ユニオン・ショップ協定を考える
パートナー社員の野田です。
年数回ではありますが、ユニオン・ショップ協定やチェック・オフ協定など労働組合に関するご相談をお受けします。その中には、組合員から脱退の申出があった場合に会社として解雇せざるを得ないか、チェック・オフの中止を求められた場合に拒否しても問題ないかといったものですので、今回はユニオン・ショップ協定について触れたいと思います。
ユニオン・ショップ協定とは、企業に雇用された労働者は労働組合に加入しなければならず、使用者は組合に加入しない者や組合員でなくなった者を解雇しなければならない旨を定めたものであり、雇用された労働者は強制的に労働組合員になるというものです。
ある調査結果によれば、現労働組合の約6割がユニオン・ショップ協定(以下「ユシ協定」)のようですが、グローバル化が進む現代において、労働組合への加入が強制されるというのは、いかがなものでしょうか。弱者とされている労働者が、一個人で権利を主張するのではなく、団体・集団で会社と交渉できることなどが組合員になることのメリットとして挙げられますが、今では個別労使紛争も一般化しており、必要な情報はインターネットで収集できる環境にありますので、以前のように労働組合に頼る必要性が薄れています。また、労働者の価値観も変化しており、権利を主張する手段としての団体交渉は現代では馴染まないように感じられます。
冒頭でふれたご相談にもある通り、組合員ではあるものの可能ならば脱退したいと思っている労働者が少なからずいらっしゃるようで、脱退を申し出たり、チェック・オフ(組合費を給与から控除すること)を拒否したりする組合員が発生した場合、会社として対応に悩みます。
ユシ協定において、会社は組合脱退者を解雇することが義務となる訳ですが、個人的には当該義務に疑問を感じます。判例では、ユシ組合を脱退後に他組合に加入している者を解雇することは無効、他組合に加入していない者の解雇は有効との立場を取っておりますが、学説は当該判決を支持する見解(部分的有効説)と反対する見解(無効説)の二つに分かれているようです。
個人的には、組合に加入する権利がある一方、組合に加入しない権利があって然るべきものと考えます。
フランスやドイツではユシ協定が禁止されているようですが、ある企業の外国人役員や人事担当者と話をしていた際、「特定の労働組合に加入することを義務づける協定が有効とされていることが信じられない」とおっしゃっていたことが強く印象に残っています。ユシ組合においても、強制・自動加入されていることで組合員としての意識が軽薄になったり、活動が受動的になったりして自律性が損なわれているというのが実情ではないでしょうか。
ユシ協定の有効要件と解されている労組法第7条1項ただし書きでは、「労働組合が特定の工場事業場に雇用される労働者の過半数を代表する場合において、その労働者がその労働組合の組合員であることを雇用条件とする労働協約を締結することを妨げるものではない。」とありますが、これから少子高齢化が進み、正社員である組合員数が当該事業所の過半数を割れることも想定されます。そうした場合、組合を解散するか、非正規社員を含めた過半数組合(ユシ協定)を再結成するかといった選択を迫られますので、労働者代表制度の法制化や産業別労働組合の実現など、制度の見直しを真剣に検討すべき時期かもしれません。
以上となります。
執筆者:野田
野田 好伸 特定社会保険労務士
代表社員
コンサルタントになりたいという漠然とした想いがありましたが、大学で法律を専攻していたこともあり、士業に興味を持ち始めました。学生時代のバイト先からご紹介頂いた縁で社労士事務所に就職し、今に至っています。
現在はアドバイザーとして活動しておりますが、法律や制度解説に留まるのではなく、自身の見解をしっかりと伝えられる相談役であることを心掛け、日々の業務に励んでおります。
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