TOP大野事務所コラム「社会保険料を削減する」方法・手口について

「社会保険料を削減する」方法・手口について

こんにちは。大野事務所の高田です。

 

皆様の会社にも、「社会保険料を削減します」といった宣伝文句の広告チラシが届いたことはありませんでしょうか?

最近ではFAXによるこの手のチラシは随分減ったように思いますが、インターネットで「社会保険料」「削減」といった語句で検索してみると、実に多くの業者や専門家の方々によって、様々な方法・手口が紹介されているのを目の当たりにします。さすがに弊所のような士業の方々が、インターネット上であからさまに違法・脱法と思われる手法を指南することはないだろうと思いますが、削減の手法としてよく挙げられているものの中には、本当に実効性があるのかどうか疑わしいものも少なくありません。

 


 

以下、これらの方法・手口として実際によく見かけるものをご紹介します。

 

① 4月~6月の残業代を削減する

 

確かにその通りなのですが、減らそうと思って、簡単に減らせるものなのでしょうか。もし、残業時間を過少申告させたり、4~6月の残業代を故意に7月以降に遅らせて支給したりしている場合は、明らかに問題です。

 

② 月末退職者の退職日を月末の1日前にする

 

たとえば、30日の月であれば29日付退職にするということです。

これも会社の都合だけを考慮すればその通りなのですが、翌月1日から他社へ転職する方にとっては1日の空白が生じてしまいますし、そのため国民年金も1ヶ月分の納付が必要になるなど、必ずしも退職者の賛同を得られる措置ではないと考えます。

 

③ 入社者の入社日を1日付にする

 

月のどこで入社しても保険料は同額ですので、なるべく月初入社にしようとの発想自体は分かります。ただし、実際の入社が月末付近であるにもかかわらず、社会保険の資格取得日のみを翌月1日とするのは、明らかに問題のある取り扱いです。

 

④ 給与額が標準報酬月額のレンジに巧く収まるようにする

 

たとえば、給与額を290,000円にすると標準報酬月額が300,000円になってしまうため、給与額を289,999円以下に調整することによって標準報酬月額を280,000円で抑えようといった理屈なのですが、そのように都合よく給与額が決められるものなのでしょうか。社会保険上の報酬額には残業手当や通勤手当等の各種手当も含まれますので、これらの手当支給が殆どない会社は別として、多くの場合この手法は実効性に乏しいのではないかと感じます。

 

⑤ 社会保険に加入しないパートタイマーを活用する

 

フルタイムの労働者をパートタイマーに置き換えていくとなると、組織体制や人事制度そのものを抜本的に改め、各人の仕事の分担や進め方も見直す必要が出てくるでしょう。一朝一夕に実現可能な方策とは思えません。

 

⑥ 業務委託・請負労働者を活用する

 

これも⑤と発想を同じくするものですが、本来、労働契約によって処遇されるべき労働者が、便宜的に業務請負契約の名目で契約させられる事態(いわゆる偽装請負)に繋がりかねないのではないかとの不安がよぎります。

 

⑦ 役員報酬の支給方法を改める

 

これは業界内でもよく知られた手口で、実際にこのスキームで大幅に削減できたとの声もインターネット上では見かけますので、あながち実現不可能というわけでもないようです。どのような手法かといいますと、社長などの年収の高い役員の毎月の報酬を著しく低額(具体的には10万円程度)に抑え、残りの額を役員賞与として一気に支払う(年収2,000万円を維持する場合、役員賞与として1,880万円支払う)という驚愕の方法です。【図1】

図1

このような役員報酬の配分自体に違法性があるわけではないと思いますし、年収の大部分を賞与で補うという発想も、標準賞与額の上限(健康保険:年度累計573万円、厚生年金保険:1月150万円)の仕組を上手く活用したものといえなくもありません。ですが、役員報酬を、従業員給与と比較しても著しくバランスを欠くような低い金額で設定することの違和感や、また、会社業績が好調な時ならまだしも、不況時においてまでこのような法外に高額な賞与を支給することが現実的に可能なのかといった問題など、様々な疑問が生じる手法であることは否めません。少なくとも、コンプライアンスやガバナンスがそれなりに機能している会社であれば、このような手法は採り得ないのではないかと想像します。

 


 

いかがでしたでしょうか。
経営者にとって経費の削減は喫緊の課題ですので、税や社会保険料についても、節税・節減を追求する姿勢自体は否定されるものではありません。ですが、それはあくまでも法や制度の趣旨を逸脱せずに、制度の仕組を上手く活用することによって実現すべきものであって、脱法すれすれの手法や、仮に違法性はなくとも、会社の信用や品位を損ねるようなきわどい措置を講じてまで追求することではないというのが私の個人的意見です。

 

弊所の顧問先様には以上の価値観を共有できる会社様であってほしいと切に願っていますし、現にそのような顧問先様と普段からお付き合いさせて頂いていることを、大変ありがたく、また光栄に思っています。

 

執筆者:高田

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