TOP大野事務所コラム改正育児・介護休業法への対応(規程・労使協定編)

改正育児・介護休業法への対応(規程・労使協定編)

こんにちは。大野事務所の深田です。

 

前回のコラムでは、「改正育児・介護休業法への対応」と題し、国会に提出されている改正法案が成立した場合にどのような実務対応が今後必要となってくるのかということを整理しました。改正法案は524日に可決・成立し、施行日である202541日(一部を除く)に向けていよいよ動き出すこととなります。

 

法改正を受けての実際の運用にあたっては、今後発出される通達などをしっかりと確認する必要がありますが、ひとまず今回のコラムでは規程の改定に影響する改正事項を見ておきたいと思います。

 

【子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充】

 

3歳から小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者に関して、始業時刻等の変更、在宅勤務や所定労働時間の短縮など、労働者が選択可能なものを2以上選択して措置を講じることを義務付ける。

※措置の選択にあたっては、労働組合等の意見を聴かなければならない(現行は規定なし)。

現行法では、「育児休業に関する制度、所定外労働の制限に関する制度、育児のための所定労働時間の短縮措置または始業時刻変更等の措置」に準じて必要な措置を講ずるよう努めなければならないものとされていますが(育児・介護休業法第24条第1項第3号)、選択メニューの一つとして在宅勤務が加わった上で、2以上選択して措置を講じるという形での義務規定に格上げされます。更に、措置の選択にあたっては労働組合(事業所の過半数で組織する労働組合がないときは過半数代表者)の意見を聴くことも求められます。

現在は努力義務であることからも、規程において措置を定めていない(ルール化していない)ケースが多いように思われますが、法改正対応として労働組合等の意見を聴いた上での措置の選択および規定化が必要となります。

 

所定外労働の免除を小学校就学前まで請求可能とする。

現行では3歳に満たない子を養育する労働者を対象とした制度であり、短時間勤務制度を利用できる労働者の範囲とも一致していることから、ある意味での分かりやすさはあったように思われます。この対象者が、小学校就学前の子を養育する労働者にまで拡大しますので、規程の改定が必要となることはもとより、制度利用のニーズを踏まえて業務調整なども見据えなければならないといえます。

 

 

【子の看護休暇制度の見直し】

 

・感染症に伴う学級閉鎖等や子の行事参加(子の入園式、卒園式および入学式を対象)にも利用できるようにする。

・取得事由の拡大に伴い、名称を「子の看護等休暇」に見直す。

・請求できる期間は、小学校3年生修了時までとする。

・労使協定による適用除外の仕組みを見直す。

子の看護休暇については、現行法における対象者である「小学校就学の始期に達するまでの子を養育する者」よりも広い範囲で設定している例も少なからず目にするところですが、法改正により休暇申出の可能時期が小学校3年生修了時まで拡大します。また、休暇の取得事由も拡大することで休暇の名称が変更となることとあわせ、労使協定の締結によって勤続6か月未満の労働者からの休暇申出を拒むことができる仕組みが撤廃されますので(週所定労働日数が2日以下の者についての適用除外は存続)、規程の改定のみならず労使協定の再締結も必要となります。なお、労使協定による適用除外の件については、介護休暇に関しても同様に改正されます。

 

最後に、労使協定の締結そのものについても再確認しておこうと思います。通達では「「協定」の締結は、事業所単位で行われるものであること。ただし、複数の事業所を擁する企業において、各事業所の長ではなく、社長自らが協定を締結し、あるいは、各事業所ごとにみてその事業所の労働者の過半数で組織されている労働組合につき、支部の長ではなく本部の長が協定を締結することも可能であること。」とされており、36協定などと同じく締結単位は事業所ごとが原則となります。一方で、当該通達のただし書きに基づき、労働組合を有する企業の場合に、労働組合員で過半数を構成する事業所の分をまとめて労働組合の本部の長と労使協定を締結することも可能となっています。

 

執筆者:深田

深田 俊彦

深田 俊彦 特定社会保険労務士

労務相談室長 管理事業部長/パートナー社員

社会人1年目のときの上司が元労働基準監督官だったことが、労働分野へ関心を寄せるきっかけとなりました。
日頃からスピード感を持って分かりやすくまとめ、分かりやすく伝えることを心掛けています。また、母の「人間は物事が調子良く進んでいるときに感謝の気持ちを忘れがちである」という言葉を、日常生活でも仕事の上でも大切にしています。

