労務を考える㊻
2026.04.27 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【1か月単位の変形労働時間制の基本と運用上の留意点(前編:制度の概要と導入のポイント)】
2026.04.25 これまでの情報配信メール
治療と就業の両立支援指針について
2026.04.21 大野事務所コラム
月給制における賃金支払基礎日数
2026.04.15 これまでの情報配信メール
障害者の法定雇用率引上げ・国民年金第1号被保険者の育児期間に係る国民年金保険料免除制度・法人の役員の被保険者資格の取扱いについて
2026.04.11 大野事務所コラム
2026年度法改正の動向(その2)
2026.04.01 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【在宅勤務の労務管理について】
2026.04.01 大野事務所コラム
月給日給者の平均賃金額を考える
2026.03.26 これまでの情報配信メール
健康保険・厚生年金保険における現物給与価額の改正について・雇用保険料率、労災保険率について
2026.03.21 大野事務所コラム
労災裁決例から読む「叱責」と「パワハラ」の境界線
2026.03.19 ニュース
2026春季大野事務所定例セミナーを開催いたしました
2026.03.17 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【会社のSNS対策とモニタリング】
2026.03.15 これまでの情報配信メール
子ども・子育て支援金制度について・協会けんぽの健康保険料率および介護保険料率について
2026.03.11 大野事務所コラム
社会保険に遡及加入した場合の遡及分の社会保険料は当然に給与から控除できるのか?
2026.03.09 ニュース
令和8年度施行 労働関係・社会保険改正のチェックポイント
2026.03.01 大野事務所コラム
「ビジネスと人権」はこれからの企業活動の下地―「人と人との関係性」から人事労務を考える㊺
2026.02.26 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【給与からの控除に関する基本的なルールと留意点】
2026.02.21 これまでの情報配信メール
働く女性の健康管理について
2026.02.21 大野事務所コラム
食事手当は割増賃金の計算基礎に含める
2026.02.11 これまでの情報配信メール
令和8年度の年金額改定について等・労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律
2026.02.11 大野事務所コラム
2026年度法改正の動向
2026.02.01 大野事務所コラム
フリーランス等へのハラスメント対策を考える
2026.01.21 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【定年後再雇用者の賃金】
2026.01.21 大野事務所コラム
新年のご挨拶とともに、精神障害と業務上疾病をめぐる裁決
2026.01.20 これまでの情報配信メール
令和7年賃金引上げ等の実態に関する調査について
2026.01.11 大野事務所コラム
転勤時に36協定の特別条項の発動回数は通算かリセットか?
2026.01.01 大野事務所コラム
負の影響の防止・軽減から情報開示まで―「人と人との関係性」から人事労務を考える㊹
2025.12.23 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【割増賃金の計算方法】
2025.12.21 大野事務所コラム
介護休業給付金を93日分受給したい
2025.12.19 ニュース
年末年始休業のお知らせ
2025.12.11 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【育児短時間勤務制度について】
2025.12.11 大野事務所コラム
マイナ保険証について
HOME
事務所の特徴ABOUT US
業務内容BUSINESS
事務所紹介OFFICE
報酬基準PLAN
DOWNLOAD
CONTACT
pagetop