TOP大野事務所コラム平均賃金の算定は難しい!?①

平均賃金の算定は難しい!?①

【2026年3月27日更新】

 

こんにちは。大野事務所の土岐と申します。

これまで4人のメンバーが寄稿してきました本コラム、今回は土岐が担当します。私からは、日々の人事労務相談および労働社会保険諸法令の手続き等について、実際の相談事例を基に、興味深いと思ったことや疑問に感じたことなどを述べていきたいと思います。

 

さて、初回は平均賃金の算定に関する話です。今回の新型コロナの影響により休業を余儀なくされたお客様から、労基法第26条に定める休業手当の支払いに際し、その額の計算の基礎となる平均賃金の算定にあたって、多数の相談をいただきました。

 

平均賃金に関しては労基法第12条第1項において原則となる計算方法が規定されており、具体的には「これを算定すべき事由の発生した日(以下、算定事由発生日)以前3箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう」とされています。その他、最低保障に関すること、算定事由発生日の直前の賃金締切日を起算とすること、計算にあたって控除すべき期間、賃金の総額に算入しないものおよび第1項の計算によらない場合の算定方法の例外に関することが第1項ただし書き以下に規定されています。

 

お客様からいただいた相談は、原則の計算方法および最低保障の計算に関するものが多かったのですが、中にはこれまで相談がありそうでなかった事例や、算定方法の根拠が不明で困ってしまうものがありました。その事例の一つを本コラムで紹介したいと思います。

 

  • ●平均賃金の算定対象期間中に使用者の責に帰すべき休業期間が含まれる場合

平均賃金の算定期間中に休業期間がある場合は、その日数およびその期間中の賃金は、平均賃金の算定から控除するものとされています(労基法第12条第3項第3号)。

したがって、休業期間およびその期間に対する休業手当は平均賃金の算定の賃金総額には含めないこととなり、休業期間「以外」の暦日数および賃金額をもって算定することになります。なお、休業期間中に就業規則等に定められた休日が含まれる場合には、休業期間に含むこととされています(平22715日基発07157号)。

 

例えば、基本給(月給)300,000円、通勤費10,000円、賃金締切日︓末日、算定事由発生日︓6/1、休業期間: 5/15/31、就業規則に土・日は休日と定められている場合、3/14/30の賃金総額(620,000円)を暦日数(61日)で除した金額(10,163.93円)が平均賃金となります。

 

さらに休業期間が延長した場合で、7/1を算定事由発生日とすると、4/14/30の賃金総額(31万円)を暦日数(30日)で除した金額(10,333.33円)が平均賃金となります。このように、算定事由発生日が賃金締め日をまたいだ際は再度平均賃金を算定する必要があり、休業者が多数となる場合には、算定にかかる事務担当者の負担は小さくありません。

 

思い起こしてみますと、これまで数日間の休業のために平均賃金を算定するケースはありましたが、1箇月以上にわたり継続的に休業するケースの相談を受けたことがなく、ありそうでなかった事例だと筆者は思いました。

 

また、休業期間が3箇月以上となった場合の算定方法についても合わせて相談をいただきました。

このように、算定事由発生日(の直前の賃金締切日)から遡った3箇月が、全て平均賃金の算定に含めない期間および賃金となる場合には、都道府県労働局長が決定することされており(労基法施行規則第4条前段)、さらに通達では、平均賃金決定基準は次によることとされています(昭22.9.13 発基第17号)。

 

====================

法第12条関係

…(略)…

(4) 施行規則第4条に規定する場合における平均賃金決定基準は次によること。

・施行規則第4条前段の場合は、法第12条第3項第1号乃至第3号の期間の最初の日を以て、平均賃金を算定すべき事由の発生した日とみなすこと。

・前項各号の期間中に当該事業場において、賃金水準の変動が行われた場合には、平均賃金を算定すべき事由の発生した日に当該事業場において、同一業務に従事した労働者の一人平均の賃金額により、これを推算すること。

…(略)…

====================

 

上記の二点目に該当しない場合、一点目に記載のあるとおり、「法第12条第3項第1号乃至第3号の期間の最初の日」、すなわち、今回のケースでは、「休業期間の初日を算定事由発生日」として平均賃金を決定することになります。

 

ちなみに、二点目の「賃金水準の変動が行われた場合」とは、「原則として平均賃金算定事由発生日…(略)…以前3カ月間における当該事業場(例えば工員職員別にする等適当な範囲を定めることができる)の実際支払賃金の総額を労働者の延人員数で除した額と発基第17号法第12条関係4の第2項により平均賃金を算定すべき事由の発生したとみなされる日…(略)…以前3カ月間におけるそれと比較してその差が概ね10%以上ある場合をいうこと。」とされています(昭26.3.26基発184号、昭33.2.13基発90号)。

 

一読しただけではわかりづらいのですが、つまり、「本来の算定事由発生日と、休業期間の初日を算定事由発生日としたときの1人あたり賃金を比較し、当該金額の差異が概ね10%以上となる場合」と読み取れます。

さらに、同通達では「1人平均の賃金額によりこれを推算する」および「同一業務に従事した労働者」についても述べられているのですが、前者については特に難解です(興味がある方は通達をご確認いただければと思います)。

 

