ニュース&コラムニュース&コラム

TOP大野事務所コラムMBO?KPI?OKR?-「人と人との関係性」から人事労務を考える⑫

MBO?KPI?OKR?-「人と人との関係性」から人事労務を考える⑫

【2026年5月1日更新】

大野事務所の今泉です。

 

従業員エンゲージメントに関連する本日の話題ですが、表題にピンと来られた方もたくさんいらっしゃると思います。「人事評価」に関連する略語(?)ですね。MBOはなじみの深い言葉でしょうし、最近はOKRという手法が注目されています。

 

従業員エンゲージメントを高める上で、公正・公平な人事評価は非常に重要といわれています。公正・公平という概念は社員の納得性という観点から導かれるものですが、「公正・公平って可能なの?」という疑問がすぐに湧き上がるかもしれません。確かに「公正・公平」の定義づけも難しく、最近ではシステム化も著しいとはいえ最終的には人が担う以上、人事評価から主観性を完全に排除することはほぼ不可能でしょう。それでも、どうすれば社員が納得のいく人事評価が可能となるのか、特に査定の時期になると、このような悩みが頭をよぎる担当者も多いのではないでしょうか。

 

表題に掲げた3つの略語にて表される考え方・手法は、人事評価そのものではありませんが、人事評価に結びつけることによって、より納得性の高いものを実現しようとするものといえます。それぞれについて簡単に説明すると次のようになります。

 

◆ MBO:Management By Objectives・・・目標による管理

⇒組織の方向性を踏まえた目標設定を行うことで、組織と個人の目標をリンクさせ、自律的に仕事をさせることを目的とする。

 目標と結果が明確になることで人事評価に活用される。

 

◆ KPI:Key Performance Indicator・・・重要業績評価指標

⇒組織の目標達成状況を定点観測することで、目標達成に向けた組織のパフォーマンスの動向を把握することを目的とする。

 評価者と、被評価者との間で目標に関する合意を結び、それに対する達成度合いで評価をする。

 

◆ OKR:Objective and Key Result・・・目標と主要な結果

⇒それぞれを企業・部門・チーム・個人という階層ごとにObjectives(目標)とKey Results(主要な結果)を設定する。

 その目標をマネジメントすることを通じて、高い目標を達成するための一種の目標管理。

 

ここでは、比較的新しいOKRという概念について、もう少し触れたいと思います。

これは「Objective and Key Result」という正式名称からも分かるように「O(目標)」と「KR(主要な結果)」で分けられるものです。ここでの「O(目標)」は、より大きくチャレンジングなテーマを設定します。具体的には6070%の達成度となるような高いレベルで目標を設定することが望ましいとされています。高い「O(目標)」を掲げることで、社員の自律的な挑戦や成長を促進させることができ、また、社員は企業全体の「O(目標)」を理解した上で、個人の「O(目標)」を設定するので、目指すべき目標が明確になり、さらには企業と社員の目標がリンクすることになります。

 

一方、「KR(主要な結果)」ですが、一つの「O(目標)」に対して35つ程度の定量的な指標を設定します。「O(目標)」を達成するための指標ということになりますが、例えば、新規顧客獲得数○○件とか、残業を平均○○時間削減、といった定量的なものが挙げられます。

これらは前述のとおり各階層(企業レベルから個人レベルまで)に設定されます。

この達成度合いを比較的短いスパンで評価(あくまで目標の達成度合いの評価であり、人事評価ではありません。)、スコアリングなどを行いレビュー、フィードバックする、という一連の流れがOKRの運用ということになります。

 

これにより、企業としての目標(ビジョンといっても良いかもしれません)を浸透させることができること、また「KR(主要な結果)」に直接的に影響のあるタスクが分かりやすくなる結果、優先順位が明確となることがメリットとして挙げられます。

もちろん、社員が同じ目標と結果を共有しているため、企業全体の動きが具体的にイメージできるようになり、組織内のコミュニケーションを活性化させることが期待できるでしょう。また、それぞれの貢献度をスコアリングなどで可視化することにより企業への貢献意欲が上がり、結果として従業員エンゲージメントの向上にも資する、というわけです。

ですので、これらのことからすると、人事評価というよりどちらかというと組織マネジメントの手法といった方が良いでしょう。

 

ただ、「O(目標)」の達成に至る「プロセス」や進捗に貢献したアウトプットを人事評価の対象とすることは可能であり、OKRが持つ透明性を活かしつつ、人事評価制度の運用を行っている企業も存在しています。

 

さて、これら人事評価にまつわる手法は、どれが優れているか、という問題ではありません。それぞれの会社に違いがあり、企業風土や文化が異なるように会社の数だけ人事評価制度はあっていいはずですし、そうあるべきであると考えます。重要なのは、その会社にマッチした制度とすることでしょう。これらの手法もそのことを実現するための手段でしかありません。この点、会社にマッチした制度とするためには、関係部署(人事部など)だけで人事評価制度を作らない方が良いと考えています。なぜなら実際に評価する者、評価される者が制度構築にかかわらないと概念だけが先に立ってしまい、頭でっかちなものができてしまうからです。

