TOP大野事務所コラム思い込み ― 「人と人との関係性」から人事労務を考える②

思い込み ― 「人と人との関係性」から人事労務を考える②

人事労務管理には様々な側面がありますが、法令に関することや規程や制度についてではなく「人と人との関係性」についてお伝えしていきたい、ということで、前回はコミュニケーション、もしくはその不全というキーワードを取っ掛かりにしてお話しさせていただきました。

 

今回もその続きで、健全なコミュニケーションを阻害するものの一つである、いわゆる「思い込み」のお話をしたいと思います。「(自分は)理解していると思い込む」、「(相手に)伝わったと思い込む」、「正しいと思い込む」、これらすべてコミュニケーション不全を引き起こす原因といえます。

ときには思い込みが予期せぬ成功をもたらすケースもあるでしょう。しかしながら、人事労務管理において「思い込み」は、コミュニケーションを構成する3要素である情報・伝達・共有のすべてに悪影響を及ぼします。思い込んでしまったら最後、それが正しいと信じ切っているわけですから、自分の考えに固執してしまうため矯正のしようがありません。ちなみに、思い込みから発生した考えを正しいと信じ切ってしまうのは、自ら検証する際に都合の良い事実だけで判断してしまうため、とされています。つまり先入観ですね。その例としてよく挙げられるのが血液型占いです。

 

A型は几帳面」とよく言われますが、仮に几帳面なXさんという人がいたとして、Xさんが自分の血液型を名乗った際、血液型占いを信じる人は次のように思うわけです。

  XさんがA型だった場合       → 「やっぱりA型は几帳面」

  XさんがB型もしくはO型だった場合 → 「(違う血液型なのに)A型っぽい」

  XさんがAB型だった場合      → 「(B型でなく)A型の傾向が強い」

O型なのに几帳面」のような都合の悪い情報は切り捨てて、「A型が几帳面」という都合の良い情報のみが強く残ります。

 

より人事労務管理的な話に近付けてみましょう。昨今話題のリファラル採用(社員や内定者もしくはその友人などから推薦・紹介してもらった人材を採用する手法)を例にとると、現在転職サイトやエージェントなどを活用する一般的な採用活動を行っている企業で働いている採用担当部門の社員が、リファラル採用を我が社でも導入するべきだ、と考えたとします。この場合、リファラル採用のメリットや、これを導入して成功している他社事例ばかりを注目してリファラル採用を導入すべきという自らの意見(持論)を強化してしまう、という可能性があります。本来であればリファラル採用のデメリットや失敗事例にも同じ様に注目し、双方を天秤にかけた上で判断すべきでしょう。ただ、なかなかそれは難しかったりしますよね。

 

さて、そのような「思い込み」ですが、ここで大事なポイントとなるのが、思い込むにはそれなりに理由がある、ということです。もちろん、個人個人の性格的なものもありますが、今回強調しておきたいのは、伝える側の情報の不足・不明確さとそれを受け取った側の誤解により「行き違い」が生じた場合です。つまり、伝える側は「このような言い方で分かるだろう。」「この程度の情報量で十分だろう。」という先入観に基づき不足・不明確な情報を与えてしまう。それを受け取った側は情報の不足・不明確な部分を補うために「きっとこういうことなんだな」と自らの解釈もしくは先入観で埋めてしまう。その結果、「受け手の解釈の部分」と「伝える側が本来伝えたかった部分」とが異なってしまう。つまり、全く異なった情報となってしまう。そのことにより双方の認識にギャップができる。結果として「行き違う」ということになります。

 

結局のところ、情報は受け手側のフィルターを通してしか理解されません。この受け手の解釈の余地をいかに少なくするかが情報を伝える際のポイントなのでしょう。まずは、「物事のとらえ方は人によって違うのが当然だ」、という前提に立ち、その上で誤解を与えないようにするため具体的に情報を伝える必要があります。さらにいえば、相手が理解しているか確認する作業ができると良いですよね。人は先入観を持つものであるし、思い込みもする、ということを知っておくだけでも伝え方に変化が現れると思います。相手が理解しているか、きちんと伝わったかを確認しないということは、「伝える」と「言う」を混同している、「言った」ことで「伝えた」と「思い込んでいる」のだといえるでしょう。ちなみに、「物事のとらえ方は人によって違うのが当然だ」という前提は、ダイバーシティに通ずるところもあります。

 

一方で受け手の方も「このようなことでいいのだろうか?」と疑問に感じたなら、その場で確認すれば問題はありませんでした。苦手と感じる人が相手だと、この作業を疎かにしがちかもしれませんが、このことは適正なコミュニケーションに不可欠であると思います。その場で確認するという習慣をつけておくべきなのでしょう。

 

自戒の念も込めた今回の話題は以上となります。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

執筆者:今泉

今泉 叔徳

今泉 叔徳 特定社会保険労務士

パートナー社員

群馬県桐生市出身。東京都立大学法学部法律学科卒業。
人事労務関係の課題解決の糸口としてコミュニケーションや対話の充実があるのではないかと考え、これにまつわるテーマでコラムを書いてみようと思い立ちました。日頃の業務とはちょっと異なる分野の内容ですので、ぎこちない表現となってしまっていたりすることはご了承ください。
休日には地元の少年サッカーチームでコーチ(ボランティア)をやっていて、こども達との「コミュニケーション」を通じて、リフレッシュを図っています。

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