年末年始手当は賞与?
こんにちは。大野事務所幕張オフィスの高田です。
「年末年始手当は賞与に当たるか?」と聞かれて「賞与である」と回答する方は殆どいないと思いますが、今回はあくまでも社会保険上の取り扱いの話です。
近年、日本年金機構(年金事務所)では、この年末年始手当を賞与として届け出るよう指導していたものと思われ、筆者のもとにも、これが本当に賞与に当たるのか?といったお問い合わせが、顧問先様よりたびたび寄せられていました。
この問題について、今年(2026年)2月に日本年金機構の見解が示されたという話になります。
1.「報酬」と「賞与」の違い
社会保険でいうところの「報酬」と「賞与」について、健康保険法の条文(第3条)では、それぞれ次のように定義されています。
「報酬」とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのものをいう。ただし、臨時に受けるもの及び3月を超える期間ごとに受けるものは、この限りでない。
「賞与」とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのもののうち、3月を超える期間ごとに受けるものをいう。
両者を見比べるとお分かり頂けるかと思いますが、両者とも「労働の対償として受けるすべてのもの」までは同じ内容であって、後半の「臨時に受けるもの」や「3月を超える期間ごとに受けるもの」であるかどうかの部分が、両者を分けるポイントになっています。つまり、「報酬」なのか「賞与」なのかは、その支給趣旨や性質といった要素とは基本的に関係がなく、単に支給頻度の違い(毎月支給するのか否か)によって分けられているということです。
2.年末年始手当は賞与なのか?
「年末年始手当は賞与である」といった見解は、まさに当該手当の支給頻度に着目した結果、導き出されたものであると思われます。年末年始と称しているとおり、支給月としては12月と1月の年2回しか想定していませんので、支給頻度だけで判断すれば、確かに賞与に当たるとの結論になるのかもしれません。とはいえ、これが賞与であるというのは、やはり感覚的に腑に落ちないのも事実です。
この問題について、今年(2026年)2月に日本年金機構の見解が示されたというのは、「疑義照会回答(厚生年金保険 適用)」に次のとおり追加されたことを指しています。
| 案件 | 年末年始手当が賞与に該当するか |
| 内容 | 年末年始期間(12/28~1/3)に出勤した職員に対し、通常の休日出勤手当に加え、年末年始手当を支給しました。金額は、1時間当たりの給与100分の25に相当する金額を、出勤時間に応じて支給しています。この手当は給与規程において規定され、賃金台帳上も単独の項目で記載していますが、賞与支払届の提出が必要でしょうか。 |
| 回答 | 事業所の休日である年末年始等に出勤した者に対し、通常の休日出勤手当に加え、年末年始手当等が支給された場合、その金額や計算方法が通常の休日出勤手当等と比較し、著しい差異がない場合においては、当該年末年始手当等は通常の休日出勤手当等と同一の性質を有すると認められ、原則「通常の報酬」として取り扱うため賞与支払届の提出は不要です。 なお、同一の性質を有するかどうかは、手当の名称に捉われず、手当支給の趣旨や通常の休日出勤手当等の金額や計算方法と著しい差が生じないかを確認の上総合的に判断し、「賞与」とするか「通常の報酬」とするかを決定します。 |
「その金額や計算方法が通常の休日出勤手当等と比較し、著しい差異がない場合」というのは、実際に年末年始休日に勤務したことに対して、休日の割増賃金に加算するような方法で手当を支給している場合を指しているものと筆者は解釈しています。その具体的な計算方法としては、1日当たり幾らでも、1時間当たり幾らでも、とにかく勤務の実績に応じて計算している場合には、休日の割増賃金と同一の性質を有するものとみなし、通常の報酬として取り扱うのが妥当ということなのだと思われます。
裏を返せば、同じ年末年始手当であっても、実際に年末年始休日に勤務したかどうかの実績とは関係なしに、12月や1月に一律額を支給するような場合には、賞与に当たるとの趣旨のようです。
3.寒冷地手当は賞与なのか?
それでは、似たような手当として、寒冷地手当(燃料手当)の場合はどうなるでしょうか。
寒冷地手当の支給形態にも色々あるとは思いますが、多くの場合は、冬季期間中の燃料費の補助として月額で一定額を支給しているものと思います。支給対象となる冬季の期間が企業によって幅があるものの(概ね3~6ヶ月)、該当月に定額を支給する点については概ねどの企業も同じではないでしょうか。
この寒冷地手当については、上記の年末年始手当に関する疑義照会回答を応用した場合、賞与に当たる可能性が高いと思われます。寒冷地手当は、勤務実績に基づいて割増賃金に加算する形で支給しているわけではなく、該当月に一律額を支給しているからです。なお、賞与として取り扱う場合については、支給回数が1年間(前年7月から当年6月まで)に3回以下の場合は通常の「賞与」として届け出を行い(賞与支払届を提出し)、4回以上の場合は「賞与に係る報酬」(いわゆる年4回以上賞与)として処理することとなります。
ただし、以上はあくまでも一般論であって、実際にはその企業の支給ルールや実態に基づいて「通常の報酬」として判断される例もありますので、必ず所轄の年金事務所の方へご確認ください。

執筆者:高田
高田 弘人 特定社会保険労務士
パートナー社員
岐阜県出身。一橋大学経済学部卒業。
大野事務所に入所するまでの約10年間、民間企業の人事労務部門に勤務していました。そのときの経験を基に、企業の人事労務担当者の目線で物事を考えることを大切にしています。クライアントが何を望み、何をお求めになっているのかを常に考え、ご満足いただけるサービスをご提供できる社労士でありたいと思っています。
過去のニュース
ニュースリリース
- 2026.08.21 大野事務所コラム
- 年末年始手当は賞与?
