TOP大野事務所コラム新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金に見る雇用契約のあり方

新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金に見る雇用契約のあり方

こんにちは。大野事務所の深田です。

 

昨年来の新型コロナ感染拡大を受け、労働分野でも様々な施策が講じられてきましたが、その中でも「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」(以下、休業支援金等)は特異な性質を持つものではないでしょうか。

 

この制度は、主に以下2つの要件に当てはまる労働者に、休業前賃金の8割(日額上限11,000円)を休業実績に応じて支給するものです(事業主の負担は無し)。

① 令和241日から緊急事態宣言が全国で解除された月の翌月末までに、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業主の指示により休業した中小事業主の労働者

② その休業に対する賃金(休業手当)を受けることができない場合

 

要件①にあるとおり、元々は中小事業主に雇用される労働者を対象としてスタートした仕組みなのですが、大企業に雇用されるシフト労働者等(労働契約上、労働日が明確でない方(シフト制、日々雇用、登録型派遣))も一定範囲で対象に加えられることが226日に公表されています。

 

ところで、新型コロナの影響により事業主の判断で労働者を休業させる場合、基本的には多くのケースにおいて労働基準法上の休業手当の支払いを要することになると考えられるところ、この休業支援金等は休業手当を受けることができない場合に支給するという立て付けになっています。

この点、Q&Aを見てみると、「労働基準法上の休業手当支払義務の有無にかかわらず、労働条件通知書等のほか休業前の就労の実態なども踏まえて、労働者と事業主双方において事業主の指示で休業したと認識が一致した上で支給要件確認書を作成すれば、支援金・給付金の対象となる休業として申請することが可能です。」との記載があります。さらに、「労働基準法第26条の休業手当の支払義務が認められる事案においては、雇用する労働者が休業支援金を受給した場合でも、それによって同条の休業手当の支払義務は免除されないことにもご留意ください。」とも書かれています。

 

とはいえ現実問題として、休業支援金等を受給した方々に対して今後何らかの形で休業手当の支払いを事業主に履行させるようなことがあったとした場合、受給済みの休業支援金等を返納させることになるのでしょうか。あるいは、事業主が本来は支払うべきものだったという理屈で、国に対して弁済のようなことを行わせるのでしょうか。前者はいわば救済の対象であった方々にそのような負担を課すというのはあまりに非現実的でしょうし、後者にしても制度紹介のリーフレットで「事業主の負担はありません」と謳っている以上、後になって負担を求めるというのも難しいところでしょう。このように、労基法第26条との兼ね合いでは矛盾を抱えている制度ではあるのですが、今般のような緊急事態においてはやむを得ない部分も大いにあることはもちろん理解できます。

 

一方で、そもそもの問題として、とりわけパートタイム労働者などの「休業」の捉え方が課題として浮き彫りになっているように見受けられます。休業は所定労働日に休ませることを指すわけですが、雇用契約書では週の勤務日数だけを定めておき、具体的な勤務日はシフト表によって毎月特定するとしている場合に、例えば「3月の個々人のシフトがまだ確定していない段階で3月は事業所として営業停止なり営業日数削減なりをすることを決めたから、休業には当たらない」といった考え方の是非です。

 

具体的な勤務日がまだ決まっていないというのは確かにそのとおりであるにしても、雇用契約において「週●日」という勤務が合意されている以上は、会社としてはそれを履行する必要があります。新型コロナのことがなければ雇用契約の内容に沿って勤務が組まれていたはずのものが、新型コロナの影響で実現不可能になったとすれば、(純粋に会社の責任とも言い切れないという心情的な面は分かるものの)まさに休業に他ならないといえるでしょう。また、例えば週3日勤務として契約していたものを、シフトが決まっていない段階で「来月からは週1日でよろしく」と一方的に言えるかといえば、同意を得て契約内容自体を変更することが必要となります。

 

法的にはこうした結論にならざるを得ませんが、雇用契約において勤務日や休日を必ずしも明確にできない事情も現実にはあるでしょう。そのような場合も、どのような合意がなされているのかということについて入り口の段階で行き違いのないようにすることが肝要だといえるところ、その点は会社側のみならず労働者側も意識を持って向き合うことが大切ではないでしょうか。

 

執筆者:深田

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