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古くて新しい在宅勤務の留意点

 「ドベネックの桶」をご存知でしょうか。

 ドベネックの桶は、一枚の板だけがどれだけ長くとも一番短い部分から水は溢れ出し、結局水嵩は一番短い板の高さまでとなる、ということを表したモデルで、本来は生物学のものですが、情報セキュリティの考え方としてよく使用されます。

 

 コロナ禍による緊急事態宣言が出された状況において、在宅勤務の必要性が浸透し、見切り発車的にこれを開始したというケースも多いかもしれません。しかしながら、緊急事態宣言が解除された後もコロナの第二波、第三波に備えて在宅勤務を継続する、あるいは働き方改革の一つとして在宅勤務を一つのスタンダードにしようと考えている、ということであれば、現状の在宅勤務における「見切り発車部分」を解消し、桶から水が漏れないように在宅勤務を制度として安定化させる必要があると思います。

 

 課題の一つは、まさに情報セキュリティ面が挙げられるでしょう。今回ことは生命にかかわる事態であっただけに、「在宅勤務をまず導入しなければ」ということで今まで走ってきた、セキュリティのことなど考えられなかった、ということもあったかもしれません。しかしながら、会社の情報通信機器が脅威にさらされれば、営業をストップさせるだけの被害を会社にもたらします。そればかりか社会的信用を失いかねません。
 これに関しては、情報処理推進機構(IPA)が多様な情報を載せており参考となります。本年 4月 21日には「テレワークを行う際のセキュリティ上の注意事項」という情報をHP上に掲載していました。

 

【IPA:テレワークを行う際のセキュリティ上の注意事項】

https://www.ipa.go.jp/security/announce/telework.html

 

 そして、労務管理という観点からも整備しておかなければならない項目が多々あります。これに関しては、当事務所にもだいぶ前からご相談いただいている事例がありますが、その留意点・検討すべき課題をこの場を借りて改めてお伝えしたいと思います。

 

1 就業規則への記載

 在宅勤務の導入は労働条件の変更となりますので、社員の理解を得てこれを行うこととなります(労契法9条)。その結果として就業規則を変更し、最低でも次の事項は定める必要があるとされます。

 

 ①在宅勤務を命じることに関する規定
 ②在宅勤務用の労働時間を設ける場合、その労働時間に関する規定
 ③通信費などの負担に関する規定

 

 もちろん、在宅勤務に関する規程を別に定めることも考えられます。当ホームページでも在宅勤務規程のひな型をダウンロードいただけるよう掲載しています(モデル規程・書式集)。

 

2 時間管理

 上記②、在宅勤務における労働時間管理ですが、在宅勤務であっても労基法の適用はありますので、始業・終業時刻の適正な把握を原則とすべきでしょう。ただ、在宅勤務においては、どうしても私用が入り込みがちであり、例えばいわゆる中抜けを認めるかどうかということなども、検討すべき課題といえます。これを認めるのであれば、その時間をしっかり申告させる等の運用ルールを定めておく必要があるでしょう。

 また、休日勤務、深夜勤務も行いがちとされますが、これもどのように取り扱うかが課題となるでしょう。過重労働に至らないようにするため、事前許可申請制を徹底することが考えられます。

 ポイントとしては、在宅勤務であっても服務規律は守られるべきものであり、自分の好きな時間に仕事ができる訳ではない、ということです。このことは理解いただく必要があります。

 

3 経費負担

 業務に要する光熱費、通信費、備品に要する費用についてはどうでしょうか。
在宅勤務では私生活上の光熱費、通信費用が混在するため、こういった経費を会社・社員のどちらが負担するのかも決定しておかなければならない事項です。必ず会社が負担しなければならないということではありませんが、社員に負担をお願いする場合には、法的な意味でも就業規則の相対的必要記載事項(労基法89条5号)となりますので、これを規程上定めなければなりません。
会社が負担する場合においては、勤務に要した費用と私生活上のものを峻別することは不可能であるため、手当として一定額を支給するということも考えられるでしょう。

 

4 その他

 その他、人事評価制度をカスタマイズしなければならないのか、健康管理にどこまで対応しなければならないか、秘密保持の誓約書を新たに取り直した方が良いのか、労災の適用はあるのか等、検討すべき課題は意外とたくさんあります。

 古くて新しい制度となった感もある在宅勤務制度ですが、当事務所では、これまでのご相談の実績・事例の蓄積に基づき、的確な助言、最適な在宅勤務制度設計の支援をさせていただきます(アドバイザリー業務)。

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