TOP大野事務所コラム2023年度に施行される法改正

2023年度に施行される法改正

こんにちは。大野事務所の深田です。

 

早いもので師走を迎えることとなりました。昨年と今年の通常国会で成立した労働社会保険関係法令の改正は限られたものでしたが、私のコラムでも継続的に取り上げてきた育児休業に関する法改正は実務に与える影響が大きかったといえます。

 

さて、来年度(2023年度)に目を向けますと、41日施行の法改正の一つとして見落としてはならないのが、「中小企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金の見直し」(労働基準法の改正)です。これは、月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率が「50%以上」に引き上げられたことについて(20104月施行)、中小企業への適用が猶予されてきていたところ、来年41日以降は中小企業に対しても適用となるものです。この法改正は、2018年に成立したいわゆる働き方改革関連法に含まれていた内容です。該当する企業では給与計算における対応はもちろんのこと、就業規則(給与規程)の改定や労働条件通知書・雇用契約書の改定といった対応も必要となります。

 

労働基準法関係ということでは、施行規則の改正により来年4月から「資金移動業者の口座への賃金支払」が可能となります。これは、金融機関への振込による賃金の支払と同様、労働者本人の同意が前提となりますが、厚生労働大臣が指定する資金移動業者の口座へ資金移動するものであり、厚生労働大臣による指定の要件が複数定められています。その一つには「口座への資金移動に係る額の受取について、現金自動支払機を利用する方法その他の通貨による受取ができる方法により1円単位で当該受取ができるための措置及び少なくとも毎月1回は当該方法に係る手数料その他の費用を負担することなく当該受取ができるための措置を講じていること。」とあり、(口座残高は100万円以下といった制約はありますが)現金としての扱いという点においては金融機関への賃金支払の場合と大差ないものと考えられます。

 

また、法改正ということではありませんが、来年41日に向けて行うべき労働者派遣関係の実務対応の一つとして、派遣労働者の待遇決定を労使協定方式によって行っている場合における当該労使協定の見直しがあります。なお、賃金の最低ラインとなる「一般賃金」における「一般退職金」について、2023年度は「5%を一般基本給・賞与等に乗じた額」(現行は6%)とされました。

 

執筆者:深田

深田 俊彦

深田 俊彦 特定社会保険労務士

労務相談室長 管理事業部長/パートナー社員

社会人1年目のときの上司が元労働基準監督官だったことが、労働分野へ関心を寄せるきっかけとなりました。
日頃からスピード感を持って分かりやすくまとめ、分かりやすく伝えることを心掛けています。また、母の「人間は物事が調子良く進んでいるときに感謝の気持ちを忘れがちである」という言葉を、日常生活でも仕事の上でも大切にしています。

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