カーネーションと飴(アメ)―「人と人との関係性」から人事労務を考える㉝
こんにちは。大野事務所の今泉です。
5月第2週の日曜日は母の日ですね。母の日にはカーネーションを贈る、というのが一般的とされますが、その由来は、戦場の負傷兵の衛生改善活動を行ったアン・ジャービスの娘、アンナ・ジャービスが、亡き母をしのんで母が好きだった白いカーネーションを祭壇に飾ったことに始まるとされています。最初は白いカーネーションだったんですね。
ちなみに、オーストラリアでは菊の花を贈るのだそうです。我々にはピンときませんが、オーストラリアでは季節が秋だということから、このような風習となったのかもしれませんね。
皆さんは、どのように感謝の気持ちをお伝えになられたでしょうか。
さて、このように感謝を表するのにカーネーションを贈ったり、はたまた「自分へのご褒美」と称して、美味しいものを食べたりバッグを買ったりすることはよくあることです。言葉だけでなく、気持ちや称賛を「ものなど」に託す、ということですね。
こういった「ものなど」はトークンと呼ばれ、日常的に溢れています。先にお話ししたポイントなどもその類といえるでしょう。
これまで、強化について述べてきましたが、強化の機会を増やし、どのように強化を効果的に行うのか、ということは、大きな課題といえます。
その際、このようなトークンをセットにして強化を図ることが効果的であるといえるのは、感覚的にも納得できるでしょう。その感覚的なものをあえて言語化すると、、、
① 見えないものを見える化できる
② 強化を持続できる
ということが挙げられると思います。
まず、①については、「形にする」という言葉にも代表されるように、感謝の気持ちや称賛といった目に見えないものを形にして、見えるものに化体することができるという点で効果的といえます。先のカーネーションやバッグなどの例はもとより、ポイントなども「貯まる」という目に見える形となることで、そのお店での購買が強化されることになります。
そして、②についてですが、(何度も恐縮ですが、)ポイントはリピーター確保のために一役買っています。消費者は少しでも早くメリットを享受したいのでポイントが付くお店で購買することが繰り返されることになりますので、その店を常用する、つまり強化が繰り返される、という効果を生み出すことになります。
当然のことですが、ここにはポイントが貯まる=メリットが得られるという図式が成り立たなくてはなりません。例えば値引きができるとか、欲しい物が貰えるといった消費者にとって魅力的なメリットがないと効果は発揮されないでしょう。このようにトークンによって交換できる魅力的なメリットのことをバックアップ好子といいますが、これをどのようなものにするかは、強化を持続させるためのカギとなりそうです。
ところで、福利厚生の一つとして「カフェテリア・プラン」というものがありますが、これもトークンを上手に活用した一つの方法といえるかもしれません。
カフェテリア・プランとは、社宅などのように会社が決まったものを提供するのではなく、会社によって付与されるカフェテリア・ポイントに応じて、社員が多くのメニューの中から自由に好きなものを選択できる、というものですね。
ポイントの付与方法は会社によって様々であり、勤続に応じて毎年付与されるものが多いと思いますが、一定の成績を収めた者に対する表彰として付与される、といった制度設計もあるでしょう。
カフェテリア・プランの優れたところは、ポイント(トークン)の交換対象(バックアップ好子)をそのポイント数に応じて社員が選択できる、というところだと思います。今では、物以外にもサービスやチケット、さらにはカフェテリア・ポイントを利用したことによりさらにポイントが付与され、他のポイントなどと交換できる、といったものもあるようです。
また、普段であればお金を払ってまで購買することには抵抗があるが、ポイントを使用するのであればそうでもないとか、通常のレベルのサービスを、ポイントを使用することによってワンランク上のものにしてみる、といったことに利用できることもメリットかもしれません。
このようなカフェテリア・プランの特徴が社員のロイヤリティを「強化」するために一役買っているものといえるのではないでしょうか。
一方、特定の(望ましくない)行動を行った場合にポイントを減点する、という方法もあり、これはレスポンスコストと呼ばれます。トークンは強化を出現させる好子なので、レスポンスコストは好子消失の弱化ということができます。ただ、以前述べたような、弱化には「積極性」が失われやすくなる、新しいことにチャレンジしなくなる、効果が持続しない、といったものに加え、効果がないとペナルティーが大きくなりエスカレートする、人を恐れたり、恨んだりすることが起こりやすい、「自尊心」が傷ついた状態に陥りやすいといったデメリットがあるとされるため、あまり使用すべきでない方法とされます。
飴(アメ)と鞭(ムチ)とはよく言いますが、ムチ(=弱化)はメリットに乏しい、ということですね(なお、以前出てきた消去は「アメなし」といえます。)。
ちなみに、ポイントの話ばかりしているため、とてもポイントが好きそうな人間に思われるかもしれませんが、実はどこにどれくらいポイントがあるのかを把握できずに結構無駄にしてしまっている実感があります。。。
こういった散らばったポイントを整理できるアプリなどもあるようですが。。。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
今泉 叔徳 特定社会保険労務士
パートナー社員
群馬県桐生市出身。東京都立大学法学部法律学科卒業。
人事労務関係の課題解決の糸口としてコミュニケーションや対話の充実があるのではないかと考え、これにまつわるテーマでコラムを書いてみようと思い立ちました。日頃の業務とはちょっと異なる分野の内容ですので、ぎこちない表現となってしまっていたりすることはご了承ください。
休日には地元の少年サッカーチームでコーチ(ボランティア)をやっていて、こども達との「コミュニケーション」を通じて、リフレッシュを図っています。
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