TOP大野事務所コラム再休職後の休職期間の上限をどのように考えるか?②

再休職後の休職期間の上限をどのように考えるか?②

こんにちは、大野事務所の土岐です。

 

前回に引き続き、再休職後の休職期間の上限をどのように考えればよいか、もう一件ご相談をいただきましたので、今回はこちらを取り上げたいと思います。休職に関して就業規則に次の定めがあった場合の例で検討します。

 

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<休職事由>

第✕✕条 社員が次の各号の一に該当するときは休職とする。

・業務外の傷病により欠勤が継続して1ヶ月以上に及んだとき。

 

<休職期間に関する規定>

第✕✕条 私傷病による場合の休職期間は、次のとおりとする。

(表)【2020331日まで】

勤続年数

1年未満

1年以上

休職期間

6ヶ月

1年

 

 ↓

 

(表)【202041日以降】

勤続年数

1年未満

1年以上

休職期間

3ヶ月

6ヶ月

 

<再休職に関する規定>

・私傷病による休職から復職した者が、再度私傷病による休職事由に該当し、会社が休職の適用を命じた場合の休職期間は、上記(表)に定める休職期間から、既に休職した期間を減じた期間とする。この場合であって、休職の原因となる業務外の傷病が復職後1年以内に再発したものであると認められるときには、欠勤開始時点から直ちに休職とする。

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今回のご相談の概要は次のとおりです。

 

<概要>

①勤続1年以上の社員が、202021日から10月末日までの9ヶ月間休職した(休職期間の上限は1年)。

20204月に休職期間の上限に関する改定があった(上記(表)参照)。

2020111日に復職した。

20211月より欠勤がちとなり、会社は再休職事由に該当すると判断した。

⑤会社としては改定後の規定(休職期間の上限6ヶ月)を適用し、当該社員は既に9ヶ月の休職を取得していることから、残余の休職期間はなく、休職期間満了による退職となるものと考えている。

 

上記⑤の考えに問題はないか、というご相談なのですが、ポイントは、「当該社員の再休職を含む休職期間の上限は、どの時点で確定するのか」ということになると私は考えました。

 

当初の休職の状況から整理しますと、当該社員は休職中に休職期間の上限に関する規定が改定されていますが、既に休職をしている社員は、その休職に入った当時の規定によって休職期間の上限が確定されると考えられますので、当該規定の変更に伴って、変更後の規定が当然に適用されるとする考え方(つまり、このケースでは1年⇒6ヶ月)は不合理といえるでしょう。

仮に当該社員へ規定改定に関する説明を行い、休職期間の上限が短くなることの同意を得ることができれば良いのでしょうが、なかなか難しいのではないでしょうか。

この点、今回のご相談のケースでも、20204月の規定改定の際には当該社員に対する休職期間の上限に変更はなく、「1年」としています。

 

では、再休職となった場合に適用される休職期間の上限について考えてみます。

休職制度は法で定められたものではなく、会社独自の設計が可能となりますので、就業規則の規定による、ということになるのは前回も申し上げたとおりです。規定から明確に読み取ることができない場合には、解釈の問題となります。

 

この点、上記の<再休職に関する規定>に「上記(表)に定める休職期間から、既に休職した期間を減じた期間とする。」とされていることから、再休職の場合であっても、当初の休職時点において当該社員の休職期間の上限は確定するものと考えられ、改定前の規定によって1年間の休職が可能であり、今回のケースでは既に9か月を取得していることから、残り3か月の休職の取得を可とすることが妥当、という結論に私は至りました。

 

もちろん、既に述べたように、就業規則の改定時あるいは復職時など、事前に「再休職となる場合には、改定後の規定に基づく休職期間の上限が適用される」旨の説明がきちんとなされており、これについて当該社員がこれに納得・同意し、会社の考えと認識が一致していれば当然問題はありません。

 

以上となりますが、規定のみから明確な回答を導けるものではない場合には、結論に至るまでの会社の考えを整理してご説明することにより、社員のみなさんとの認識の齟齬によるトラブルを防ぐことに繋がると考えています。

 

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

 

執筆者:土岐

 

土岐 紀文

土岐 紀文 特定社会保険労務士

第3事業部 部長

23歳のときに地元千葉の社労士事務所にて社労士業務の基礎を学び、その後大野事務所に入所しまして10数年になります。

現在はアドバイザリー業務を軸に、手続きおよび給与計算業務にも従事しています。お客様のご相談には法令等の解釈を踏まえたうえで、お客様それぞれに合った適切な運用ができるようなアドバイスを常に心がけております。

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