TOP大野事務所コラムシリーズ 経営労務とコンプライアンス(第2回)

シリーズ 経営労務とコンプライアンス(第2回)

本コラムは、当事務所の代表社員である大野が、2012年に労働新聞に連載寄稿した記事をベースに同社の了解を得て転載するものです。

なお、今回の転載にあたり、必要に応じ適宜原文の加筆・修正を行ってまいります。

 

〇持続する成長

 

属人的経営から組織的経営へと移行していくなかで、いかに企業体質の強化をはかり、組織的経営力を高めていくかが、持続的成長への礎を作っていくうえで決定的に重要なポイントとなる。

 

創業企業の実に60%が設立1年以内で倒産5年以内に80%が倒産といわれる現実を考えれば、ある程度の年数、売上規模を築いて持続してきた企業は、やはり環境に適合して選ばれた能力を持つと評価できる。しかし、いまだに経営に関する判断基準を明文化していないことも多く、その判断基準はすべて経営陣と古参従業員の経験と頭の中にあるのが経営の現状かもしれない。もちろん、経営は理屈だけでできることではなく、決算の数値は既に過去のものである。数字が出てきてから経営のかじ取りをしているようでは致命傷となる。数値を待つまでもなく、その時々に最善と思われる判断を積み重ねて現在まで会社は存続しているのである。しかし、それが全て経営者や古参従業員の頭の中に積み重ねたままでは永続はできない。

 

上述した会社の5年後の生存率20が高いか低いかはわからないが、会社の存続期間が普通30年くらいと世間で言われることが仮に正しいとして、30年間の生存率がかなり厳しい数値であることは想像できる。では、どうするか。

それは、人材を「組織化」し、マネジメント体制を着実に作り上げていくことである。あたりまえのことだが、これが最善の方法である。そのうえで、「組織とその人材マネジメント」を持続的な成長へとつなぐ近道が、内部統制体制を整備することである。

 

さて、生き物たる日本の会社の数はいまどれくらいか。直近の中小企業庁の統計によると、全国の法人企業数は、170万社で、そのうち、上場会社数が3,800社(0.2%)であり、1,000社に23が株式公開を果たしていることになる。

例えば、上場企業の場合には、内部統制体制の構築・運用に関して適用される金融商品取引法がある。これは上場会社を対象にするものだが内部統制のエッセンスは持続的な成長を目指す経営に共通する極めて重要なものである。上場会社というのは、一言でいうと属人的ではない組織的な会社ということあり、極端にいえば誰が社長をやっても安定した経営がなされる組織基盤を持った会社ということである。そうでなければ、投資家は投資しない。「属人的経営から組織的経営への転換」に「人材マネジメントと内部統制体制の確立」を加えてキーワードが出揃った。

 

 

〇組織的経営

 

上場企業は、株式換金性・資金流動性が高まり、企業の成長性や収益の継続性が求められ、事業の独自性、製品・サービスの競争的優位性が求められる。株式公開のハードルは高いが、上場に要求される経営体制は、企業飛躍の契機となるものでもあり参考に価する。例えば、上場に向けては次のような様々な取組みが必要となる。

 

合理的事業計画の立案、予算統制の運用、株主総会、取締役会の法令に基づく運用、組織運営ルールの整備と運用能力の確保、適正な権限委譲、税務会計から企業会計への変更、決算体制の強化(月次決算の迅速化、連結決算体制の導入)、開示体制(透明性と説明責任)の強化、内部統制・監査体制の整備・強化、コンプライアンスの強化、反社会的勢力との関係遮断などがあげられる。その他にも投資家保護のための多くの整備事項があり、その整備度合いを確認するために、取引所等の審査や法令に基づく外部会計監査が実施される。これらは、単なるコストの増加として捉えられがちだが、取組みによっては企業体質がより強化され、コスト以上のメリットを会社は享受できる。いったん不祥事などが発生して信用を失墜した企業事例を想像してみれば十分納得できよう。

 

一般に会社の能力は、「組織メンバーの資質×組織の優秀さ」で示される。

組織メンバーの資質は、人材の知力、スキルなど技能である。では、組織の優秀さとは何か。組織IQ(知能指数)の考え方を見てみよう。

それは組織を「意思決定マシーン」とみなして、組織と組織メンバーとを厳密に区分する。組織の優秀性は、組織メンバーの能力とは別のものであり、その組織IQの測定要素として、外部情報感度、内部情報流通、効果的な意思決定機構、組織フォーカス(組織方針に組織全体が経営資源を投入)、継続的革新を掲げる。

これを援用すると、組織はその構成員とは別個独立のものとして考察できる。組織IQの高い企業は全体的に収益性も高く、人件費を高めることでの収益増加への貢献も高いとの研究がある。逆に組織IQが低い場合には人材への投資は無駄ではないまでも効果を生まないとされるので、上述の①~⑤の組織IQ各要素を高めるべく組織改革を遂行しなければならない。その前提条件は、環境変化を素早く察知する知的組織をつくるという経営者のリーダーシップだとされる。

 

次回以降、会社における組織と人材マネジメントの関係、会社組織の運営と内部統制の仕組みについて考えていく。

 

以上

シリーズ

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本コラムは、当事務所の代表社員である大野が、2012年に労働新聞に連載寄稿した記事をベースに、同社の了解を得て転載したものです。

ガバナンスと内部統制およびコンプライアンスの意味と位置づけを確認し、会社の成長、価値の向上に貢献する「経営労務」について、15回にわたり本コラムにて連載させていただきました。

なお、今回の転載にあたり、必要に応じ適宜原文の加筆・修正を行っております。

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