TOP大野事務所コラム改正育児・介護休業法に対応した規定例が公開されました

改正育児・介護休業法に対応した規定例が公開されました

こんにちは。大野事務所の深田です。

 

これまでにもコラムで何度か触れてきた育児・介護休業法の改正ですが、私どもとしても早く目にしたかった規定例が厚生労働省から公開されました。

思っていたよりも早く公開されたことは大変有難い一方で、改正法の施行は来年4月と10月に分かれているところ双方の改正内容が何ら注釈もなくまとめて反映されている点、また、どの部分が改定されたのかが明確に示されていない点はいささか残念に思います。かたや、制度の個別周知や休業等の取得意向確認に関する社内書式例が示されたことは非常に参考となるかと思います。

 

さて、育児・介護休業については法律からして非常に難解であり、そのため規程も自ずと複雑なものとならざるを得ません。今回の法改正は育休の分割取得や出生時育休(産後パパ育休)など大きな改正事項が含まれていることから規程のボリュームが増え、更に読みづらくなることは否めませんが、私の目から見て特に分かりづらいのではないかと思われた規定例の改正部分について解説いたします。

 

16か月に達するまでの育休に係る規定

<前略>

3 次のいずれにも該当する従業員は、子が16か月に達するまでの間で必要な日数について育児休業をすることができる。なお、育児休業を開始しようとする日は、原則として子の1歳の誕生日に限るものとする。ただし、配偶者が育児・介護休業法第5条第3項(本項)に基づく休業を子の1歳の誕生日から開始する場合は、配偶者の育児休業終了予定日の翌日以前の日を開始日とすることができる。

イ 従業員又は配偶者が原則として子の1歳の誕生日の前日に育児休業をしていること

ロ 次のいずれかの事情があること

(ア) 保育所等に入所を希望しているが、入所できない場合

(イ) 従業員の配偶者であって育児休業の対象となる子の親であり、1歳以降育児に当たる予定であった者が、死亡、負傷、疾病等の事情により子を養育することが困難になった場合

ハ 子の1歳の誕生日以降に本項の休業をしたことがないこと

4 前項にかかわらず、産前・産後休業、出生時育児休業、介護休業又は新たな育児休業が始まったことにより本条第1項に基づく休業(配偶者の死亡等特別な事情による3回目以降の休業を含む)が終了し、終了事由である産前・産後休業等に係る子又は介護休業に係る対象家族が死亡等した従業員は、子が16か月に達するまでの間で必要な日数について育児休業をすることができる。

<後略>

※下線を引いた部分が今回新たに追加された規定です。

 

現行法上、16か月に達するまでの育休の開始日は子の1歳の誕生日(パパ・ママ育休プラスを利用している場合には当該休業終了日の翌日。以下「原則の開始日」といいます。)に限られていますが、その開始日を柔軟化することで期間途中からの育休取得を可能とし、これにより夫婦交代での休業といったこともできるようにしたのが今回の改正点です。

 

原則の開始日より後の日を開始日とできる条件は、「申出をする労働者の配偶者が同項の規定による申出により育児休業をする場合」(育児・介護休業法第5条第6項第1号)です。「同項の規定による申出」というのは、16か月に達するまでの育休についての申出ですので、つまりは「配偶者が先に16か月に達するまでの育休をしている場合」ということになります。先に育休をしているということは、その育休の開始日は自ずと原則の開始日となるわけでして、そのため厚労省の規定例では「配偶者が育児・介護休業法第5条第3項(本項)に基づく休業を子の1歳の誕生日から開始する場合」という表現をしています(厳密には1歳の誕生日に限られず、先にも書いたとおりパパ・ママ育休プラスを利用している場合にはパパ・ママ育休プラスの終了日の翌日となります)。

 

その場合の開始日は、「配偶者の育児休業終了予定日の翌日以前の日」とすることができますので、配偶者の育休期間中に開始することで夫婦同時に育休をとることもできますし、配偶者の育休終了日の翌日を開始日とすることで夫婦交代での育休とすることもできます。

 

