TOP大野事務所コラム高年齢者雇用安定法の改正

高年齢者雇用安定法の改正

こんにちは。大野事務所の深田です。

 

先月は、21日(月)が敬老の日、翌22日(火)が秋分の日ということで、土日含めて4連休という方も多くいらっしゃったことと思います。いわゆるハッピーマンデー制度の実施によって敬老の日が915日から9月の第3月曜日へ移動したのが2003年のことであり、もう17年も経つのですね。

 

さて、920日に総務省が「統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-」を公表しました。それによれば、高齢者(65歳以上)の就業者数は2004年以降16年連続で前年に比べて増加しており、2019年は過去最多の892万人になったとのことです(就業者総数に占める高齢就業者の割合も13.3%と過去最高)。

そうした中、「雇用保険法等の一部を改正する法律」が先の通常国会で成立し、それには高年齢者雇用安定法の改正も含まれています。同法の改正内容のうち肝となるのは、70歳までの就業機会確保であり、来年41日に施行されます。

 

具体的には、65歳から70歳までの雇用確保措置として、事業主に対して次の①~③のいずれかの措置を講ずる努力義務を課すというものです。現行の65歳までの雇用確保措置とほぼ同様の立て付けですが、②において「他の事業主による」雇用も含まれている点が異なります。

70歳までの定年引上げ

70歳までの継続雇用制度の導入(特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものも含む)

③定年廃止

 

一方で、実施計画を策定し、過半数労働組合(当該組合がない場合は、労働者の過半数を代表する者)の同意を得た上で以下の措置を講じる場合には、上記①~③によらないことができるものとされています。

イ)高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入

ロ)高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入

 a.事業主が自ら実施する社会貢献事業

 b.事業主が委託する法人その他の団体が実施する社会貢献事業

 c.事業主が出資(資金提供)等する法人その他の団体が行う社会貢献事業

 

これらは創業支援等措置と呼ばれるものですが、要はフリーランスや有償ボランティアということになるかと思います。現在、労働政策審議会において省令や指針の改正案が議論されており、創業支援等措置の実施計画に記載する事項についての留意点として、指針案には「創業支援等措置は、労働契約によらない働き方となる措置であることから、個々の高年齢者の働き方についても、業務の委託を行う事業主が指揮監督を行わず、業務依頼や業務従事の指示等に対する高年齢者の諾否の自由を拘束しない等、労働者性が認められるような働き方とならないよう留意すること。」との記述があります。

他方で、「高年齢者の安全及び衛生の確保に関して、業務内容を高年齢者の能力等に配慮したものとするとともに、創業支援等措置により就業する者について、同種の業務に労働者が従事する場合における労働契約法に規定する安全配慮義務をはじめとする労働関係法令による保護の内容も勘案しつつ、当該措置を講ずる事業主が委託業務の内容・性格等に応じた適切な配慮を行うことが望ましいこと。」とされています。更には、その他留意事項として「創業支援等措置により就業する高年齢者が、委託業務に起因する事故等により被災したことを当該措置を講ずる事業主が把握した場合には、当該事業主が当該高年齢者が被災した旨を厚生労働大臣に報告することが望ましいこと。また、同種の災害の再発防止対策を検討する際に当該報告を活用することが望ましいこと。」とも記されており、労働者性の問題を少なからず内在することになると言えそうです。

 

努力義務でスタートすることとなる70歳までの就業確保措置ですが、今後の運用動向などにしばらく注視してまいりましょう。

 

執筆者:深田

深田 俊彦

深田 俊彦 特定社会保険労務士

労務相談室長 管理事業部長/パートナー社員

社会人1年目のときの上司が元労働基準監督官だったことが、労働分野へ関心を寄せるきっかけとなりました。
日頃からスピード感を持って分かりやすくまとめ、分かりやすく伝えることを心掛けています。また、母の「人間は物事が調子良く進んでいるときに感謝の気持ちを忘れがちである」という言葉を、日常生活でも仕事の上でも大切にしています。

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