人材版伊藤レポート(2.0)
こんにちは、大野事務所の土岐です。
すっきりしない空模様の日が続いていますね。
さて、本日は経済産業省が取りまとめた「人材版伊藤レポート(2.0)」を採り上げたいと思います。
経済産業省では、持続的な企業価値の向上に向けて経営戦略と連動した人材戦略をどう実践するかといった点をまとめた「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会報告書~人材版伊藤レポート~(以下、レポート)」を2020年9月に公表しました(座長:伊藤邦雄氏、一橋大学CFO教育センター長)。
この中で「人材戦略に求められる3つの視点と5つの共通要素」として提唱されている「3P・5Fモデル(【図】参照)」に関して、「実践事例集」を追加する形でまとめた「人的資本経営の実現に向けた検討会報告書~人材版伊藤レポート2.0~(以下、レポート2.0)」が今年5月に公表されています(3P・5Fモデルの詳細は各レポートの本文をご参照いただきたいと思います)。
【図】
【出典】 経済産業省 人材版伊藤レポート2.0
レポート2.0では狙いとして次の点を挙げ、「本報告書(筆者注、レポート2.0)をアイディアの引き出しとし、経営陣が人的資本経営へと向かう変革を主導していくことが期待される」と述べています。
・レポートが示した内容を更に深掘り・高度化し、特に「3つの視点・5つの共通要素」という枠組みに基づいて、それぞれの視点や共通要素を人的資本経営で具体化させようとする際に、実行に移すべき取組、およびその取組を進める上でのポイントや有効となる工夫を示すものであること
・「人的資本」の重要性を認識するとともに、人的資本経営という変革を、どう具体化し、実践に移していくかを主眼とし、それに有用となるアイディアを提示するものであること
・全ての項目にチェックリスト的に取り組むことを求めるものではなく、事業内容や置かれた環境によって、有効な打ち手は異なること
このレポート2.0では経営戦略と人材戦略を連動させるための各取組みについて「概要」、「重要性」および「取組みを進める上で有効な工夫」が実例を踏まえて紹介されています。大部分はCEO、CHRO(最高人事・人材責任者)に関して触れられており、その役割をどのように担い、推進するのかといったものとなっていますので内容的には簡単なものではないのかもしれません。
ただ、人事等の実務担当者やその他の従業員の視点からも参考になる部分があると思います。特に「リスキル・学び直し」や「時間や場所にとらわれない働き方」に関しては最近目にすることの多いワードではないでしょうか。この点に関してレポート2.0が述べている内容を以下に紹介します。
「6.リスキル・学び直しのための取組–(1)組織として不足しているスキル・専門性の特定」の項に関しては、従業員側も自身が不足しているスキルや強化すべき専門性を明確化することで、より効果が得られるでしょう。さらに「(3)リスキルと処遇や報酬の連動」の項にありますように、キャリアプランや報酬等の処遇に反映されることで、リスキル・学び直しに意欲的に取り組めるようになるのではないでしょうか。
当たり前と言われればそれまでなのかもしれませんが、実践するのはなかなか難しいと思います。会社と従業員のそれぞれが行動に移せるかどうかがカギとなりそうです。
その他にも、「なるほど」と思う点が皆さんそれぞれあるのではないかと思います。各レポートで述べられている先進的な取組をしている会社がどのような考え方に基づき行動しているか、どのような人材を求めているか、その人材にどうあってほしいか(その会社の従業員としてどのようなことを意識して行動すると良いか)などの具体的なイメージが浮かびやすいのではないかと筆者は考えた次第です。
近頃は労働社会保険諸法令に関するご相談の他にも、人事施策などに関するご相談も増えてきているように個人的には思います。このような考え方の概論や実例を交えた資料にも目を通し、頭の中を整理しておくことで、いざご相談があった際にはご提案・アドバイスができるよう活かしたいものです。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
<参考URL>
■経済産業省 「人材版伊藤レポート2.0」を取りまとめました
https://www.meti.go.jp/press/2022/05/20220513001/20220513001.html
■経済産業省 人的資本経営 ~人材の価値を最大限に引き出す~
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinteki_shihon/index.html
執筆者:土岐
土岐 紀文 特定社会保険労務士
幕張第2事業部 グループリーダー
23歳のときに地元千葉の社労士事務所にて社労士業務の基礎を学び、その後大野事務所に入所しまして10数年になります。
現在はアドバイザリー業務を軸に、手続きおよび給与計算業務にも従事しています。お客様のご相談には法令等の解釈を踏まえたうえで、お客様それぞれに合った適切な運用ができるようなアドバイスを常に心がけております。
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