TOP大野事務所コラムモチベーション・アップの盲点-「人と人との関係性」から人事労務を考える⑨

モチベーション・アップの盲点-「人と人との関係性」から人事労務を考える⑨

大野事務所の今泉です。今回からタイトルの付け方を変更してみました。いかがでしょうか?

 

さて、前回はモチベーション理論の古典である「マズローの欲求5段階説」と「ハーズバーグの二要因理論」について紹介させていただきました。我々は研究者ではなく実務家ですので、時として理論の学習を怠りがちですが、今回寄稿するにあたり、これらの理論を整理してみて改めて理論に学ぶ重要性を感じました。ちなみに、古典的理論には上記に加えて「マグレガーのXY理論」というものがありますが、これは後日お話しする機会があるでしょう。

 

ところで、モチベーションに関する考え方は何となく分かったとしても次のような疑問が湧き上がります。例えば、、、

「本当にみんながみんな自己実現に向かって進んでいくものだろうか?」

とか、

「お金のみが目的の人だっているのではないだろうか?そういう人にモチベーション向上は望めないのだろうか?」

など。

 

現在では前回紹介した古典的理論を、ときには批判的に克服することで、モチベーションにまつわる様々な課題に対し多様な理論づけが試みられているといえます。ただ、そもそもの話として次のようなことが言えはしないでしょうか。

 

モチベーションが上がったからといって、会社の業績が上がるのか?

 

確かに、社員にはやる気を出してもらいたいですよね。しかし、そのやる気が業務に対するパフォーマンス向上につながるかといえば、必ずしもそうとはいえないと思います。自分の昇進のため同僚を蹴落とし、職場環境を悪化させ、ひいては組織全体のパフォーマンス低下を招く、といった例が簡単に思いつくのではないでしょうか。

 

このようなことが起こる理由は、モチベーションというものが個人にスポットを当てたものだからといえます。つまり、極論すれば自分さえ良ければそれでOKという方向に進んでしまうおそれがあるということになります。そうだとすると、モチベーションの向上を組織パフォーマンス向上に関連付ける取り組みが必要となってきます。もちろん、このことに関しては、様々な概念や手法が提唱されていますが、ここでは会社などの組織と個人との結びつきを意味する「エンゲージメント」について考えてみたいと思います。

 

エンゲージメントは「約束」とか「婚約」といった意味が基本的なものですが、人事労務管理におけるエンゲージメントとは、個人と会社等の組織が互いの成長に貢献し合う関係のことをいう「従業員エンゲージメント」と、仕事に関連するポジティブで充実した心理状態であり、活力、熱意、没頭によって特徴づけられるワーク・エンゲージメント」の二つがあります。

 

今回からは前者の「従業員エンゲージメント」について触れますが、「モチベーション」が個人を中心とした概念であるのに対し、「従業員エンゲージメント」は会社等の組織と個人との双方向の関与を基礎としている点で異なることとなります。また、いわゆる忠誠心ともいえる「ロイヤルティ」とも異なるところとなります。さらに、処遇や職場環境に対する会社の取り組みを評価する「従業員満足度」とも異なります。

「従業員エンゲージメント」は会社等の組織と個人とがお互いに関与しながら、結びつきを強めていく、という点にその特徴があると書きましたが、“エンゲージメントが高い”という場合には、例えば会社でいえば職場環境や労働条件に満足しているだけでなく、仕事に情熱、意欲を持ち、「この会社と共に成長し、発展していくために頑張ろう」というマインドセットになります。

 

では、これを高めるためにはどうすればよいか。

 

ここで重要となるのは「従業員エンゲージメント」が双方向の関与を基礎としている以上、組織側と個人側それぞれもしくは双方に求められることがある、ということです。

 

まず、「信頼感」だと思います。これは会社等の組織側に求められるものとなりますが、個人の側から見たときに信頼できない組織との結びつきは期待できません。ですので、組織としては、個人の信頼を獲得し、これを裏切らないような姿勢・取り組みが重要となってくるでしょう。

 

次に、やはり「コミュニケーション」だと思います。これまでコミュニケーションについて数回にわたりお伝えしてきましたが、ここでも重要なファクターになり得るものでしょう。個人側に求められるのは、円滑なコミュニケーションを個人個人が考え実行していく、ということでしょうし、組織側ではそれを可能にする環境の整備が必要となってきます。

 

さらに、「理念やビジョンの共有」ができることだと思います。

組織の理念・ビジョンや企業文化の重要性を理解させ、浸透が図れなければ、「この組織と共に成長し、発展していくために頑張ろう」というようにはならないでしょう。

以上は未だ抽象的な域を出ない内容でしたが、次回からはより具体的に「従業員エンゲージメント」を高める環境づくりに有効と考えるファクターについて、キーワードを通してお伝えしていきたいと思います。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

執筆者:今泉

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