折衷案と協調モード―「人と人との関係性」から人事労務を考える㉓
こんにちは。大野事務所の今泉です。
サッカーのワールドカップ、盛り上がりましたね。
SNSやYouTubeはじめ、巷間ではこれからの日本サッカーの話題が展開されていました。「これからは相手に合わせるだけでなく、ブラジルのように個人技を持った選手たちが、スペインのようにボールを細かく繋いで、クロアチアのように最後まであきらめないメンタリティを持ったチームを!・・・(後略)。」
こんな都合のよい、「いいとこ取り」のような意見もあったとか、なかったとか。。。
さて、今回はまさにこの「いいとこ取り」という意味合いを持つ「折衷案」について触れたいと思います。これまで書いてきた協調モードと、いわゆる折衷案とで何か違いがあるのか、あるとしたらどのようなものなのか、明らかにしてみたいと思います。
「折衷」を辞書的な意味で記すと「二つ以上の考え方や事物から,それぞれのよいところをとって一つに合わせること。」あるいは「あれこれと取捨して適当なところをとること。」ということだそうです。つまりは、やはり「いいとこ取り」なのですが、それぞれのいい意見をまとめた結果、偏っていない中立的な案ともいえるでしょう。
双方の意見や主張が強すぎると、課題解決に結びつかないことが多くありますが、その結果、話し合いにすらならない、物別れに終わるといったこともありがちです。そういったことを防止する、せっかくの話し合いの場を無駄にしない、あるいは対立を避ける、といういわば折り合いをつける目的で「折衷案」が用いられるのが一般的かもしれません。
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ここで注意しなければならないのは、折衷案の提案とは複数の意見や案があったとき、いいところだけを取って新しい案を創出することである以上、最善策とはいえないことが多い、ということです。新しい案とはいってもそれぞれの意見や主張を超える案、あるいはまったく思いもよらなかった方向から導き出されるイノベーティブな案は創出されないでしょう。
さらに、場合によってはそれぞれ意見を述べた各人の誰が見ても遜色ない、「この案は自分の意見が取り入れられている」という案になることから、いわゆる玉虫色の内容になってしまう可能性があります。
このことは決して悪いことばかりではないと思いますが、場当たり的な解決になってしまう、もしくは本質的な解決策になっていない、という可能性があることも事実です。
協調モードは、相手と自分の判断基準や解釈が異なること、つまり、コンフリクトがあることを前提として、お互いの立脚点を理解し合うことから始め、共通認識を作り上げていく、意見の相違を認め合いつつ、リスペクトをしながら進めていくことは前回お伝えしたとおりです。結果として折衷案的な解決方法に辿り着く場合もあるでしょうが、それに限らず、新たな価値を生み出す可能性が内包されます。また、ときには双方の主張から全く異なる視点で創出される代替案を拒みません。
それは、お互いの立脚点を尊重している、認め合うことから始めているからに他なりません。
日本人は中間が好きな傾向にあるようですが、それは上のいいところと下のいいところを取り込んだ折衷的なものが何となく安心するからかもしれません。そういう意味では折衷案は日本人的な解決方法ともいえるのではないかと思います。なかなか意見がまとまらない場合、行き詰った場合に答えを出すことが急務であるとき、いわゆる「落としどころ」として折衷案が活用されているのではないでしょうか。
ただ、それはこれまでお伝えしている協調モードとは似てはいますが非なるもの、といえるでしょう。
・・・ところで、冒頭のサッカーチーム、仮にこのようなチームがあったとして、果たして本当に勝てるチームとなれるでしょうか??
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
大野事務所コラム、今年は本稿が最後となります。2023年もどうぞよろしくお願いいたします。
今泉 叔徳 特定社会保険労務士
渋谷第1事業部 事業部長/ パートナー社員
群馬県桐生市出身。東京都立大学法学部法律学科卒業。
人事労務関係の課題解決の糸口としてコミュニケーションや対話の充実があるのではないかと考え、これにまつわるテーマでコラムを書いてみようと思い立ちました。日頃の業務とはちょっと異なる分野の内容ですので、ぎこちない表現となってしまっていたりすることはご了承ください。
休日には地元の少年サッカーチームでコーチ(ボランティア)をやっていて、こども達との「コミュニケーション」を通じて、リフレッシュを図っています。
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