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日額手当支給時の割増賃金計算

 

パートナー社員の野田です。昨今は在宅勤務手当や出勤手当などを支給されている企業が多いと思われますが、今回はこれらの手当を日額で支給する場合の留意点について触れます。

 

このところIT企業の労務診断(労務DD)を実施する事が多く、これらの企業では、社員が在宅勤務をした日に在宅勤務手当を支給されたり、出社した日に出勤手当(通勤交通費とは別)を支給されたりしています。

諸手当を月額定額で支給した場合、割増賃金の計算基礎額に含めなければならないという認識はあるようですが、日額で支給した場合は当該認識が薄れてしまうのか、算定基礎額に含まれていないケースがほとんどです。

 

基本給や諸手当を月額で支給する社員に対し一部の手当を日額で支給するわけですが、月額と日額では時間単価を算出する際の計算式が異なる点で留意する必要があります。月額と日額が併給されている場合、月額から算出した単価Aと日額から算出した単価Bを合計した単価に割増率を乗じたものが割増賃金基礎単価となり、以下の通りとなります。

 

 ・月額賃金の時間単価(単価A):月額(基本給+諸手当等)÷月平均所定労働時間数(または支給月の所定労働時間数)

 ・日額賃金の時間単価(単価B):日額÷支給日の所定労働時間数

 ・割増賃金基礎単価:(単価A+単価B)×割増率

 

計算式は上記の通りですが、厄介なのは、全ての時間外労働等が当該割増賃金単価での支給対象になるわけではないということです。どういうことかというと日額支給の単価Bについては、支給日に時間外労働等を行った場合が対象となり、不支給日については単価Bを加算する必要がありません。理屈は理解できますが、実務上使い分けができるのかと尋ねられると悩ましいところです。

更に厄介なのはフレックスタイム制を導入している場合です。例えば、暦月30日の月に191時間勤務した社員がいたとします。当該社員に対しテレワーク手当を支給した日が10日あり、テレワークでの勤務時間数が100時間あった場合どうでしょうか。どこが支給対象となるか、皆さんはイメージできますでしょうか。

下図の例では、171時間(法定労働時間の総枠)を超過した時間外労働において、在宅勤務を行った時間が支給対象となります。下図のケースでは時間外労働が20時間ありますが、その全てが支給対象となるのではなく、在宅勤務を行った時間外労働(赤字の10時間)が支給対象になるということです。

 

 

このように図解すれば理解できますが実務上はお手上げです。優れた勤怠システムでも、これを判別することは容易ではありません。

なお、この取扱いは月給者に限らずアルバイト等の時給者でも同様であり、留意しなければなりません。曜日によって所定労働時間数が異なるアルバイトなどは、日によって単価Bが変わり実務が煩雑になるばかりですので、当該手当等も時給で支給することをお勧めします。

以上となりますが、労基法って煩雑で面倒なことが多いですね。こんな事で振り回されていては、企業の生産性など上がるはずもないと痛感しつつ、労務診断に取り組む今日この頃です。

 

※関連する通達を以下に紹介します

 

【危険作業手当(昭和231122日 基発1681号)】

自分の通常業務以外に危険作業に従事し時間外労働を行った場合、この危険作業に伴い支給される「危険作業手当」は、割増賃金の算定基礎に含めるべきか

(問)

ある作業中に、やむを得ない事情により特殊な危険作業(例えば高圧電流の通ずる線を取扱う作業)に従事する場合、これに対してその日は特に危険作業手当を支給することになっているが、これはその労働者の通常の労働日に対する賃金とは関係のない臨時的なものと考えられるので、割増賃金の基礎に算入しなくても差支えないと思うが如何。

(答)

危険作業が法第32条及び第40条の労働時間外に及ぶ場合においては、危険作業手当を法第37条の割増賃金の基礎となる賃金に算入して計算した割増賃金を支払わなければならない。

 

【危険作業手当(昭和231122日 基発1681号)】

自分の通常業務以外に特殊作業に従事し時間外労働を行った場合、この特殊作業に伴い支給される「特殊作業手当」は、割増賃金の算定基礎に含めるべきか

(問)

ある作業を担当する甲が休暇をとったため又はその作業繁忙のため常時その作業に従事していない乙をしてその作業に従事させた。協約によりかかる場合、甲のように当該作業に専ら従事する者には日額の手当(作業手当)を出すことになっており、乙のように自己本来の作業に従事しているならば右の日額作業手当は支給されないが、たまたまその日はその作業に従事したため、この日額作業手当は支給される。この場合、乙に対する右の日額手当は乙にとっては予定された通常の労働に対する賃金ではないものと考えられるので、割増賃金の基礎には算入しなくても差支えないものと思うが如何。

(答)

乙がその日の特殊事情によって通常従事している職務を離れ、たまたま甲の特殊作業に従事し、その特殊作業の勤務が法第32条及び第40条の労働時間外に及ぶときは、その超過労働時間に対しては、特殊作業手当を法第37条の割増賃金の基礎となる賃金に算入して計算した割増賃金を支払わなければならない。

 

執筆者:野田

野田 好伸

野田 好伸 特定社会保険労務士

パートナー社員

神奈川大学法学部卒業。
大学卒業後、西崎労務経営事務所(現社労士法人ユアサイド)に入所。約6 年の勤務を経て、2004年4月に大野事務所に入所。
人事労務に関する相談業務、IPO支援コンサルティング・人事労務制度設計コンサルティング業務をメインに活動。

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