最終的な仕上げは関係部署で行えばよいでしょうが、素案段階だけでもいいので評価者や被評価者も含めた人事制度検討プロジェクトを立ち上げて関わらせる、そうすることにより、納得性の高い人事評価制度が生まれる可能性が広がるように思えます。もちろん、これに関わった者は、従業員エンゲージメントが向上するのではないでしょうか。

 

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

執筆者:今泉

今泉 叔徳

今泉 叔徳 特定社会保険労務士

パートナー社員

群馬県桐生市出身。東京都立大学法学部法律学科卒業。
人事労務関係の課題解決の糸口としてコミュニケーションや対話の充実があるのではないかと考え、これにまつわるテーマでコラムを書いてみようと思い立ちました。日頃の業務とはちょっと異なる分野の内容ですので、ぎこちない表現となってしまっていたりすることはご了承ください。
休日には地元の少年サッカーチームでコーチ(ボランティア)をやっていて、こども達との「コミュニケーション」を通じて、リフレッシュを図っています。

その他のコラム

過去のニュース

ニュースリリース

2026.08.01 大野事務所コラム
賃金未払いに伴う遅延利息(遅延損害金)を考える
2026.07.28 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【労災保険の基礎知識―業務災害と通勤災害について(前編:業務災害)】
2026.07.28 これまでの情報配信メール
カスハラ対策および求職者等セクハラ対策の義務化について
2026.07.21 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【採用面接時に応募者の健康状態を確認しても問題はないか】
2026.07.21 大野事務所コラム
飲み会での事故は労災になるのか ~裁決例から見る「業務性」の判断~
2026.07.11 大野事務所コラム
業務災害による休業の最初の3日間に所定休日が含まれる場合の労基法上の休業補償の考え方は?
2026.07.10 これまでの情報配信メール
労働者数50人未満の事業場にもストレスチェックが義務化されます
2026.07.01 ニュース
「ビジネスと人権」セミナー開催のご案内【2026年7月29日(水)】
2026.07.01 ニュース
当事務所スタッフが労務行政主催セミナーに登壇いたします【2026年7月29日(水)】
2026.07.01 大野事務所コラム
学ぶことを棄てる⁉ ―「人と人との関係性」から人事労務を考える㊼
2026.06.30 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【健康診断について】
2026.06.26 これまでの情報配信メール
令和8年度の算定基礎届の提出について、熱中症の予防対策について
2026.06.21 大野事務所コラム
退職給付金って何?
2026.06.12 これまでの情報配信メール
同一労働同一賃金に関する施行規則と告示の改正、 特定在留カード等交付申請について
2026.06.11 大野事務所コラム
同一労働同一賃金関連の法改正動向
2026.06.01 大野事務所コラム
懲戒処分における併科と二重処罰を考える
2026.05.29 これまでの情報配信メール
社会保険適用拡大特設サイトリニューアル・保険料調整制度のご案内(令和8年10月施行)
2026.05.28 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【1か月単位の変形労働時間制の基本と運用上の留意点(後編:運用上の留意点)】
2026.05.21 大野事務所コラム
労災裁決例から読む~出来事は単体で評価されていない~
2026.05.15 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【私傷病休職の発令】
2026.05.14 これまでの情報配信メール
労働保険年度更新に係るお知らせ・通勤手当等の非課税限度額の改正について
2026.05.11 大野事務所コラム
【令和8年度地方労働行政運営方針】
2026.05.01 大野事務所コラム
対話と議論の違い―「人と人との関係性」から人事労務を考える㊻
2026.04.27 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【1か月単位の変形労働時間制の基本と運用上の留意点(前編:制度の概要と導入のポイント)】
2026.04.25 これまでの情報配信メール
治療と就業の両立支援指針について
2026.04.21 大野事務所コラム
月給制における賃金支払基礎日数
2026.04.15 これまでの情報配信メール
障害者の法定雇用率引上げ・国民年金第1号被保険者の育児期間に係る国民年金保険料免除制度・法人の役員の被保険者資格の取扱いについて
2026.04.11 大野事務所コラム
2026年度法改正の動向(その2)
2026.04.01 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【在宅勤務の労務管理について】
2026.04.01 大野事務所コラム
月給日給者の平均賃金額を考える
2026.03.26 これまでの情報配信メール
健康保険・厚生年金保険における現物給与価額の改正について・雇用保険料率、労災保険率について
2026.03.21 大野事務所コラム
労災裁決例から読む「叱責」と「パワハラ」の境界線
2026.03.19 ニュース
2026春季大野事務所定例セミナーを開催いたしました
2026.03.17 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【会社のSNS対策とモニタリング】
2026.03.15 これまでの情報配信メール
子ども・子育て支援金制度について・協会けんぽの健康保険料率および介護保険料率について
2026.03.11 大野事務所コラム
社会保険に遡及加入した場合の遡及分の社会保険料は当然に給与から控除できるのか?
2026.03.09 ニュース
令和8年度施行 労働関係・社会保険改正のチェックポイント
2026.03.01 大野事務所コラム
「ビジネスと人権」はこれからの企業活動の下地―「人と人との関係性」から人事労務を考える㊺
2026.02.26 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【給与からの控除に関する基本的なルールと留意点】
2026.02.21 これまでの情報配信メール
働く女性の健康管理について
HOME
事務所の特徴ABOUT US
業務内容BUSINESS
事務所紹介OFFICE
報酬基準PLAN
DOWNLOAD
CONTACT
pagetop