また、16か月に達するまでの育休の申出要件として、規定例にあるとおり「子の1歳の誕生日以降に本項の休業をしたことがないこと」が追加されました。現行法においては休業開始日が原則の開始日に限定されていることからも、再度の申出は想定されていないことになりますが、今回の法改正により一定の要件に該当した場合には例外的に再度の申出を可能とするため、「本項の休業をしたことがない」ということが原則の要件として明確に規定されることとなりました。これにより、16か月に達するまでの育休の申出要件は、次のとおりとなります(同法第5条第3項)。

 

① 従業員または配偶者が、原則の開始日の前日に育児休業をしている場合。

② 休業することが雇用の継続のために特に必要と認められる場合として厚生労働省令で定める場合(保育所に入所できない場合など)に該当している場合。

③ 子の16か月到達日後の期間において、育児休業をしたことがない場合。

 

以上の3つの要件のいずれにも該当している場合に申出が可能となりますが、「厚生労働省令で定める特別の事情がある場合」には、要件②のみに該当すれば申出が可能となります(同法第5条第3項)。そして、その「特別の事情」というのが、「産前産後休業、出生時育児休業、介護休業または新たな育児休業が始まったことにより育児休業が終了したが、終了事由である産前産後休業等に係る子または介護休業に係る対象家族が死亡等した場合」です(育児・介護休業法施行規則第5条の2)。

 

この「特別の事情」による申出を規定しているのが、規定例の第4項です。第2子の妊娠等を理由として子が1歳になる前に育休を終了したものの(=要件①を満たさない)、特別の事情が発生したので1歳から16か月までの休業の申出を認めるとするものです。「前項にかかわらず」とすることで、第3項に定める申出要件のすべてを満たすことを要さないとしていることが読み取れます。しかし、この場合も要件②に該当していることは必要なはずですが、規定例を一読する限りでは要件②の該当有無のことにまで触れていないようにも見受けられます。この点に関しては、この「特別の事情」自体が要件②にある「休業することが雇用の継続のために特に必要と認められる場合として厚生労働省令で定める場合」の一つなのです。そのため、保育所に入所できないなどの要件を持ち出すまでもなく申出が可能であるということを踏まえての規定例だといえます。

 

そして、要件②のみに該当すれば申出が可能となるケースが、規定例でもう一つ定められています。

 

▼育休の申出の手続に係る規定

<前略>

3 第2条第4項又は第5項に基づく休業の申出は、次のいずれかに該当する場合を除き、一子につき1回限りとする。

1)第2条第4項又は第5項に基づく休業をした者が本条第1項後段の申出をしようとする場合

2)産前・産後休業、出生時育児休業、介護休業又は新たな育児休業が始まったことにより第2条第4項又は第5項に基づく育児休業が終了したが、終了事由である産前・産後休業等に係る子又は介護休業に係る対象家族が死亡等した場合

<後略>

※下線を引いた部分が今回新たに追加された規定です。

 

先ほどは要件①を満たしていないケースでしたが、こちらは要件③を満たしていないケース(第3項第2号)です。第2子の妊娠等を理由として1歳から16か月までの育休を終了したものの(=要件③を満たさない)、特別の事情が発生したので再度の申出を認めるとするものです。要件②の該当有無のことにまで触れていないという点は、先ほどと同様です。

 

なお、以上の取り扱いは、16か月から2歳までの育児休業についても同様となります。

 

今回ご紹介した改正点は来年10月からの施行となりますが、まずは来年4月の改正が控えています。4月の改正では規程改定の対応ということではわずかですが(有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和)、育児休業を取得しやすい雇用環境の整備(制度と育休取得促進に関する方針の周知など)や、妊娠・出産(本人または配偶者)の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の対応が新たに義務付けられます。冒頭でも書きましたように、これらの対応に関する書式例も厚生労働省のホームページで公開されていますので、今のうちから少しずつ準備を進めておきたいですね。

 

【参考URL】育児・介護休業法について(厚生労働省)

育児・介護休業法について|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

 

執筆者:深田

深田 俊彦

深田 俊彦 特定社会保険労務士

労務相談室長 管理事業部長/執行役員

社会人1年目のときの上司が元労働基準監督官だったことが、労働分野へ関心を寄せるきっかけとなりました。
日頃からスピード感を持って分かりやすくまとめ、分かりやすく伝えることを心掛けています。また、母の「人間は物事が調子良く進んでいるときに感謝の気持ちを忘れがちである」という言葉を、日常生活でも仕事の上でも大切にしています。

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