ニュース&コラムニュース&コラム

TOP大野事務所コラム衛生管理者の「専属」とは

衛生管理者の「専属」とは

【2026年6月26日更新】

 

こんにちは。大野事務所幕張オフィスの高田です。

 

以前(2020年9月9日)の記事にて別の執筆者が産業医の「専属」について取り上げていますが、今回は衛生管理者の「専属」について考えたいと思います。

 

1.「専属」とは

 

衛生管理者については、50人以上の事業場において1人選任する時点から「専属」であることが求められていますので(※)、産業医が「専属」であることが求められるケース(1,000人以上。一部特定業務は500人以上。)と比較しても、はるかに身近な問題だといえます。
(※)労働安全衛生規則第7条第1項第2号。ただし、2人以上選任する場合の例外があります。

 

この「専属」の定義については、通達(昭和27.9.20基発第675号)の中で、産業医の専属の話に触れて「その事業に専属の者とは、その事業場のみに勤務する者ということであって」と示されています。この部分については、単に一般用語としての「専属」の意味を解説しているに過ぎないのかもしれませんが、実際問題として、「専属」とは字面的にも「専ら属すること」をいうのだと思われますので、「その事業場のみに勤務しており、他の事業場には勤務していない者」を指しているのは間違いありません。

 

それでは、なぜ衛生管理者がその事業場に専属の者でなければならないのかについては、法律上には書かれていませんので、この点はあくまでも筆者の推測ですが、衛生管理者に課せられた様々な職務(労働安全衛生法第10条第1項各号業務のうち衛生にかかる事項)を確実に遂行するためには、その事業場に「常にいる」ことが前提として考えられているのだろうということだと思います。

 

2.グループ企業兼務出向者は「専属」か

 

この「専属」かどうかがよく問題として挙げられるのは、グループ企業での衛生管理者の選任においてです。たとえば、親会社の総務人事部門のスタッフが衛生管理者として選任されているケースにおいて、当該スタッフを子会社の総務人事部門に兼務出向させると、もはや親会社専属とはいえなくなるのか?といった話です。一口に兼務出向とはいっても兼務の形態は様々ですが、中には、親会社の事業場にいながらにして子会社の業務を遂行するケースもあると思いますし、当該出向者の業務のうち、殆どが親会社のもので、子会社の業務は僅かしかないといったケースもあると思います。これらのようなケースも含め、兼務出向の状態になると一律に「専属」ではないのかどうか、幾つかの労働基準監督署に確認してみました。結果は、筆者が確認した限りでは、いずれも「専属の要件を欠くので、衛生管理者として選任できない」との回答でした。

 

ある程度予想していた回答とはいえ、実態に照らして柔軟に判断する余地が多少はあるのではないかと期待していただけに、少々がっかりしました。確かに、「専属」の文字通りの定義に照らせばそのような結論になるのは分かりますが、たとえば親会社の業務が90%を占めていて子会社業務が10%しか占めていないようなケースでさえも、「専属」でないからといって親会社の衛生管理者を解かなければならないというのは、いくら何でも杓子定規に取り扱いすぎているのではないか?という気がするのも事実です。(さすがに、労働基準監督署に対して、そこまで極端な例を挙げて質問したわけではありませんが)

 

3.まとめ

 

なお、「専属」であることにこだわる理由が、衛生管理者の職務を遂行するためには「その事業場に常にいること」を前提としているのではないか?と申し上げましたが、それでは、パートタイマーなど労働時間が短い者や、営業スタッフなど外出が多い者の中から選任してはいけないのか?というと、これらを排除する規定は特にありません。法の趣旨に照らせば、週に2~3日程度しか出社しないパートタイマーや、外出が多く不在にしがちな者を衛生管理者として選任するのは、実際問題として妥当ではないのだろうと思います。ですが、この点、法律は特に禁止していませんので、そう考えると、ますます「専属」にこだわることの意味もよく分からなくなってくるのですが、法律ですので、そういうものだと割り切って考えることにします。

 

近年では、副業・兼業によって「専属」ではなくなるケースも想定されます。もし御社専属の衛生管理者の方が、副業・兼業を開始して他の事業場にも勤務することとなった場合には、副業・兼業先における労働時間の多寡にかかわらず、もはや専属の労働者とはいえなくなりますので、衛生管理者の任を解かなければならないということです。

 

執筆者:高田

高田 弘人

高田 弘人 特定社会保険労務士

パートナー社員

岐阜県出身。一橋大学経済学部卒業。
大野事務所に入所するまでの約10年間、民間企業の人事労務部門に勤務していました。そのときの経験を基に、企業の人事労務担当者の目線で物事を考えることを大切にしています。クライアントが何を望み、何をお求めになっているのかを常に考え、ご満足いただけるサービスをご提供できる社労士でありたいと思っています。