- 2026.08.12 これまでの情報配信メール
- 基本手当日額および高年齢雇用継続給付金等の支給限度額変更、育児休業給付の申請手続きの見直し、産業医の辞任等に関する報告の義務化について
- 2026.08.11 大野事務所コラム
- 熱中症対策を改めて確認しましょう
- 2026.08.01 大野事務所コラム
- 賃金未払いに伴う遅延利息(遅延損害金)を考える
- 2026.07.28 ニュース
- 『workforce Biz』に寄稿しました【労災保険の基礎知識―業務災害と通勤災害について(前編:業務災害)】
- 2026.07.28 これまでの情報配信メール
- カスハラ対策および求職者等セクハラ対策の義務化について
- 2026.07.21 ニュース
- 『月刊不動産』に寄稿しました【採用面接時に応募者の健康状態を確認しても問題はないか】
- 2026.07.21 大野事務所コラム
- 飲み会での事故は労災になるのか ~裁決例から見る「業務性」の判断~
- 2026.07.11 大野事務所コラム
- 業務災害による休業の最初の3日間に所定休日が含まれる場合の労基法上の休業補償の考え方は?
- 2026.07.10 これまでの情報配信メール
- 労働者数50人未満の事業場にもストレスチェックが義務化されます
- 2026.07.01 ニュース
- 「ビジネスと人権」セミナー開催のご案内【2026年7月29日(水)】
- 2026.07.01 ニュース
- 当事務所スタッフが労務行政主催セミナーに登壇いたします【2026年7月29日(水)】
- 2026.07.01 大野事務所コラム
- 学ぶことを棄てる⁉ ―「人と人との関係性」から人事労務を考える㊼
- 2026.06.30 ニュース
- 『workforce Biz』に寄稿しました【健康診断について】
- 2026.06.26 これまでの情報配信メール
- 令和8年度の算定基礎届の提出について、熱中症の予防対策について
- 2026.06.21 大野事務所コラム
- 退職給付金って何?
- 2026.06.12 これまでの情報配信メール
- 同一労働同一賃金に関する施行規則と告示の改正、 特定在留カード等交付申請について
- 2026.06.11 大野事務所コラム
- 同一労働同一賃金関連の法改正動向
- 2026.06.01 大野事務所コラム
- 懲戒処分における併科と二重処罰を考える
- 2026.05.29 これまでの情報配信メール
- 社会保険適用拡大特設サイトリニューアル・保険料調整制度のご案内(令和8年10月施行)
- 2026.05.28 ニュース
- 『workforce Biz』に寄稿しました【1か月単位の変形労働時間制の基本と運用上の留意点(後編:運用上の留意点)】
- 2026.05.21 大野事務所コラム
- 労災裁決例から読む~出来事は単体で評価されていない~
- 2026.05.15 ニュース
- 『月刊不動産』に寄稿しました【私傷病休職の発令】
- 2026.05.14 これまでの情報配信メール
- 労働保険年度更新に係るお知らせ・通勤手当等の非課税限度額の改正について
- 2026.05.11 大野事務所コラム
- 【令和8年度地方労働行政運営方針】
- 2026.05.01 大野事務所コラム
- 対話と議論の違い―「人と人との関係性」から人事労務を考える㊻
- 2026.04.25 これまでの情報配信メール
- 治療と就業の両立支援指針について
- 2026.04.21 大野事務所コラム
- 月給制における賃金支払基礎日数
- 2026.04.15 これまでの情報配信メール
- 障害者の法定雇用率引上げ・国民年金第1号被保険者の育児期間に係る国民年金保険料免除制度・法人の役員の被保険者資格の取扱いについて
- 2026.04.11 大野事務所コラム
- 2026年度法改正の動向(その2)
- 2026.04.01 ニュース
- 『workforce Biz』に寄稿しました【在宅勤務の労務管理について】
- 2026.04.01 大野事務所コラム
- 月給日給者の平均賃金額を考える
- 2026.03.26 これまでの情報配信メール
- 健康保険・厚生年金保険における現物給与価額の改正について・雇用保険料率、労災保険率について
- 2026.03.21 大野事務所コラム
- 労災裁決例から読む「叱責」と「パワハラ」の境界線
- 2026.03.19 ニュース
- 2026春季大野事務所定例セミナーを開催いたしました
- 2026.03.17 ニュース
- 『月刊不動産』に寄稿しました【会社のSNS対策とモニタリング】
- 2026.03.15 これまでの情報配信メール
- 子ども・子育て支援金制度について・協会けんぽの健康保険料率および介護保険料率について
- 2026.03.11 大野事務所コラム
- 社会保険に遡及加入した場合の遡及分の社会保険料は当然に給与から控除できるのか?
- 2026.03.09 ニュース
- 令和8年度施行 労働関係・社会保険改正のチェックポイント
ニュース&コラム