その他のコラム

過去のニュース

ニュースリリース

2024.08.22 ニュース
【正規職員・契約職員・パート職員募集】リクルート情報
2024.10.16 大野事務所コラム
本当に「かぶ」は抜けるのか―「人と人との関係性」から人事労務を考える㊱
2024.10.09 大野事務所コラム
労働者死傷病報告等の電子申請義務化について
2024.10.04 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【年次有給休暇の付与や取得等に関する基本的なルールと留意点(前編)】
2024.10.02 これまでの情報配信メール
労働者死傷病報告の報告事項改正及び電子申請義務化について
2024.10.02 大野事務所コラム
女性活躍推進法の改正動向
2024.09.26 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【社会保険の適用が拡大されます】
2024.09.25 大野事務所コラム
社会保険の同月得喪と2以上勤務を考える
2024.09.18 大野事務所コラム
理想のチーム
2024.09.11 大野事務所コラム
通勤災害における通勤とは②
2024.09.11 これまでの情報配信メール
令和6年度地域別最低賃金額の改定状況について・大規模地震の発生に伴う帰宅困難者等対策のガイドラインについて
2024.09.04 大野事務所コラム
フレックスタイム制適用時における年次有給休暇の時間単位取得と子の看護休暇・介護休暇の時間単位取得
2024.08.28 大野事務所コラム
やっぱり損はしたくない!―「人と人との関係性」から人事労務を考える㉟
2024.08.31 これまでの情報配信メール
「健康保険資格情報のお知らせ及び加入者情報」の送付、マイナンバーカードの健康保険証利用について
2024.08.21 これまでの情報配信メール
雇用保険基本手当日額および高年齢雇用継続給付等の支給限度額変更・令和7年4月1日以降の高年齢雇用継続給付の段階的縮小について
2024.08.21 大野事務所コラム
ライフプラン手当のDC掛金部分を欠勤控除の計算基礎に含めてよいのか?
2024.08.15 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【減給の制裁における労働基準法の制限】
2024.08.10 これまでの情報配信メール
雇用の分野における障害者の差別禁止・合理的配慮の提供義務に係る相談等実績について等
2024.08.07 大野事務所コラム
1か月単位の変形労働時間制における時間外労働の清算
2024.08.02 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【管理監督者の適正性】
2024.07.31 大野事務所コラム
健康情報取扱規程の作成は義務⁈②
2024.07.24 大野事務所コラム
ナレッジは共有してこそ価値がある
2024.08.01 これまでの情報配信メール
2024年 企業の「人材確保・退職代行」に関するアンケート調査 カスタマーハラスメント対策企業マニュアルと事例集
2024.07.19 これまでの情報配信メール
仕事と介護の両立支援に向けた経営者向けガイドライン
2024.07.17 大野事務所コラム
通勤災害における通勤とは①
2024.07.16 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【振替休日と割増賃金】
2024.07.10 大野事務所コラム
これまでの(兼務)出向に関するコラムのご紹介
2024.07.08 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【歩合給に対しても割増賃金は必要か?】
2024.07.03 大野事務所コラム
CHANGE!!―「人と人との関係性」から人事労務を考える㉞
2024.06.26 大野事務所コラム
出生時育児休業による社会保険料免除は1ヶ月分?2ヶ月分?
2024.06.19 大野事務所コラム
改正育児・介護休業法への対応(規程・労使協定編)
2024.06.17 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【社員への貸付金や立替金を給与で相殺できるか】
2024.06.12 大野事務所コラム
株式報酬制度を考える
2024.06.07 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【振替休日と代休の違い】
2024.06.05 大野事務所コラム
As is – To beは切り離せない
2024.05.29 大野事務所コラム
取締役の労働者性②
2024.05.22 大野事務所コラム
兼務出向時に出向元・先で異なる労働時間制度の場合、36協定上の時間外労働はどう考える?
2024.05.21 これまでの情報配信メール
社会保険適用拡大特設サイトのリニューアル・企業の配偶者手当の在り方の検討について
2024.05.17 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【法的に有効となる定額残業制とは】
2024.05.15 大野事務所コラム
カーネーションと飴(アメ)―「人と人との関係性」から人事労務を考える㉝
2024.05.10 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【算定基礎届(定時決定)とその留意点(後編)】
HOME
事務所の特徴ABOUT US
業務内容BUSINESS
事務所紹介OFFICE
報酬基準PLAN
DOWNLOAD
CONTACT
pagetop