なお、労基法施行規則第4条では「都道府県労働局長の定めるところによる」とありますが、実務上は上記により会社側で計算するのです。たしかに、都道県労働局長(行政側)がそれぞれのケースを個別に決定するのは現実的に無理な話であるのは理解できますが、果たして会社側でこれまでに紹介してきたような通達を読み解き、適正な計算ができるのかについては大いに疑問です。

 

そのために我々社労士がサポートさせていただくのですが、お客様への回答にあたっては、その根拠を確認し、お示しするのが重要であるところ、根拠となる法の条文、通達等の内容および解釈を確認するのは実は大変な場面もあります(特に古い通達は読み解くのが難しいものが多いように思います)。

今回のように一定の根拠があればよいものの、別の相談事例では、算定方法の根拠が明示されていないケースがあったのです。

 

この続きは、次回の私のコラムでお伝えしたいと思います。

 

執筆者:土岐

土岐 紀文

土岐 紀文 特定社会保険労務士

第3事業部 部長

23歳のときに地元千葉の社労士事務所にて社労士業務の基礎を学び、その後大野事務所に入所しまして10数年になります。

現在はアドバイザリー業務を軸に、手続きおよび給与計算業務にも従事しています。お客様のご相談には法令等の解釈を踏まえたうえで、お客様それぞれに合った適切な運用ができるようなアドバイスを常に心がけております。

その他のコラム

過去のニュース

ニュースリリース

2026.05.01 大野事務所コラム
対話と議論の違い―「人と人との関係性」から人事労務を考える㊻
2026.04.27 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【1か月単位の変形労働時間制の基本と運用上の留意点(前編:制度の概要と導入のポイント)】
2026.04.25 これまでの情報配信メール
治療と就業の両立支援指針について
2026.04.21 大野事務所コラム
月給制における賃金支払基礎日数
2026.04.15 これまでの情報配信メール
障害者の法定雇用率引上げ・国民年金第1号被保険者の育児期間に係る国民年金保険料免除制度・法人の役員の被保険者資格の取扱いについて
2026.04.11 大野事務所コラム
2026年度法改正の動向(その2)
2026.04.01 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【在宅勤務の労務管理について】
2026.04.01 大野事務所コラム
月給日給者の平均賃金額を考える
2026.03.26 これまでの情報配信メール
健康保険・厚生年金保険における現物給与価額の改正について・雇用保険料率、労災保険率について
2026.03.21 大野事務所コラム
労災裁決例から読む「叱責」と「パワハラ」の境界線
2026.03.19 ニュース
2026春季大野事務所定例セミナーを開催いたしました
2026.03.17 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【会社のSNS対策とモニタリング】
2026.03.15 これまでの情報配信メール
子ども・子育て支援金制度について・協会けんぽの健康保険料率および介護保険料率について
2026.03.11 大野事務所コラム
社会保険に遡及加入した場合の遡及分の社会保険料は当然に給与から控除できるのか?
2026.03.09 ニュース
令和8年度施行 労働関係・社会保険改正のチェックポイント
2026.03.01 大野事務所コラム
「ビジネスと人権」はこれからの企業活動の下地―「人と人との関係性」から人事労務を考える㊺
2026.02.26 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【給与からの控除に関する基本的なルールと留意点】
2026.02.21 これまでの情報配信メール
働く女性の健康管理について
2026.02.21 大野事務所コラム
食事手当は割増賃金の計算基礎に含める
2026.02.11 これまでの情報配信メール
令和8年度の年金額改定について等・労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律
2026.02.11 大野事務所コラム
2026年度法改正の動向
2026.02.01 大野事務所コラム
フリーランス等へのハラスメント対策を考える
2026.01.21 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【定年後再雇用者の賃金】
2026.01.21 大野事務所コラム
新年のご挨拶とともに、精神障害と業務上疾病をめぐる裁決
2026.01.20 これまでの情報配信メール
令和7年賃金引上げ等の実態に関する調査について
2026.01.11 大野事務所コラム
転勤時に36協定の特別条項の発動回数は通算かリセットか?
2026.01.01 大野事務所コラム
負の影響の防止・軽減から情報開示まで―「人と人との関係性」から人事労務を考える㊹
2025.12.23 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【割増賃金の計算方法】
2025.12.21 大野事務所コラム
介護休業給付金を93日分受給したい
2025.12.19 ニュース
年末年始休業のお知らせ
2025.12.11 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【育児短時間勤務制度について】
2025.12.11 大野事務所コラム
マイナ保険証について
2025.12.08 これまでの情報配信メール
令和7年の年末調整について /育児休業等給付専用のコールセンターの開設について
2025.12.01 大野事務所コラム
社会保険「賞与に係る報酬」を考える
2025.11.28 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【副業・兼業に関する留意点(後編:健康管理の実施、副業・兼業に関わるその他の制度について)】
2025.11.25 これまでの情報配信メール
協会けんぽ 電子申請サービスについて / 来年度からの被扶養者認定について
2025.11.21 これまでの情報配信メール
 教育訓練休暇給付金のご案内 、 日・オーストリア社会保障協定が本年12月1日に発効します
2025.11.21 これまでの情報配信メール
令和7年 年末調整のしかたについて
2025.11.21 これまでの情報配信メール
令和6年度の監督指導結果について
2025.11.21 大野事務所コラム
業務上の疾病
HOME
事務所の特徴ABOUT US
業務内容BUSINESS
事務所紹介OFFICE
報酬基準PLAN
DOWNLOAD
CONTACT
pagetop