TOP大野事務所コラムパート有期法第13条・第14条への対応は出来ていますか

パート有期法第13条・第14条への対応は出来ていますか

パートナー社員の野田です。

 

同一労働同一賃金問題で注目を浴びているパート有期法ですが、パート有期法第13条(通常の労働者への転換措置)および第14条(事業主が講じる措置等の内容説明)への対応も済んでおりますでしょうか。ピンと来ない方も多いと思われますので、まずは条文をご確認ください。

 

第十三条(通常の労働者への転換)

 事業主は、通常の労働者への転換を推進するため、その雇用する短時間・有期雇用労働者について、次の各号のいずれかの措置を講じなければならない。

 

  • ①通常の労働者の募集を行う場合において、当該募集に係る事業所に掲示すること等により、その者が従事すべき業務の内容、賃金、労働時間その他の当該募集に係る事項を当該事業所において雇用する短時間・有期雇用労働者に周知すること。
  • ②通常の労働者の配置を新たに行う場合において、当該配置の希望を申し出る機会を当該配置に係る事業所において雇用する短時間・有期雇用労働者に対して与えること。
  • ③一定の資格を有する短時間・有期雇用労働者を対象とした通常の労働者への転換のための試験制度を設けることその他の通常の労働者への転換を推進するための措置を講ずること。

 

本条の通常の労働者への転換措置を換言すると以下となります。

 

  • ①求人情報・社外公募の周知
  • ②社内公募の際の応募機会の付与
  • ③正社員転換のための試験制度の設置・その他転換推進措置

 

パート有期法第13条では、通常の労働者(※)への転換を推進するため、既に雇用しているパート・有期社員に対し、①求人情報・社外公募の周知、②社内公募の際の応募機会の付与、③正社員転換のための試験制度の設置等のいずれかの措置を講じること(義務)としており、予めどの措置を講じているか周知することが重要とされています。

 

①の求人情報・社外公募の周知については、正社員に転換してもらいたいと思うパート・有期社員に対し声かけをするだけでは、本条要件を満たしたことにはならず、全てのパート・有期社員に対し周知する必要があるとのことです。また、自社HPやリクルート専門サイト等で募集内容を公開する場合、全てのパート・有期社員がいつでもHPや応募サイトを閲覧でき、募集内容を確認できる状況になければ、本条要件を満たさないとのことです。

 

③の措置を講ずる場合、パート・有期社員から正社員転換の要件として、勤続年数や資格要件を課すことは可能ですが、必要以上に厳しい要件を設けている場合は、本条の義務を果たしていないものと判断されます。

 

※事業所に正規型の労働者(正社員)と正規型以外の無期雇用フルタイム労働者がいる場合には、正規型以外の無期雇用フルタイム労働者への転換推進措置にとどまるものでは、本条の義務の履行とは言えず、正規型の労働者(正社員)への転換推進措置を講ずる必要があります。パート有期法でいうところの「通常の労働者」には、正規型の労働者(正社員)と正規型以外の無期雇用フルタイム労働者のいずれも含まれますが、本条に関しては、正社員のみを「通常の労働者」としている点、ご留意ください。

 

第十四条(事業主が講ずる措置の内容等の説明)

 事業主は、短時間・有期雇用労働者を雇い入れたときは、速やかに、第八条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項(労働基準法第十五条第一項に規定する厚生労働省令で定める事項及び特定事項を除く。)に関し講ずることとしている措置の内容について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない

2 事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに第六条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない。

3 事業主は、短時間・有期雇用労働者が前項の求めをしたことを理由として、当該短時間・有期雇用労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

 

パート有期法第141項では、パート・有期社員を雇い入れたときは、雇用管理の改善などに関する措置(待遇について不合理な相違はないこと、賃金制度、教育訓練、福利厚生施設、正社員転換制度の内容等)について説明(口頭可)することを義務づけていますが、「雇い入れたとき」とは、初回の契約に限らず契約更新時も含まれる点に留意しなければなりません。

さらに同条2項では、パート・有期社員から求められたときは、正社員との待遇の相違の内容、相違の理由及び考慮事項、更には待遇差を説明する際、比較対象として選定した通常の労働者およびその選定理由について説明することを義務付けており、同条3項では、当該求めを理由とした不利益取扱いを禁止しています。

 

パート有期法第14条については、同一労働同一賃金対策と相まって認識されているところですが、第13条については見落とされがちなので、今一度、自社の対応についてご確認頂ければと思います。

また、パートタイム労働法が改正されたことで、それまでは短時間労働者のみ対象となっていた第6条の労働条件の書面明示義務(昇給の有無、賞与の有無、退職手当の有無、相談窓口)について、有期雇用者にも対応が求められますが、労務診断を行っているなかで当該対応ができていない企業様が多いように感じられますので、この点もご確認ください。

 

以上

 

