TOP大野事務所コラムシリーズ 経営労務とコンプライアンス(第6回)

シリーズ 経営労務とコンプライアンス(第6回)

本コラムは、当事務所の代表社員である大野が、2012年に労働新聞に連載寄稿した記事をベースに同社の了解を得て転載するものです。

なお、今回の転載にあたり、必要に応じ適宜原文の加筆・修正を行っております。

 

〇企業企業ステージと人材マネジメント

 

生物に成長のステージがあるように、会社にも成長ステージを想定すると分析、認識がしやすい。はじめに、ちぐはぐな人材マネジメントの事例として、会社の成長ステージと食い違ったケースを考えてみる。

 

例えば、創業期の企業で「大企業をまねて複雑多岐な人事制度を導入し、運用できずに大混乱を招いて、メンテ業務に追われ人材戦略どころか人事管理もままならず頓挫したケース」を考えると、創業期のキーワードが、リーダー主導・即戦力・シンプルで迅速な組織運営であることを肝に銘じなければならない。

 

成長期の企業で「将来への組織の階層化、管理型人材の育成が焦眉の急なのに、相変わらず営業重視で組織の管理・運用を行う人材が欠乏し、役割が不明確で指揮命令系統が大混乱し適切な意思決定が不能に陥るケース」では、結局は勢いだけで成長してきたものの、脱皮できずに組織としての経営に到達できず衰退していく。

 

成熟期の会社で「変革能力・業績評価など成果型人事制度の仕組みを一方的に導入し意識改革を求めたものの、年功的な運用となり、何も変わらず従業員がついてこずにシラケムードが蔓延したケース」では形式のみでは変革はできないことを示している。

 

重要なのは、人材マネジメントは創業期、成長期、成熟期、変革期などの成長ステージによって、その最適な組合せが変わることであり、終わりのないプロセスであるとの認識だ。創業期には、創業者の強力なリーダーシップで、損得勘定を抜きにして、がむしゃらに働く即戦力型の人材が企業の成長を支えていることが多い。成長期を迎え、ある程度の企業規模になってくると、階層化された組織の管理型の人事システムが求められる。

 

このように、人材戦略は、経営目的を達成するために、その時々の企業ステージに合わせて立案、実践していくことが極めて重要になる。組織も人も変わらなければならない。だが、この終わりのないプロセスにも共通するものがある。それは人材マネジメントの以下の6つの視点である。

 

  • ①要員管理の視点(採用、配属、人材育成等)
  • ②就業条件管理の視点(賃金、労働時間、福利厚生、職場環境等)
  • ③人間関係管理の視点(モチベーション、リーダーシップ、モラル等)
  • ④組織管理の視点(服務規律、就業規則等)
  • ⑤人件費管理の視点(売上高、付加価値、総額人件費等)
  • ⑥労使関係の視点(労使協定、労働協約、企業風土等)

 

次回はこれらポイントを見ておこう。

 

以上

 

※次回(第7回)掲載日は、525日を予定しております。

 

シリーズ

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本コラムは、当事務所の代表社員である大野が、2012年に労働新聞に連載寄稿した記事をベースに、同社の了解を得て転載したものです。

ガバナンスと内部統制およびコンプライアンスの意味と位置づけを確認し、会社の成長、価値の向上に貢献する「経営労務」について、15回にわたり本コラムにて連載させていただきました。

なお、今回の転載にあたり、必要に応じ適宜原文の加筆・修正を行っております。

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