その他のコラム

過去のニュース

ニュースリリース

2026.08.11 大野事務所コラム
熱中症対策を改めて確認しましょう
2026.08.01 大野事務所コラム
賃金未払いに伴う遅延利息(遅延損害金)を考える
2026.07.28 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【労災保険の基礎知識―業務災害と通勤災害について(前編:業務災害)】
2026.07.28 これまでの情報配信メール
カスハラ対策および求職者等セクハラ対策の義務化について
2026.07.21 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【採用面接時に応募者の健康状態を確認しても問題はないか】
2026.07.21 大野事務所コラム
飲み会での事故は労災になるのか ~裁決例から見る「業務性」の判断~
2026.07.11 大野事務所コラム
業務災害による休業の最初の3日間に所定休日が含まれる場合の労基法上の休業補償の考え方は?
2026.07.10 これまでの情報配信メール
労働者数50人未満の事業場にもストレスチェックが義務化されます
2026.07.01 ニュース
「ビジネスと人権」セミナー開催のご案内【2026年7月29日(水)】
2026.07.01 ニュース
当事務所スタッフが労務行政主催セミナーに登壇いたします【2026年7月29日(水)】
2026.07.01 大野事務所コラム
学ぶことを棄てる⁉ ―「人と人との関係性」から人事労務を考える㊼
2026.06.30 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【健康診断について】
2026.06.26 これまでの情報配信メール
令和8年度の算定基礎届の提出について、熱中症の予防対策について
2026.06.21 大野事務所コラム
退職給付金って何?
2026.06.12 これまでの情報配信メール
同一労働同一賃金に関する施行規則と告示の改正、 特定在留カード等交付申請について
2026.06.11 大野事務所コラム
同一労働同一賃金関連の法改正動向
2026.06.01 大野事務所コラム
懲戒処分における併科と二重処罰を考える
2026.05.29 これまでの情報配信メール
社会保険適用拡大特設サイトリニューアル・保険料調整制度のご案内(令和8年10月施行)
2026.05.28 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【1か月単位の変形労働時間制の基本と運用上の留意点(後編:運用上の留意点)】
2026.05.21 大野事務所コラム
労災裁決例から読む~出来事は単体で評価されていない~
2026.05.15 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【私傷病休職の発令】
2026.05.14 これまでの情報配信メール
労働保険年度更新に係るお知らせ・通勤手当等の非課税限度額の改正について
2026.05.11 大野事務所コラム
【令和8年度地方労働行政運営方針】
2026.05.01 大野事務所コラム
対話と議論の違い―「人と人との関係性」から人事労務を考える㊻
2026.04.27 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【1か月単位の変形労働時間制の基本と運用上の留意点(前編:制度の概要と導入のポイント)】
2026.04.25 これまでの情報配信メール
治療と就業の両立支援指針について
2026.04.21 大野事務所コラム
月給制における賃金支払基礎日数
2026.04.15 これまでの情報配信メール
障害者の法定雇用率引上げ・国民年金第1号被保険者の育児期間に係る国民年金保険料免除制度・法人の役員の被保険者資格の取扱いについて
2026.04.11 大野事務所コラム
2026年度法改正の動向(その2)
2026.04.01 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【在宅勤務の労務管理について】
2026.04.01 大野事務所コラム
月給日給者の平均賃金額を考える
2026.03.26 これまでの情報配信メール
健康保険・厚生年金保険における現物給与価額の改正について・雇用保険料率、労災保険率について
2026.03.21 大野事務所コラム
労災裁決例から読む「叱責」と「パワハラ」の境界線
2026.03.19 ニュース
2026春季大野事務所定例セミナーを開催いたしました
2026.03.17 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【会社のSNS対策とモニタリング】
2026.03.15 これまでの情報配信メール
子ども・子育て支援金制度について・協会けんぽの健康保険料率および介護保険料率について
2026.03.11 大野事務所コラム
社会保険に遡及加入した場合の遡及分の社会保険料は当然に給与から控除できるのか?
2026.03.09 ニュース
令和8年度施行 労働関係・社会保険改正のチェックポイント
2026.03.01 大野事務所コラム
「ビジネスと人権」はこれからの企業活動の下地―「人と人との関係性」から人事労務を考える㊺
2026.02.26 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【給与からの控除に関する基本的なルールと留意点】
HOME
事務所の特徴ABOUT US
業務内容BUSINESS
事務所紹介OFFICE
報酬基準PLAN
DOWNLOAD
CONTACT
pagetop