執筆者:野田

野田 好伸

野田 好伸 特定社会保険労務士

代表社員

コンサルタントになりたいという漠然とした想いがありましたが、大学で法律を専攻していたこともあり、士業に興味を持ち始めました。学生時代のバイト先からご紹介頂いた縁で社労士事務所に就職し、今に至っています。
現在はアドバイザーとして活動しておりますが、法律や制度解説に留まるのではなく、自身の見解をしっかりと伝えられる相談役であることを心掛け、日々の業務に励んでおります。

その他のコラム

過去のニュース

ニュースリリース

2024.04.17 大野事務所コラム
「場」がもたらすもの
2024.04.16 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【年5日の年次有給休暇の取得が義務付けられています】【2024年4月から建設業に適用される「時間外労働の上限規制」とは】
2024.04.10 大野事務所コラム
取締役の労働者性
2024.04.08 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【算定基礎届(定時決定)とその留意点(前編)】
2024.04.03 大野事務所コラム
兼務出向時の労働時間の集計、36協定の適用と特別条項の発動はどう考える?
2024.03.27 大野事務所コラム
小さなことからコツコツと―「人と人との関係性」から人事労務を考える㉜
2024.03.21 ニュース
春季大野事務所定例セミナーを開催しました
2024.03.20 大野事務所コラム
退職者にも年休を5日取得させる義務があるのか?
2024.03.15 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【2024年4月以降、採用募集時や労働契約締結・更新時に明示すべき労働条件が追加されます!】
2024.03.21 これまでの情報配信メール
協会けんぽの健康保険料率および介護保険料率、雇用保険料率、労災保険率、マイナンバーカードと保険証の一体化について
2024.03.26 これまでの情報配信メール
「ビジネスと人権」早わかりガイド、カスタマーハラスメント防止対策企業事例について
2024.03.13 大野事務所コラム
雇用保険法の改正動向
2024.03.07 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【専門業務型裁量労働制導入の留意点(2024年4月法改正)】
2024.03.06 大野事務所コラム
有期雇用者に対する更新上限の設定と60歳定年を考える
2024.02.28 これまでの情報配信メール
建設業、トラック等運転者、医師の時間外労働の上限規制適用・令和6年度の年金額改定について
2024.02.28 大野事務所コラム
バトンタッチ
2024.02.21 大野事務所コラム
被扶養者の認定は審査請求の対象!?
2024.02.16 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【派遣労働者の受入れ期間の制限〈後編〉】
2024.02.14 大野事務所コラム
フレックスタイム制の適用時に一部休業が生じた場合の休業手当の考え方は?
2024.02.16 これまでの情報配信メール
令和6年能登半島地震に伴う労働基準法や労働契約法等に関するQ&A 等
2024.02.09 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【固定残業代の計算方法と運用上の留意点】
2024.02.07 大野事務所コラム
ラーメンを食べるには注文しなければならない―「人と人との関係性」から人事労務を考える㉛
2024.01.31 大野事務所コラム
歩合給の割増賃金を固定残業代方式にすることは可能か?
2024.01.24 大野事務所コラム
育児・介護休業法の改正動向
2024.01.19 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【派遣労働者の受入れ期間の制限〈前編〉】
2024.01.17 大野事務所コラム
労働保険の対象となる賃金を考える
2024.01.10 大野事務所コラム
なぜ学ぶのか?
2023.12.21 ニュース
年末年始休業のお知らせ
2023.12.20 大野事務所コラム
審査請求制度の概説③
2023.12.15 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【テレワークと事業場外みなし労働時間制】
2024.01.17 これまでの情報配信メール
令和6年4月からの労働条件明示事項の改正  改正に応じた募集時等に明示すべき事項の追加について
2023.12.13 これまでの情報配信メール
裁量労働制の省令・告示の改正、人手不足に対する企業の動向調査について
2023.12.13 大野事務所コラム
在宅勤務中にPCが故障した場合等の勤怠をどう考える?在宅勤務ならば復職可とする診断書が提出された場合の対応は?
2023.12.12 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【研修、自己学習の時間、接待の飲食、ゴルフ、忘年会や歓送迎会は労働時間となるのか?】
2023.12.06 大野事務所コラム
そもそも行動とは??―「人と人との関係性」から人事労務を考える㉚
2023.11.29 大野事務所コラム
事業場外労働の協定は締結しない方がよい?
2023.11.28 これまでの情報配信メール
多様な人材が活躍できる職場環境づくりに向けて、副業者の就業実態に関する調査について
2023.11.22 大野事務所コラム
公的年金制度の改正と確定拠出年金
2023.11.17 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【試用期間中の解雇・本採用拒否は容易にできるのか】
2023.11.15 大野事務所コラム
出来高払制(歩合給制、請負給制)給与における割増賃金を考える
HOME
事務所の特徴ABOUT US
業務内容BUSINESS
事務所紹介OFFICE
報酬基準PLAN
DOWNLOAD
CONTACT
pagetop