TOP大野事務所コラム厚生年金保険の資格喪失手続きの遅滞にご注意を

厚生年金保険の資格喪失手続きの遅滞にご注意を

こんにちは。大野事務所の高田です。

 

さて、いきなりの質問ですが、被保険者の資格取得手続きや資格喪失手続きを行う場合において、健康保険(組合健保の場合)、厚生年金保険、雇用保険の3つのうち、どの手続きが特に急ぎだと思われますでしょうか?
もっとも、それぞれの法で定められた届け出期限を遵守するのは当然なのですが、あくまでも実務の観点の話としてお考え頂きたいと思います。

 

取得手続きは、健康保険の被保険者証を早く渡さなければならない関係で健康保険?
喪失手続きは、離職票を渡さなければならない関係で雇用保険?また、退職者が任意継続を希望しているケースでは健康保険も?
多くの方が概ね以上のような認識なのではないかと思います。つまり、厚生年金保険の手続きは、取得、喪失ともにそこまで緊急性が高いものとは思われていないのではないかということです。

 

それでは、厚生年金保険の資格喪失届を遅滞すると、どのような事象が起きるのか皆様ご存知でしょうか?
届け出を遅滞すれば、当然のことながら厚生年金保険に加入しっぱなしの状態になるわけですが、この状態において別の会社からも取得の届け出がなされると、二重加入の状態になってしまうというのが正解です。

 

このような重複加入を排除しないのは、厚生年金保険には「二以上事業所勤務」の形態があるからなのですが、日本年金機構の事務センターでは、具体的に、XさんがA社で厚生年金保険に加入している状態でB社からも取得届が提出された場合、B社の取得届は通常通りに受け付けられ、その内容は機構のシステムに登録されます。なお、この点は後ほどの話に関係してくるのですが、重複して登録されるのはA社、B社のように異なる事業所の場合に限らず、A社で既に加入している状態で更にA社が取得届を提出した場合であっても、2つめの届け出は返戻されずに重複して登録されます。実際には、事務センターから事業主に対して確認が入り、このような事態は回避される可能性もありますが、基本的には登録される流れになっているそうです。

 

以上のように、厚生年金保険の取得届は、重複加入が排除されていないということが今回の話の肝になってきます。
仮にA社がXさんの喪失手続きを失念、遅滞してしまったとしても、後日A社がその事実に気付いて届け出れば、納め過ぎてしまった保険料は還付されますし、Xさん本人にも特段の影響を及ぼす事態にはならないケースが多いかと思います。
ですが、Xさんが在職老齢年金の受給者であった場合には、大変な事態になるかもしれません。皆様もご存知の通り、在職老齢年金の受給者は、「総報酬月額相当額」と「老齢厚生年金の基本月額」を基に年金の支給停止(減額)措置を受けているからです。

 

最近、私の身近で下記のような2つの事案が生じてしまいました。いずれも弁解の余地のない業務上の過失であり、当事者のお二方には多大なるご迷惑をお掛けしてしまった次第ですが、あえて恥を忍んでこの場で披露させて頂きたいと思います。


【事例①】

XさんはA社を6/30付退職し、B社へ7/1付入社した。
A社での標報は30万円、B社での標報は20万円であった。
ところが、A社の手続きを受託している弊所が厚生年金保険の資格喪失届を遅滞してしまった結果、Xさんは7月よりA社とB社とで重複加入している状態(具体的には標報相当額が合計50万円)となり、8月の年金額より大幅な減額を受けることとなった。

 

【事例②】

C社で定年再雇用中のYさんは、4/1付で週5日勤務から週3日勤務に変更となる旨の雇用契約を更新し、これに伴い、標報は30万円から20万円に改定されるはずであった。
ところが、C社の手続きを受託している弊所が、同日得喪手続きのうちの資格喪失届を遅滞してしまった結果、Xさんの4月の標報相当額は合算されて50万円となり、5月の年金額より大幅な減額を受けることとなった。

図1


Xさん、Yさんともに、年金額が増えるものと見込んでいたところに減額の通知が届いたわけですから、大変な驚愕と失望を味わわせられたことは想像に難くありません。勿論、誤って減額措置を受けた年金はその次の支給時において遡及支給されましたが、だからといってそれで済む問題ではありません。当事者のお二方には真摯にお詫びし、幸い何とかご容赦頂いたという事案でした。

 

皆様におかれましても、厚生年金保険の喪失手続きの遅滞にはくれぐれもご注意頂きたいと思います。

 

執筆者:高田

高田 弘人

高田 弘人 特定社会保険労務士

幕張第2事業部 事業部長/執行役員

岐阜県出身。一橋大学経済学部卒業。
大野事務所に入所するまでの約10年間、民間企業の人事労務部門に勤務していました。そのときの経験を基に、企業の人事労務担当者の目線で物事を考えることを大切にしています。クライアントが何を望み、何をお求めになっているのかを常に考え、ご満足いただけるサービスをご提供できる社労士でありたいと思っています。

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