TOP大野事務所コラム大企業、中小企業の定義について

大企業、中小企業の定義について

こんにちは。大野事務所の高田です。

 

法改正の施行期日に関して、昨今では、中小企業に対して適用猶予期間が設けられるケースがしばしば見受けられます。私が記憶している範囲での一番古いものが、労働基準法第37条(1ヶ月の時間外労働が60時間を超えた場合の割増率を50%に引き上げ。大企業は2010年4月から、中小企業は2023年4月から。)の例ですが、労働基準法関連では、最近でも、第36条の時間外労働の上限規制(原則として月45時間、年360時間以内。特別条項によって延長する場合は、月100時間未満、複数月平均80時間、年720時間以内。)が、大企業は2019年4月、中小企業は2020年4月と、2段階の施行方式が取られました。この他記憶に新しいところでは、パート・有期雇用労働法における同一労働同一賃金対応が、大企業が2020年4月、中小企業が2021年4月と、やはり2段階の施行となりました。そして直近のものとしては、労働施策総合推進法におけるパワーハラスメント防止対策措置の義務化が、大企業は2020年6月から、中小企業は今年2022年4月からと、やはり2段階の施行となったところです。

 

なお、企業規模に応じた適用猶予ということでは、他にも様々な法律において段階的施行措置が講じられています。たとえば、少し古いところでは、2010年6月の育児介護休業法の改正では、一部の改正事項(所定外労働の免除制度、介護休暇の新設等)について常時労働者が100人以下の企業は2012年7月の施行とされましたし、社会保険の短時間労働者への適用拡大においても、被保険者数が501人以上の企業は2016年10月から、101人以上500人以下の企業は2022年10月から、51人以上100人以下の企業は2024年10月からといった具合に、3段階の施行措置が講じられているところです。この他、次世代育成支援対策推進法や女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画の策定・届出の義務化についても、当初は301人以上の企業が対象となり、その後一定期間を経て101人以上の企業にまで範囲を拡大するといった措置が講じられました。

 

さて、ここで、最初の段落で挙げた労働基準法、パート・有期雇用労働法および労働施策総合推進法でいうところの「大企業」「中小企業」の概念と、2つめの段落で挙げた育児介護休業法、社会保険の適用拡大、次世代育成支援対策推進法や女性活躍推進法の企業規模の区分とでは、大きな違いがあることにお気付きでしょうか?それは、前者の方は、企業の「労働者数」のみならず「業種」や「資本金」といった要素も併せて複合的に「大企業」か「中小企業」かを判断するのに対して、後者の方はあくまでも労働者数や被保険者数といった「人数」のみに着目しているという点です。当然のことながら、前者の方が判断要素が複雑である分、判断を見誤りやすいといえます。自社の現状をきちんと把握しないままに、漠然と中小企業だと思い込んでいたところが実は大企業だったということになると、法改正の適用時期を誤ることになるため、場合によっては深刻な法違反の状態になりかねません(たとえば、60時間超の時間外労働に対する割増率の規定においても、50%の割増賃金を支払わなければならないところを依然25%のままで支払っているなど)。

 

この「大企業」か「中小企業」かを判断するための基準が、下表1、2になります。最終的には、下表1において「業種」「資本金額」「労働者数」の3つの要素から大企業か中小企業かが決まるのですが、下表1に当てはめる前に、まずは下表2において、自社の業種が、小売業、サービス業、卸売業、その他(製造業、建設業、運輸業、その他)の4つのうちいずれに該当するのか見ておかなければなりません。下表2の大分類、中分類、小分類は日本標準産業分類に基づく分類であり、大分類を特定すれば自ずと業種が決まるものもあれば、小分類まで特定しないと業種の判断ができないものもあります。製造業、建設業、運輸業の3つは、大分類を特定する必要さえなく、自動的に「その他」になります。この「業種」の特定においてもっとも誤認しやすいのが、「サービス業」と「その他」の区分です。

 

この誤認の原因の1つとして、労災保険の料率を決定するための事業細目上の区分と混同している例が挙げられます。この事業細目上の区分と日本標準産業分類上の分類はまったくの別物ですので、労災保険では「その他の各種事業」に当たる企業でも、別表1、2の区分では「サービス業」に当たるケースが多くあります(弊事務所もその例に当てはまります)。もし、本来「サービス業」に該当する企業が「その他」の区分であると誤認していた場合、「資本金額」と「労働者数」の条件においては「その他」の方が中小企業の範囲が広く設定されていることから、「サービス業」に当てはめた途端に大企業になるといったパターンも想定されます。ですので、このパターンに該当しそうな業種、規模の企業様は、特にご注意頂きたいと思います。

 

「資本金額」と「労働者数」については、いずれかが中小企業の基準を満たしている場合には中小企業となります。私の顧問先様で、親会社と子会社ともに業種としてはサービス業で、労働者数は親会社が100人強、子会社が800人強と子会社の方が人数規模は圧倒的に大きいのですが、資本金は親会社が1億円、子会社が5,000万円であるため、親会社は大企業、子会社は中小企業に当たるという例があります。また、別の顧問先様で、業種が小売業で労働者数が1,000人強といういわゆる大会社なのですが、資本金が5,000万円であるため、この区分では中小企業に当たるという例もあります。これらの例のように、下表1、2に照らしてみた結果、その会社に対して漠然と抱いている「大企業」「中小企業」のイメージとは異なる区分に該当する例も意外に多くありますので、この記事をお読みになられて不安を感じられたご担当者様は、自社の区分について一度きちんと確認してみることをお勧めいたします。

執筆者:高田

高田 弘人

高田 弘人 特定社会保険労務士

幕張第2事業部 事業部長/執行役員

岐阜県出身。一橋大学経済学部卒業。
大野事務所に入所するまでの約10年間、民間企業の人事労務部門に勤務していました。そのときの経験を基に、企業の人事労務担当者の目線で物事を考えることを大切にしています。クライアントが何を望み、何をお求めになっているのかを常に考え、ご満足いただけるサービスをご提供できる社労士でありたいと思っています。

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